樫本大進 2000年2月1日

J.S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番

第1部のメニューイン追悼、フジテレビのアナウンサーによってメニューインの経歴が語られ、蓄音機で1934年録音の無伴奏パルティータ第2番からシャコンヌの冒頭が流されました。
樫本大進の音色は今までの実演、CD、放送ではグリュミオーの美音に晩年のオイストラフのような深みと彼独自の個性を加えた素晴らしいものでした。今回はオイストラフ風の要素が減退していましたがこれはバッハということで意識的にそうしたのかもしれません。何しろ昨年はロシアものばっかり聴かされましたから。演奏は興がのるとテンポが速くなるという私の好きなタイプの演奏でした。それでいてシュネーベルガーのように下品にならないのは樫本大進のセンスの良さを証明しています。エネスコの霊感にアドルフ・ブッシュの構築性を融合し、彼自身の境地を加えたメニューインのバッハを継承している感じでした。

シャコンヌはJ.S. バッハが妻マリア・バルバラの死を悼む音楽だったのではないかという学説?があるそうです。それをもとにリュートとソプラノ、カウンターテナーによるシャコンヌによるトンボー(墓碑銘)が録音されCDとして発売されています(GLOSSA GCD 920107)。これについては『レコード芸術』1999年1月号に詳しく載っているそうですが、2000年2月号にも演奏者のモレーヌ(リュート)のインタビューが載っています。
樫本大進のシャコンヌも追悼の音楽としてふさわしいものでした。ある意味厳しく「祈り」の感情を排除したメニューインの3回目の全集(1970年代前半、EMI)とは対照的な演奏と言えるかもしれません。

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