2013年2月

第2979号 2013年2月27日号


喫煙か健康か?
 高岩寺住職・医師 来馬明規


 豊島区は池袋駅前の三ヶ所にJT提供の違法な喫煙所新設を進めている。まず昨年四月に運用開始した北口喫煙所は受動喫煙防止効果がなく、周囲にタバコ臭が漂い子供も行き交う。西口喫煙所の計画は地元の強烈な反対で頓挫。そして東口はもうもうと煙をあげる現行喫煙所に多くの苦情が寄せられるなか、現状を少しでも改善したいという意見もあり計画が現在進行形だ。担当の清掃環境部は「分煙徹底・環境美化」と胸を張るが、セーフコミュニティ推進部からは「ルール違反は困る」と不協和音も聞こえる。現在開会中の区議会は喫煙所問題の取り扱いを通してセーフコミュニティの実践が問われている。

 東口喫煙所計画の主な論点を整理しよう。第一に受動喫煙防止効果はない。区は約三メートルもの「高い塀」をJTに建ててもらうだけで、タバコ煙濃度の予測や、検証予定はない。北口喫煙所と同様に、タバコが消費され続けることに変わりはないので有毒煙が漏れ、喫煙所内外でPM2.5が基準値を超えるのは筆者の測定経験から明らかだ。これでは「分煙詐欺」。

 第二に、セーフコミュニティ運動とは「科学的根拠に基づく公衆衛生改善の実践」だが、喫煙所新設には公衆衛生が悪化する科学的根拠が無数にある。反面、WHO認証を冠する東京副都心に公営喫煙所ができることはタバコ産業には有効な投資だろう。

 第三に、本事業は違法。健康増進法第25条とその関連通知「公共機関は屋外でも原則禁煙」に反している。また、JTの行政支援は国際条約・タバコ規制枠組条約(FCTC)で禁止されている。いかなる支援もタバコの宣伝とタバコ関連死につながるからだ。ところが区議会の議事録から、高野区長がJTを何度も呼びつけて建設資金の提供を求めていたことが明らかになった。これを受け、日本禁煙学会は今月5日付で高野区長に警告文書を送付している。

 第四に、東口喫煙所計画は公表・説明が不十分だ。区の報道資料にはJTの資金提供の事実が明示されず、パブリックコメントも募集しない。その裏で地元有力者に個別の説得工作をすすめているようだ。

 さて、区議会は平成23年に「豊島区路上全面禁煙」を実現するなど禁煙推進に成果を挙げてきたが、公共機関の禁煙推進は遅れている。議員35名のうち10名ほどが喫煙者で、全体としてタバコ問題に科学的で公平な立場から向き合いきれていない。なんと新区庁舎の議場にも喫煙所確保を検討しており、タバコを吸わない議員もこれを容認する方向にあるようだ。

 高野区政は様々な諸問題に熱心に取り組んできたのに、なぜ喫煙所確保にこだわるのか?筆者にはタバコ産業への配慮と「見かけ上」の税収維持にしか見えない。喫煙者サービス・分煙・環境美化というのは詭弁であり、安価で確実ながん対策、受動喫煙防止と環境改善には禁煙推進が最善であることに目を向けていない。屋内外の禁煙化は安全で高密度な文化都市に必須の条件ではないか。

 日本たばこ産業(JT)は日本政府が株式の過半数を保有する事実上の国営企業だが、今なお受動喫煙は無害と主張し、国内では健康増進法制定やニコチン依存症治療の保険適用を妨害、検査会社を買収しタバコアレルギーの診療を妨害、海外では子会社が英国議員に贈賄、シリア独裁政権に資金提供、オーストラリア政府のタバコ規制法を提訴、アフリカの葉タバコ農園の小児強制労働を黙認、カナダ政府から巨額賠償を請求されるなどの事実が明るみになっている。


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