子女教育ニュース

      担当: 国際教育相談員 小山 和智
海外人事や教育関係の実務担当者の皆様に配信しているニュースの一部を、
一般の皆様にも公開します。 教育相談などについては 「教育相談から」を。
2018年 1月、2017年 9月〜12月5月〜8月1月〜4月。 2016年 9月〜12月5月〜8月

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【2018-1月】

明けまして おめでとうございます。

(イヌ)年ですね。
  「 <xu1>」は 方角では “西北”の意味。 「戌の刻」 は午後8時ころ--- 仏教の宵のお勤め、イスラム教の「isya」の祈りの時間です。 動物だと 「 <gou3>」が当てられましたが、日本語では 「犬」の字を用います。 犬はずっと “愚か者, 卑しい者, スパイ” の代名詞で使われてきました。 旧約聖書では “ならず者, ヤクザ”の意味で、「You dog!」 は 人を罵倒する言葉です。 「Hot dog」は ドイツ製ソーセージを貶める用語でしたが、すっかり製品名となって定着し、中国でも「熱狗」と呼ばれます。
  日本語では、わずかに 「犬に三年」(=石の上にも三年)、「犬は三日飼えば恩を忘れない」「犬は人に付く」などで、“愚鈍” な側面がプラス評価されています。 たくさん子を産むことから、一族繁栄のお呪いにも使われ、水天宮の境内には 必ず犬の親子が飾られています。 正月飾りの代表は「鏡餅」「しめ縄」「門松」ですが、かつては「懸け鯛<かけだい>」というのもありました。 干した鯛2尾を 藁縄で結び合わせて、神棚や門松、あるいは 「かまど」に飾るものでした。 「犬に懸け鯛」は、もう死語でしょうか?
◆ 商売人は懸け鯛の立派さを競うこともあったようですが、違いが判る人が見てくれなければ、何の意味もありません。多田先生の新著()も、手にとって見てもらわないと、「犬に懸け鯛」となりかねません。

多田孝志先生が『グローバル時代の対話型授業の研究』を上梓
  暮れに 東信堂から刊行されました。 多田先生は 「グローバル化が進む中、心理的切迫感に襲われ他者信頼が希薄となるなど、人間関係に疲弊する人々が急増している」 「人口知能(AI)が人間を超えるというシンギュラリティの到来を前に、育んでおくべき基礎力の養成に向けて学校を変えていく必要がある」 という認識に立って、「人間形成」についての考察、活用すべき「対話」の精緻な検討、対話活用の具体的場面である「対話型授業」の 特質や要件を明確にする研究・実践を続けられています。
  元より多田先生は 「生涯一教師」を地で行く方ですから、現在の教師たちの疲労感・多忙観・自信の喪失、さらには創意への意欲も喪失している現実を体感されています。 対話型授業への認識を深め、実践力を高めることで、教育の担い手としての誇りと自信を回復する契機としてほしいという 熱い情熱が、この本に溢れています。
  教育の営みには、鑿<ノミ> 一本で洞窟を掘り進むような “愚鈍”ともいえる直向<ひたむ>きさや継続性が求められます。 しばしば悩みや絶望感にも襲われるのですが、紹介されている具体的な指針や考察、実践例は、まるで灯台のように 私たちに光を与え、警鐘を鳴らし、励ましてくれます。 常に抱えておきたい一冊です。

1月6日は クリスマス行事の最終日です。
  キリスト教の 「公現祭 (顕現日, Epiphany)」 で、宗派により 位置づけはそれぞれですが、いわば 「クリスマスツリーを片付ける日」です。 「Twelfth-day(クリスマスから12日目) とも呼び、前夜(Eve.) から 音曲漫才の類が 日本の獅子舞のように各家を回って一家の繁栄を祈り、ご祝儀をもらう習慣もあります。 アジアの正月行事は 「元宵節 (上元節), 灯節(小正月=1月15日) までで、松飾りなどは その時に片づけます。 しかし、明治政府は1873年の新暦(グレゴリオ暦) 導入の際、キリスト教に倣<なら>い、「7日までが松の内(7日は “人日”の節句) を奨励、8日を “正月事始め” としました。 1875年、「学齢を満6歳から満14歳までとする」 と発表したのも 1月8日でしたし、後に公立学校は 8日を授業再開の日にします。
七草粥は 1月6日から作り始めます。 「人日 <ren2ri4,ジンジツ>」(1/7) は 五節句の一つ。 中国では 「七種菜羹 <qi1zhong3cai4geng1>」というスープを食べ、紙人形を屏風などに貼って 吉兆・立身出世を祈る風習です。

映画 『Sully』(米2016年) に寄せて
  正月のテレビで放送していました。 US航空1549便の不時着事故 (2009年1月15日)、いわゆる 「ハドソン川の奇跡 (Miracle on the Hudson)」 の実話を扱ったものです。 真冬に観てこそ、あの日のニューヨークの凍るような寒さを 肌身に感じられます。 世間が 「奇跡を起こした英雄」 に賞賛を送る一方で、アメリカ政府としては 航空機メーカー擁護の思惑もあり、操縦士の判断ミスではないかと機長・副機長を責め立てます。 いっそう寒さを感じさせる展開です。
  事故調査の冒頭から、“墜落 (crashing)” というか “不時着 (emergency/water landing)” というか の応酬がありますが、この映画の公開直後、沖縄でオスプレイの事故が起こりました。 米軍が 「英雄的な不時着」と発表したのに対し、地元は 「墜落だ」と抗議しています。 不時着を 「lapse of arrival (到着の失墜)」と表現することもあります。 「lapse」 は、進むべき途から逸れること (あるいは その事情や経緯) です。 思いもよらない事態に遭い、犠牲を避けるため飛行継続を断念する判断は、常に 信用・道義の“失墜” と 背中合せなのです。 犠牲者が出なくても、“人為的ミス” や “過失” と責められるでしょう。 しかし、そうであっても 何が優先されるべきかを決められるのが “成人・大人”です。

成人年齢の変更について
  公職選挙法上の選挙権年齢は、昨年6月から18歳に引下げられましたが、その前提に 「身体的・精神的に十分に成熟している」ことがあります。 一個の大人として、自分自身で判断できることが求められており、中等教育の責任は 大きいです。 どんな仕事でも 「社会に責任を負っている」という意識は必要で、常に 成人・大人としての判断を求められるのは、楽ではありません。 映画で サリー (C. B. Sullenberger III) 機長は、娘に 「世界で一番の仕事って何?」 と聞かれて、「やらなくてもいい時でも、やりたくなる仕事」 と答えます。 その真摯な姿勢は、私たちに希望や勇気を与えてくれます。

大学入試センター試験は 1月13・14日でした。
  志願者は約58万人だったそうです。 3年連続して増えているのは、現役(高校3年生) の志願率が 約45%と過去最高になっているからでしょう。 センター試験は、多くの私立大学でも入試に利用されるようになりましたが、3年後には大幅に改革されます。 そのため高校入試でも、新しい「大学入学共通テスト」 に対応できる生徒 (いわゆる“地頭<じあたま>”のよい子)の確保が、各高校の課題となっています。
  東京都立高校の推薦入試・IB入試は 1月26・27日(金・土)に行われます。 東京以外の公立高校は、5年前から推薦入試を廃止、もしくは一般入試の日程と一本化(具体的には 群馬県 2/7、千葉県 2/13、神奈川県 2/14、埼玉県 3/1) してきています。 なお 東京都立高校の 「一次及び分割前期」の入試は 2月23日(金)、海外帰国生対象の入試は 2月16日(金)です。 公立の中高一貫校で “併設型”("中等教育学校" と名乗らない一貫校) の場合は、高校の入試や編入試験があります。 国内生は “途中から入る” ことを嫌がる子が多いので、帰国生にとっては “穴場”ともいえます。
  一方、国立系の筑波大学附属高校附属駒場高校、および東京学芸大学附属高校は 一般入試、帰国枠入試ともに 2月13日(火)です。 筑波大学附属坂戸高校の SG入試(帰国生枠あり)・推薦入試は 1月17日(水)で、一般入試は 2月6日(火)、東京学芸大学附属国際中等教育学校4年(高1相当) の編入試験は 2月3日(土)…… この2校には 「日本語DP」のIBコースもあり、ノンビリした空気に溢れていて、帰国生には “狙い目” でしょう。

第63回グローバル化社会の教育研究会(EGS)を開催
  2月16日(金)、聖学院中学・高校(東京都北区) です。 日本アクティブ・ラーニング学会の 難波俊樹事務局長のお話しを基に、「地頭のよさ」 について考えます。 難波さんのペンネームは 「はざま けんじ」---“未来型の算数能力”を育成するための学力診断法と教材の開発、教育現場や家庭で実践できる学習支援システムの提案などで知られます。 元々は 文学青年で、その柔らか頭から次々と生まれるアイディアや発想に触れることは、私たちが 既存の“常識”から解放される契機になると思われます。
  新学習指導要領が目指す 「新しい時代に必要となる資質・能力」は、従来の “教科”の発想からは捉えきれません。 「カリキュラム・マネジメント」や「教科横断的に身に付ける力」といった用語は、意味不明の遠い存在と思われ易いようですが、全ての教員が待ったなしで対応を迫られています。 難波さんの “柔かい”解説は、グローバル化社会における教育のあり方や多文化共生教育を考える上でも、ありがたいです。

1月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第5回 創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ--- 1月7日(日)、於:東京大学伊藤国際学術研究センター (東京都文京区)。 [特別講演] 「Spiber を起業した理由」=関山 和秀 (Spiber(株) 取締役兼代表執行役)。 [最終審査会=高校生プレゼンテーション] ※ 地域の課題解決や国際社会への対応などをテーマにした 高校生ならではの多様性と創造力に溢れるプランの“ベスト10”が競い合います。
第4回 ウェアラブルEXPO--- 1月17日(水)〜19日(金)、於:東京ビッグサイト(東京都江東区)。 [特別講演] 「AR/VRがウェアラブルにもたらす革新」=廣瀬 通孝 (東京大学大学院 教授)、Thad Starner (ジョージア工科大学 教授)。「ウェアラブルとAIの融合で生まれる新たな世界」=矢野 和男((株)日立製作所 理事)、Heike Riel (IBMワトソン研究所 IoT局長) ほか。 ※ 拡張現実(AR)や人工知能(AI)の技術が職場に入って来るのはもう目前。職業観教育のあり方に再考を迫っています。
第95回GSDMプラットフォームセミナー/国際シンポジウム--- 1月15日(月)、於:国際学術研究棟 SMBC Academia Hall (東京都文京区)。 テーマ 『プライベートスタンダードとグローバルガバナンス その可能性と課題』。 ※ 東京大学 大学院「社会構想マネジメントを先導するグローバルリーダー養成プログラム」(GSDM) 主催、貿易研修センター(IIST) 協賛。
ASIA-NETセミナー 関西--- 1月16日(火)、於:阪南大学あべのハルカス (大阪市阿倍野区)。 テーマ 『中国とビジネスをするための鉄則55』=吉村 章(ASIA-NET 代表) ※ 著者の吉村さんから直接、商習慣の違い、ビジネスの進め方の違い、仕事観・就業意識等について、実践訓練を受けます。
ASIA-NETセミナー「AI理解の基本」--- 1月19日(金)、於:南部労政会館 (東京都品川区)。 テーマ 『AI革命の現状とこれからの社会』=藤原 敬行 (ナレッジフォース・パートナーズ代表)。 ※ AIについての知識を改めて確認したい or学び直したいという人のためのセミナー。今更 若い者に聞けないというベテラン先生にも…。
ASIA-NETセミナー「台湾ビジネス最前線 2018」--- 1月24日(水)、於:南部労政会館(東京都品川区)。 テーマ 『吉岡桃太郎氏を招いて聞く台湾ビジネス最前線』=吉岡 桃太郎 (台湾伝え人/作家)。 ※ 独自の切り口で台湾の魅力を情報発信し、台湾人旅行者に 日本の良さをPRされる吉岡先生…… 内側から見る台湾の魅力を伺います。
桜美林大学孔子学院 第5回漢詩朗読・創作発表大会--- 1月27日(土)、於:桜美林大学 淵野辺キャンパス (神奈川県相模原市)。 [漢詩講演会] 『漢詩の愉しみ』=石川 忠久 (斯文会 理事長、全国漢文教育学会会長)、[朗読・創作発表大会]。 ※ 石川先生は「NHK漢詩シリーズの先生」といったほうが 親しみ易いかもしれませんね。
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◆ 英国の与太話で、「Spaniel」 は 「Jap」 と同義の隠語だと聞いたことがあります。 “叩いて教えるしかない犬” だそうで、日本の政治家や外交官が “外圧” を盛んに利用する (or外国におべっか使いする) ことが、根本原因のように思います。

◆ 「melancholy(憂うつ) を 「Black dog」 ともいいます。 これは妖怪の一種らしく、人の背中に乗って 不機嫌にさせたり 意気消沈させたりすると信じられているようです。 テレビのアニメは関係ありません。

◆ 沖縄のオスプレイ事故--- 操縦士が機外に脱出した後に機体が落下したのであれば “墜落” と呼ぶべきだと私は思います、 たとえ 垂直離着陸機(VTOL) でも。 もちろん、犠牲者が出なくて幸いでした。

◆ 新学習指導要領では、1) 生きて働く知識・技能の習得、2) 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等、3) 主体的に学びに向かう力・人間性等 の3要素を強調しています。 もはや 黒板を背にした一斉授業だけでは 育てようもありませんが、地頭の良くない “単なる秀才” も 大学には喜ばれません。

◆ 『月刊 海外子女教育』 1月号の特集は 恒例の 「私の仕事」 で、5人の元 帰国子女が “働き甲斐” を語ってくれています。 「日本人学校における現地理解の取り組み」の特集には 12校が登場、実に楽しそうです。

◆『月刊グローバル経営』 新春特別対談は 橘フクシマ咲江さん(経済同友会 元副代表幹事)伊藤雅俊さん(日本在外企業協会 会長)。 橘さんの 「グローバル・リーダーの要件」の表も 興味深いです。

◆ 8日の成人式の日、上海日本人学校高等部の入試があり、東京試験会場 (於:海外子女教育振興財団) では8名が受験しました。 高校生を安心して帯同できるご家庭は幸せですね。

◆ 正月は時間があったので、過去の執筆原稿などを整理しました。 また、10年経過した順心広尾学園等のアーカイブも、学術研究者の利用に供するようにしました。「小山和智の部屋」からどうぞ。

◆ それでは皆様、この一年が実り多い年でありますよう。
  また、今年 成人式を迎えた若者たちの健勝と活躍を 切に祈ります。

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2017年12月以前のニュースは こちら

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