第5回3000字感想

 いやぁ、今回は暑い中の感想なんで、良く理解出来なかったですねぇ。と暑さの所為にするのは卑怯ですが、頭が働かないのは事実です。今回は作品も多いけど、面白い作品も多かったです。いつもの様に感想というよりは、酔っ払いの独り言だと思って読んで頂ければ、幸いです。もっとも暑さの所為でボーっとした頭で書いてますから、いつもの調子が出ていません。ちょっと辛口になってしまった人もいますが、悪気はありませんので、許して下さい。

Entry 1●『登校時間』小鳥羽西宗さん
私は花の事はよく知らないんですが、福寿海というのはどんな花なんですかねぇ。福寿草なら知っているし、お酒の福寿海も聞いた事はありますけど…。まぁ、話にはあんまり関係ないんですけどね。たぶん自宅から徒歩で通学ですから、中学生だとは思うんですが、隠れてバイクに乗って登校しているらしい、男の子を好きになって告白しようとしていて、(たぶん校門の所で告白するんでしょう)それまでの状況が彼女の視点からずっと描かれていて、彼女の気持ちが充分に伝わってきます。きっと告白してOKを貰って、一緒に校門を通過するというのが、彼女の「こだわり」なんでしょうが、彼女と彼との関係も最後に別のクラスだと解るだけなのも原因かも知れませんが、そのこだわりの理由がよく理解出来ませんでした。私達は付き合っているんだという事を、みんなにアピールしたいという事なのかも知れませんが、何故それをアピールする必要があるのかなんて事を考えると、やっぱりピンときませんでした。彼女の登校する間の気持ちの動きは面白かったんですけどね。

Entry 2●『MARIA』Yutaka Izumiharaさん
おぉ、ハードボイルドだぁ。あと500字位余ってるから、もう少し判り易く描いて欲しかった気もする。出てくる地名や小道具、登場する人達も、馴染みがないからだろうけどね。アイリッシュ訛りの男(でも名前は祐介?)が、ラストに撃たれ死んでいくんであろう時に、娘のマリアに声をかけるシーンも、遊園地は?と問い掛けるマリアの気持ちも(何も判らないのか、現実から目を背け男にちゃんと生きていてよねと言っているのかは不明だけど)ジーンと来ます。左の牌だとか、女に気をつけろなんていう、後で重要になるセリフも生きてます。面白かった。

Entry 3●『光と虚影症』皐秀莓さん
すごい。面白いです。勿論おかしいという意味ではありません。子供の頃の事を忘れてしまう(捨て去る)という事で、影が出来、それが自分の反対側の性格だという、話としての設定ではなく、表現上の説明というのが新鮮でした。勿論話としては、主人公が子供の頃の幼なじみを好きで、彼女の方はただの友達だとしか思っていない。自分の方を向いて欲しいなぁという、ただそれだけの話ではありますが、こういう書き方もあるんだなぁと、感心してしまいました。

Entry 4●『SOUND』橘D子さん
感覚の中の一つが無くなってしまうというのは、恐いです。しかも始めに自分で気づかないなんていうのは、いやですねぇ。そして、何やら、別の感覚が無くなってしまいそうな雰囲気も出てるしね。だけど、恐怖小説としての恐さを狙ったのならば、失敗でしょう。彼からの電話が聞こえないという説明が多過ぎて、彼と話せないという悲しさや罪悪感の方に比重が移ってしまっている様に感じます。でも夢という事だから、居留守を決め込んで電話に出ない主人公の罪悪感の現れであり、聴覚の異常の問題じゃないんでしょう。でも私は電話って好きじゃありません。出たいときに出るんならいいんですが、こちらの都合は全然関係なく、呼び出すじゃないですか。その点はメールなんかの方がいいですねぇ。

Entry 5●『遠い回廊』伊勢 湊さん
前回の挿し話(ラビリンスの絵)から発展したみたいな話ですが、ストーリー重視の私としては、あまり面白くなかったです。話しの設定にムリはありませんし、自然な流れで展開していきますから、問題はないんでしょうが、迷ってしまったというだけなんで、その後に何が来るのかを期待してしまったからでしょう。ありえないはずのビルが出てきた時点で、完全に現実と違う世界にいるという事にしてしまったんですから、異世界の話しに発展してもいいんじゃないでしょうか。それとも、異世界には踏み込んだけれども、現実世界には戻れないという恐怖を表現したかったのなら、高さでなく、同じ階のままでも、どの扉を開けても出られないという事が判る様に、例えば、印を付けて、かど毎に必ず右側へ行く様にしても(基本的には片側を伝っていけば、一周できるはず)元の場所に戻ってしまい、途中の扉は全て袋小路だなどという風にするとか、いつまでたっても、印が出てこないとか、色々手はあると思います。

Entry 6●『決闘』akohさん
松と笹の決闘というのには、びっくりしました。実は途中で梅でも出てきて、松竹梅に関したオチなのかなんて思ってしまいましたが、違いましたねぇ。そのまま剣豪小説でした。突き専門の剣術というのは聞いた事がありませんから、外国からのものか、又は忍びなどの亜流かも知れません。まつぼっくりで鎧を作っていなかったのと、笹に変わりの太刀を持たせたのが、運の尽きですね。もっとも笹も竹の鎧を着ていたかも知れませんがね。

Entry 7●『ROUND DANCE』川辻晶美さん
うまいなぁ。そうとしか言い様が無い。こういう人の感想っていうのは書き難い。彼女の作品には結構外国の事とか人とかが出てくるけど、少しの間でも、外国での暮らしがあったんだろう。なんて勝手に想像してしまう。勿論これだけじゃ、どうなるかなんて判らないと主人公に肩入れしてしまう私としては、言ってしまうけど、いくら言ってももうダメだよなぁ。まぁ、フィアンセじゃなくなった事は確かだよね。彼女が主人公を避ける様に振舞うのが男としては、ちょっと切ない。

Entry 8●『明るい未来』桑山 忍さん
あぁ、こういう観念的なのって苦手なんですよねぇ。ケメ子という名では、昔のフォークソングを思い出しますが、作者又は主人公にとっては、ケメ子というのは愛する人の象徴なんでしょうか。普段の生活のために苦労はするけれども、彼女はそんな苦労をしなくとも自分を慰めてくれる。そして家族よりも大切に思っている。相思相愛の仲(古い言い方だなぁ)確かに彼女といると明るい未来が待っていそうです。

Entry 9●『ファラオの呪い』小林ミヅノさん
文字数の申告は1200字ですが、995文字しかありません。何故3000字に投稿したのかは不明ですが、出来れば1000字の方にして欲しかった。というのは一先ず置いて。確かに人の為に何かをするというのは、詭弁かもしれませんし、自分のために物事をするというのはある意味で正しい意見でしょう。それに彼女から「あなたの為にしてあげたのに」なんていう言葉を言われれば、ムカッとします。ありがた迷惑ってなもんですからね。でもピラミッドの大きさが、自分の考えを変えてしまうほどのものだったという説得力が感じられませんでした。それまでの意見はどうしたの?何故その考えを吹き飛ばす程大きく感じたのか?まぁ、それが「ファラオの呪い」なのかも知れませんけどね。

Entry 10●『クイック・アンド・スロー』自作
やっぱり説明が長いなぁ。時間がそこだけ早いのに、煙が出るのかなぁ。なんて思ってしまいます。ラストも中途半端ですしねぇ。面白いけど、それだけですねぇ。って一応自分で誉めてしまいます。(他の人にメチャクチャけなされる前に自分で誉めるしかない)

Entry 11●『ウィンター・スノウ』奈津家亜古さん
出だしが引きつけました。白い息たちが歩いているなんていうのもいいです。少年のちょっと変わった話し方も、天使なればこそなんでしょう。でも始めの「人間を…恐れである」というのと、この話しの結論とが一致しないと感じるのは、ワザとなんでしょうか。私は、ちょっとした事で、人間は変われるんだという事がいいたいんだという風に受け取りましたが、そうすると始めの文との繋がりが付きません。タイトルの「冬の雪」は、ただ単に雪が降った冬のある日の出来事だという意味のタイトルの様にしか受け取れませんでしたが、なにか関係があるのでしょうか。そういう意味では、私にはよくわかりませんでした。

Entry 12●『少年』氷ノ夏香央さん
最近流行りの「いやし系」とか「感動物」というのも話しになると難しい。随分前になるけど、「一杯のかけそば」が異常に持て囃されてびっくりした事があった。あれだって、はっきりいってたいした話しじゃなかった。と私は思っている。この作品も分類とすれば感動物なんだろう。私も出来れば書きたい分野ではあるが、私の性格がそうさせてくれない。そういう意味では羨ましい限りである。気になる点といえば、コンビニの店員と客という関係で、店員がいくら少年とはいえ、客に対しての言葉遣いが友達に語りかける様である事。むろんこれは今の世の中そうなんだろう。でも私は嫌い(これは、おじさんの論理だから気分の問題で欠点ではないだろう)それから、何故だかわからないんだけど、感動物なんだけど、一味足りない感じがする。「ここだ」と言えない所が、また素人だからなんだけど、主人公と少年との関係が希薄すぎるんだろうか?

Entry 13●『今世紀最大の作戦』羽那沖権八さん
こういう作品はいかに緊迫感を読者に味合わせるかにあると思う。そういう意味では、ちょっと物足りなさを感じた。でもラストのオチがそれを救っている。あぁ、そういう事だったのね。ってな感じで緊迫感の少なさを補っている。そういう意味では成功でしょう。でも、やっぱりラストまで、もっと緊迫した雰囲気が出せれば、もっと良かったんじゃないだろうか。

Entry 14●『言葉にならない話』斎藤一郎さん
愛するあまりに、彼女の死を境に自分の中に彼女を取り込んでしまうという男。彼女が死んでいないで自分の中に生きているという思い込みからの精神的な事なのかも知れませんが、私には本当に彼女の思考が自分と合体したと考えたいです。ってその方が小説っぽいですからね。だから、新しい彼女が出来そうになって、彼女が消えてしまうというのは、逆に意外でした。本当に精神的なものだったのかと思えるからです。もっともラストで、彼女の写真を見ることによって、彼女が復活の兆しを見せますから、ちょっと恐い感じでもします。(自分で何がいいたいんだか判らない。ごめんなさい)

Entry 15●『紅い花』テルヒロさん
気が滅入ってしまいました。これは何年先の話とかじゃありません。ひょっとしたら過去の話かも知れないくらいです。ちょっと進む方向が違えば発生する環境です。花の種を買ってから判明する廻りの環境の悪さと、奥さんの病状。こういう世界で生活することを考えると、ぞっとします。環境問題を気にすることさえ忘れてしまった様な、登場人物達と、彼らの生活が余計に悲惨です。未来の日本でない事を祈るだけですねぇ。

Entry 16●『籠』p/fさん
タイトルから見ると、籠(塀)の中に閉じ込められた生活なんでしょう。自分で何とかそこから抜け出したいという思いは伝わってきます。しかしこれは、はっきりいって、読むための話ではありません。読みづらいし、判り難い。私は小説を書いたら読んで貰いたいですし、面白いと言って貰いたいんですが、この作者は違うんでしょうか?読んで貰う為にはある程度、理解しやすい様に書くべきだと私は思っています。勿論、読者に媚びる必要はありませんし、作者が書きたい様に書けばいいんですが、先ずは読んで貰うのが先決です。その点、これは失敗ではないでしょうか。話しの内容は判りますし、廻りの情景もわかりますが、読むのに忙しくて浮かんできません。というのも、「閉じ込められた生活は、籠(塀)の中だ。タイトルに然り。抜け出す希望が伝わる。それは主人公の気持ち」(この感想の始めですよ)ってな感じです。わざとそうしているんでしょうが、まるで外国語を直訳して、並びを変えたみたいにさえ感じてしまいます。

Entry 17●『革命』Tさん
「私、決意したわ」えっ、決意?なんちゅう言葉を喋らせるんだろうと、思って笑ってしまいました。案の定お笑いですねぇ。こういうのって好きです。ちょっとおバカな奥さんとそれを手玉に取っていると思っている旦那の、くだらない会話とその間のくだらない説明とが妙に合ってます。やっぱり奥さんには頭が上がらないんだよなぁ。ラストの教訓は、もうちょっと崩れていても良かったと思います。例えば、「気を抜くな、妻の言葉と皮下脂肪」これじゃ交通標語?

Entry 18●『無題』厚篠孝介さん
主人公が童話作家になりますが、これも童話ですねぇ。父親の事を彼というのがちょっと奇異に感じましたが、これは童話作家になった後で書いたんで、父とは呼びたくなかったんでしょう。って勝手な解釈。SFではなく童話にした事で、この作品は生きた様な気がします。最後の方の父親というのは、女優になった女性の父親なんでしょうか。それとも彼といっていた男なんでしょうか。ちょっと判りませんでした。

Entry 19●『戦地に赴く』天野 幾さん
「地雷を踏んだらサヨウナラ」そう書き残して、アンコールワットを撮影しに行った、一ノ瀬泰造。なんか彼の婚約者の話みたいです。最近映画化されたあの映画も原作も読んではいませんが、結構TVでCMが流れてましたから、タイトルくらいは知ってますが、彼の日本での生活がこんなだったかどうかは判りません。逝ってしまった彼のお姉さんはきっと随分年齢が離れているんでしょう。自分の弟を、あの子なんて呼ぶんですからね。きっと両親が亡くなって、自分の力で育ててきた風に受け取れます。きっとそういう事もあって婚期を逃しているんでしょうし、弟を愛していたんでしょう。その彼の婚約者も大好きで、弟と同じ目には遭わせたくないというのが、充分伝わってきます。それでも彼女はせめて彼の遺品でもとの思いから、出発してしまう。戦争の悲惨さっていうのは、こういう形での発表の方が堪えます。

Entry 20●『プロローグ』一之江さん
「もも」以来のユニークキャラクター登場だ。久美子(本名)さんは勿論、夕鶴の鶴だと思うけど、友達の亀(かメりん?)も登場して、話しは井戸端会議ならぬ奥様の世間話。亨さんが本当の旦那さんの名前かどうかは別にして、幸せな結婚生活にどっぷり浸かっていく様子が、心地いいです。始めに登場するのが毛深い、鮭を咥えた熊かどうかはわからないけど、そんな男の口車に乗らないで、私は私の道を行くのよという、声も聞こえてきそうで、面白い。こういう形の話しになっても、一之江節は健在だ。やっぱりスタイルがしっかりしている人の作品は安心して読める。羨ましい。

Entry 21●『ピンクの手紙』かたやま伸枝さん
ありそうもないけど、あったら恐いと実感できる話。死刑執行人といっても、職業としてでない、普通の人が刑を執行すると、死人と同じになってしまうというのは、正常な人間の精神構造だろう。恐怖小説を好んで読むわけではないけれど、これは完璧なホラーだ。面白い。 

Entry 22●『がんじがらめ』鮭二さん
腐れ縁というやつですが、勿論男の立場から見た話しです。これが結婚でもして女の立場から見ると、旦那は結婚する前は、金が全然なくて、私が養ってたみたいなもんだ。なんて言い出すんですよね、これが。そして旦那はカミさんに頭が上がらなくて「はいはい」って言う事を聞いて、たまに「馬鹿野朗」なんて言ったりする。そういう未来が見えそうです。確かに「がんじがらめ」ですなぁ。

Entry 23●『中学生は……』あきらさん
中学生の恋愛物ですか。なんか照れくさいですねぇ。しかも両想いというのは、非常に嬉しいですねぇ。私が学生の頃は片想いばかりで、しかもプラトニックでしたから、羨ましいです。ラストの駄洒落?は判りませんでした。やっぱり暑くて頭の回転が鈍っているのかなぁ。