最近読んだ本の話し  (2005年)
 このコーナーは、私が最近読んだ本の紹介をする所です。面白かった物もあれば、お薦めでない物もありますから、私の読書日記とでもいうべき、コーナーになると思います。
 基本的に文庫本しか買わないので、発表になってから随分経過する作品もあるでしょうし、お金が無い時には、古本屋で買うこともありますから、ひょっとしたら、手に入らない本もあるかも知れませんが、出来るだけ新刊を紹介していきたいと思います。
 尚、◎は是非読んで欲しい ○はちょっとお勧め △は何でも読みたい人向け ×は読まなくても良かったと思った作品です。

予告)未読の本
 今読んでいるのがグレッグ・イーガンの「万物理論」それから「クリスマスに少女は還る」「ダーウィンの剃刀」「バッテリーV」「最後のディナー」「ロシア幽霊軍艦事件」と続いている。それに最近やっと4冊まで出た「終戦のローレライ」を読みたいなぁと思っております。それから出来れば「射ちょう(字がない)英雄伝」全5冊(ケーブルテレビではまってしまった)。

  
2005/02/20
随分久しぶりの更新です。サボっていたせいで昔読んだ本は殆ど忘れています。それでも薄れ行く記憶を呼び覚まし、どんなだったかだけは書いておこう。ひょっとしたら書き忘れている本さえあるかも知れない(笑)

○「宇宙消失」グレッグ・イーガン作 山岸 真訳 創元SF文庫刊
読み始めて、何だか遠い昔に読んだような気がするなぁと気がついたのが、50頁程過ぎてから、まったく年は取りたくない(笑)で、初版が7年前なのだが、もっと昔に読んだ気になってしまい、ひょっとしたら似たような話なのかも知れないと、遠い記憶を思い起こしながらもやっぱり同じだったと読み終えて判った(笑)それだけ印象の薄い話とは思えないのだが、当時はそんなに感動しなかったのかも知れない。量子物理学なる学問があるが、SF好きの人には、その入門書だと思って読んで貰えばいいだろう。再読ではあるが結構面白かった。

◎「ハゲタカは舞い降りた」ドナ・アンドリューズ作 島村 浩子訳 ハヤカワ文庫刊
鳥シリーズ?の4作目だ。相変わらず面白い。実は2月のQの1000字はこの話をヒントに書いてしまった(笑)今回は弟のゲームソフト(地獄の弁護士)が大当たりし、会社を作ってしまい、そこへ主人公のメグが受付嬢をしながら会社の不審な動きを見張って欲しいと弟に頼まれるのだ。丁度腕を怪我してしまった彫刻家の主人公は、そこで働くのだが、相変わらずそこにはペットが沢山いる。そしてなんとハゲタカまでいるのである(一体どんな会社だ)そのペットの世話をさせられ、新しい受付嬢は直ぐに辞めてしまうし、同じフロアーには、精神科医達が立ち退かないで、居座って営業している。本当にめちゃくちゃな設定である。そんな所で殺人事件が起こり…といったお話である。こんな設定で面白くないわけがないじゃないか。出来れば1作目から読んで欲しい作品である。

△「遊部」上下巻 梓澤 要作 講談社文庫刊
私は遊部なるものの存在を知らなかった。服部(はっとりべ)などの「部の民」なのだが、話は半村良の「嘘部」みたいな伝奇物ではなくて、歴史物である。東大寺炎上から始まり、豊臣秀吉が天下を手中に収める頃までの話である。登場人物達がスーパーマンのように格好良く働くのかと思って期待していたのだが、普通の人間のままだった(笑)作者が、小説家ではないという事もあるのだろうが、文章は稚拙(といっては失礼だが)に近いものがあるので、文学好きな人にはお勧めできない。ただこの小説を読んで、茶道を使った話をいつか書いてみたいなぁと思った事だけは確かだ。そのうち発表出来ればいいのだが…。

△「腐りゆく天使」夢枕 獏作 文春文庫刊
久しぶりの夢枕作品で期待したのだが、少し残念。萩原朔太郎が登場する大正時代の話である。螺旋がどうのこうのという話ではなくて(これからはネタばれ)死んで埋められていた少年が犯人である牧師の部屋に、天使の形として現れ少しづつ腐ってゆく。というおぞましいとも言える話である。そこに朔太郎が恋する女性を求めて絡んでくる。少し読みにくい作品だった。

○「天を衝く」1・2・3巻 高橋 克彦作 講談社文庫刊
「炎立つ」「火怨」に続く歴史巨編三部作のラストというのだが、残念ながら「炎立つ」は読んでいない。「火怨」には感動したのでつい買ってしまった(笑)話としては3巻組という事もありどんどん面白くなっていくのだが、ラストが何だかあっけなくて残念な気がした。秀吉に喧嘩を売った男の生き(意気)様が妙にワクワクしてさせてくれた。伊達正宗同様に、もう少し早く生まれていれば随分歴史も違ったろうにと思わせる話である。

○「トンキチ冒険記」影人狩り、ブルー・ランナー2巻 菊地 秀行作 光文社文庫刊
トンキチとは主人公の名前である(笑)で、主人公は剣の達人。とはいえ工藤明などのような剣豪ではない。ただあちらの世界に行って戻ってきたせいで、スーパーマンになってしまったのである。但しある事を除いては…。まぁ、ある事というのはお楽しみとして、流石に菊地先生の話である面白い。で、あちら側からこちらの世界に攻め入ろうとしている住人達をやっつけてこちらの世界に来ないようにしようとする話である(って何だか判らないだろうなぁ…)登場人物はCIAのトップクラスだった日本人が教師になって主人公の高校へ彼の姪ともども赴任(転校)し、一緒になって闘うという話である。2巻目のブルー・ランナーは、絶世の美女ならぬ美男が転校して来るのだが、それがやはり主人公と同じような境遇である。但し彼は妹を囚われていて、あちら側の手先として…。なんて話なのだ。興味のある方はどうぞ。

△「どすこい」京極 夏彦作 集英社文庫刊
文学賞を取ったり、映画化もされ、又される作者の作品ではあるが、これはお笑いとしては面白いのだが、京極さんのあの不可思議な世界(とはいえこの作品も不可思議ではある)にどっぷり浸かっていたい人にはお勧め出来ない。タイトル通り、お相撲さんの話である。それが色々な作家の代表作ともいえる作品達のタイトルだけをパロって、作品としてはお相撲さんのお笑いである。お笑いの話というのは好きなのだが、このお笑いがまた上質ではないのだ。ワザとそうしているのだろうが、私の笑いのツボとは少しズレているのだろう。面白くなかった(笑いながら読んではいたが…)

◎「LAST HOPE」浅暮 三文作 創元推理文庫刊
刑務所帰りの犯罪仲間の三人のうちの二人は釣具屋をやっていて、残りの一人は中華食堂を経営。釣具屋の名前がタイトルになっているのだが、各章毎のタイトルが、擬似餌の名前になっているという凝りようだ。店に来たFAXに多摩川のヤマメを捕って欲しい。一匹一万円出すというのだ。主人公ら3人組みに対し、3人組の宝石泥棒と、後少しで時効になる一億円話が絡み合って、何が何で誰が誰やら判らないという小説ならではの書き方で、これは面白く読めた。意外性のあるラストも面白かった。

△「キャピタル・ダンス」井上 尚登作 角川文庫刊
TRYとかCHEの作者である。今まではどちらも面白かったのだが、これは少し残念。少しなのだが残念さが強くて△(笑)ビジネスの話なのだが、アメリカで成功しビルゲイツの誘いさえ断った女性が、日本でビジネスをしようと躍起になる話である。パソコンの新しい言語をLINUXのように広めようという考えの元に、タコボールという優れものの検索エンジンを使って会社を立ち上げ、成功するまでの話だ。会社設立に対する障害はメチャクチャ面白い。面白いのだが、タコボールがイケナイ。というのもリンクしているのが多ければそれが必要な情報だという考えから、リンクしている箇所での検索をするという基に作成されている検索ソフトである。この検索ソフトの検索ツールの基本案(考え自体)が正しいという説得力に欠けるのだ。というか私はそうは思えなかったのである。果たしてそんな事で正しい検索が出来るのだろうか?

○「ハードボイルド・エッグ」萩原 浩作 双葉文庫刊
フィリップ・マーロー大好きな主人公の探偵小説である。舞台は日本なので拳銃も持っていないし、喧嘩が強いのかと思えばカラキシの主人公である。タフでないのにタフに憧れている。だから話は笑える。途中で若い助手が欲しいと広告を出すと雇ってしまったのは、老人ホームから逃げ出したようなおばあさんだし、依頼があるのは尋ね犬や猫。もはやペット探偵と化している。そんな彼らの知り合いが殺人事件に巻き込まれ助けようと奮闘するという話である。話は意外な展開を見せ、笑えて泣ける?なかなか楽しめる作品である。流石に推理小説は面白いなぁと感じ入る一冊だった。

◎「CHE」井上 尚登作 角川文庫刊
TRYは面白かったのだが、CHEってチェゲバラの話じゃん…。と立ち読みして思って控えていたのだが、ゲバラの話が映画で(もう去年の話だ)やるというので、つい読んでしまった(笑)で話は現代である。ゲバラは死んでしまったが、ゲバラに関係していた人達の南米の国(架空)での話しである。ゲバラの子供や、ゲバラの遺骨が出てくる途方もない話なのだが、それに関わる日本人の主人公や、登場する人達が生き生きとしている。ゲバラの心を今も忘れない南米の自由を愛する人達や、ゲバラって誰?という人には是非お勧めである。

○「キャノン姉妹の一年」ドロシー・ギルマン作 柳沢 由美子訳 集英社文庫刊
大好きなおばちゃまシリーズを最近書いていない作家であるが、仕方がない。彼女も高齢なのだ。でこれは、若い二人の姉妹の話である。社交界で華やかな人生を送っていた姉と寄宿舎で捻くれている妹の孤児が、彼女達に送られた叔父からの遺産である田舎の家に行って生活する話しである。金もなければ、何も判らない二人が一生懸命生きる事の喜びを感じる話である。だから当然、心温まる話である。彼女の作品はどれも心があったかになってくるものばかりで、いいなぁと思ってしまう。

○「闇に消えた子供たち」ジェニー・キャロル作 鈴木 美朋訳 集英社文庫刊
アメリカのTVシリーズの原作らしい。ある日雷に撃たれ、それから超能力を身につけた少女の話である。寝て目が覚めると牛乳パックに印刷されていた迷子探しの広告(アメリカでは牛乳パックに迷子探しの広告が出ているのだ)の子供の居場所が判ってしまう。それを電話で匿名で知らせるのだが、世間では大騒ぎである。何年も見つからなかった子供が見つかってしまうのだ。それを何度か続けていくのだが、結局FBIにつきとめられる。そのままならば良いのだが、見つかった子供の何人かは親から離れたくて、自分の意思で離れている子もいた。家に戻れば悲惨な運命が待ち受けているというのだ。悩む主人公をよそに、あまりのマスコミの攻勢に精神的に不安定な兄は発作を起こし、結局それを止めるために、彼女を軍に協力し行方不明の軍人を探す手伝いをする事になる。しかしその軍人達は戦犯とでもいう人達で…。主人公の供述という形式で書かれた話は、主人公の親や友人の手助けで、ハッピーエンドを迎えるが楽しめた一冊である。

○「メディエーター」霊能者の祈り、呪われた転校生の2冊 ジェニー・キャロル作 鈴木 美朋訳 集英社文庫刊
ニューヨークで生まれ育った主人公が、母親の再婚でカリフォルニアへ引っ越すのだが、彼女は彷徨える霊魂をあの世へと向かわせる調停人である。転校した高校の校長(牧師さん)も同じ能力を持っており、彼女に色々と助言をする。しかし彼女はニューヨーク流というか力で霊を封じ込める。そんな彼女に穏やかに昇天?させるべきだとウルサイのだが、そんな彼女を取り巻く話である。まだ2冊しか出ていないが、これが面白い。引越した先にはカーボーイの幽霊が住み着いているが、彼に恋心を抱いてしまう主人公や、兄弟になる2人の兄と弟との関係。アメリカの高校生らしい生活や登場する霊魂。なんと2作目では吸血鬼まで出てしまうのだ。あまり昔なのであまり覚えていないが(笑)3作目が出たら絶対買うのだ。

△「人形はライブハウスで推理する」我孫子 武丸作 講談社文庫刊
人形シリーズの3冊目であるが、これは短編集だった。腹話術氏の使う人形が推理していくという奇妙な話なのだが、主人公というか視点である女性(腹話術氏と恋仲:古)が語る話である。2冊目以降に出てきた「いっこく堂」さんも凄いが、やはり小説だけあってこっちの方が腹話術氏としては凄いのだ(笑)で、短編集だからかも知れないが、少し前作までと比べてしまうとパワーダウンしていて残念だった。

△「大盗禅師」司馬 遼太郎作 文春文庫刊
あまり昔なので内容を忘れてしまった(笑)これだから何度も買ったりしてしまうのだ。話は由井正雪や丸橋忠弥も飛び出し、彼らの仲間だった主人公が唐へ渡る。そこで開眼(笑)し、正雪やタイトルにもある大盗禅師の、人間としての小ささに気づいていくという。壮大な話である。登場する人物は魅力的だった気もするし、面白かったよなぁとも思うのだが、忘れてしまっている。