第6回3000字感想

 今回は随分遅くなってしまいました。で、今回から3000字も、文字数オーバーや少ない作品には、感想は一言だけにしようと思いましたが、感想書いてから字数を調べたんで、明らかに少ないもの以外は、一言だけじゃなくなってしまいました。字数がどうのとか、書き方がどうのとか私がここでいうのも変なんですが、一応バトルと称して発表しあっているという立場上、私には読んで貰いたいのならば、字数制限を守るくらいは当たり前だと思っております。勿論誤字がある様に字数の数え間違えだってありますから、少ない髪の毛逆立てて怒ってはいません。色んな人の作品に接するのは楽しいですし、色々読みたいんです。
 今回の感想は、もう既に感想を掲載されている皆さんと比べてみると、なんか同じ様な事を書いてるなぁという感じがしました。勿論シメシアワセテいる訳ではありませんが、これは私が読んだ感想です。これが正しいその作品への評価なのかというと、それはそうとは言いきれないと思います。ただ今回は同じ様な意見が多かったというだけです。という事で、忙しくて中々進まなかった、おじさんの感想の始まり。

Entry 1●『ノア』ヒカリ@75号さん(1797文字)
宇宙が立方体だというのは新鮮だし、唯一の神が唯一でないという設定にしているのも面白いが、それだけ。

Entry 2●『僕の憂鬱』Keiさん(2806文字)
語り手が僕(たぶん男)で、寝言のAも男であるという事は、同性愛という事なんだろうなぁ。中年おやじと恋愛関係にあるとはいいながら、一緒に暮らしてる、しかも面倒を見て貰っているらしい関係のようだ。そういう意味では、私の首尾範囲でない分、この関係がちょっと恐い。だから、タイトルの「憂鬱」は、きっと同じ趣味(というか同性愛)で、面倒を見てくれる、素敵な男性を見つけることが難しい事から来てるんだろうけど、まじめに働けよっていいたくなります。寝言に参加すると死ぬという事はないはずだけど、負担は掛かるらしいから、気を付けた方がいいでしょうねぇ。相変わらず、感想になってないなぁ。

Entry3●『消えた指輪』のぼりんさん(2673文字)
コロンボに、同じアイデアがあったのを思い出した。もっともあれは犯人を捕まえる為の、コロンボが仕掛けた罠でしたけどね。

Entry4●『ひねくれ者のプレゼント』子如烏一月さん(2855文字)
子供達が選んだプレゼントは、始めみんなで一つなのかと思った。現実問題として、一人づつ違う高価なプレゼントを買うというのが、子供達だけでは難しかろうとの思いがあったけど、まぁ、童話だからいいのかなぁ。その点では、父の日や母の日、又は誕生日に肩たたき券を贈る子供に様な写真のプレゼントというのは、ほのぼのとした気持ちにさせてくれた。逆に童話だから(多分?)子供達の名前は無くても良かったような気がする。名前がある所為で、子供達のキャラクターが生きてきていない様に感じてしまった。子供達が裕福な家庭に育っているが、ジョニーだけは貧乏だというのなら、写真じゃなく、絵でも描いて贈った方が、感動的ではあろう。

Entry5●『メテオ貫通トンネル』機械科ボイラーズさん(2885文字)
面白い。「穴吹様」と呼ぶ語り手の立場も可笑しいが、めちゃくちゃな話しに納得する穴吹氏も面白い。原爆などの衝撃波は、音速の3倍位だという話しを聞いた事があったが、光の早さの1/2ならば、その衝撃波は直径30cmの隕石でも、相当な被害が予想されるはずだ。しかしアメリカが滅亡していたとは知りませんでしたし、普通のセールスマンが工事の交渉に来るとは驚きですねぇ。注釈は、もう少し凝らないと、効果がないでしょう。例えば逆に「勿論、これは全て事実です」なんてね。

Entry6●『夏の残り香』伊勢 湊さん(2999文字)
自分と同じであろうアキを見ることで、自分の中にあった家出の要因が少し理解できたという、これは自分発見の旅の話しですかねぇ。若い頃の、生きるという事への憧れ(ちょっと変?)の様な、甘酸っぱい感じが漂ってきます。いい雰囲気だと思います。

Entry7●『夏の日』きたやま ゆたかさん(2989文字)
現在と昔の回想のシーンとが交互に表れているのが、読んでいて判り難かった。同じ場所だという事が要因の一つではあるんだろうが、もう少し理解できるように書いて欲しかった。だけど働いていて、一生懸命になれないなんて男を好きになるとは、ちょっと傾いた母性本能だよなぁ。こういう男を好きになるって、不幸の元だよなぁ。(関係ないけどね)

Entry8●『ショップまつば東京matta//station短距離旅人旅行用スーツとリュック』岡野貴司さん(2764文字)
年の所為かも知れないけど、よく判らない。これは小説なのか?時代は、退廃的な未来の様ではあるし、出てくる品物も想像出来る様な雰囲気もあるんだけど、イメージが貧困な私にはちょっと難しい。

Entry9●『天使の薬は』厚篠孝介さん(2999文字)
25世紀の後期に設立される「エンジェル…会」の設立意義の形で書かれる文章は、万能薬(エンジェル)の説明であるが、製造禁止を訴える為の話しからは、少し論点が外れている様な気がした。人間が機械文明を発明してから、その弊害を知っていながら、機械文明を捨てられない様に、万能薬の効果を知っていながら、それを捨てられるとは思えない。結局は説得性に欠けるからだと思う。せっかくの万能薬を止め様というのだから、それなりの話が無いとせっかくのアイデアが活かされないのではないだろうか。逆に例えば、新興宗教の法話の形式で、みんな60歳になったら死にましょう。なんていう話しにした方が、納得出来る様な気がする。このままだと、説明しきれない事柄が多すぎる様な気がする。怪我や事故で死ぬ人は減らないだろうし、人口が膨れ上がった為の弊害が、食糧危機だけに留まるとは、思えないからだ。もちろん開発当初の薬が、本当に世界に公表されるかという問題さえある。どっちにしろ、私が書く話もこういうふうになりそうな気がして、あぁ、お仲間がいたなぁ、なんて思ってしまった。

Entry10●『ネクタイ』埜間晶谷さん(2996文字)
始めの「一本締め」で、仕事が終わった社内で軽い宴会でもしているのかと思ってしまいました。「パンと響き渡った、その乾いた音は…」ってな感じでも良かったんじゃないでしょうか。女の子のお尻を触るのが挨拶だと思っている、仕事が出来れば良いという様な人達の、さらっとした不倫の話しは面白いんですが、ラストがちょっと弱い感じがしました。物の怪の話しなんですから、昨日と同じのネクタイをそのまましていて、訳を尋ねると、どうしても外せない。その内段々締まってくる。なんてね。だけどネクタイって女性が男性に贈るのは「私は貴方に首ったけ」なんて昔は言ったけど、今もそうなのかなぁ。

Entry11●『水の杜に、龍は眠る』川辻晶美さん(3000文字)
話しの内容とタイトルとがぴったりした感じです。龍=人魚というのは、新鮮でした。私が思っていた龍が住むきれいな水というのは、海水のことではないという想い込みがある所為かも知れません。名前のイオもさかなっぽい名前で、雰囲気があります。しかし、突然主人公を襲う恋心というものが、セックスへの期待という、恋とは又違った感覚が感じられて、なんか幻想的な雰囲気から、ちょっと外れてしまったかなという感じもしました。もっともこれは男(中年のおじさん)だけの感覚かも知れませんけどね。だって、突然若い男の目の前に、全裸の美女が現れて、誘ってくるんですからねぇ。これは余程男性の気持ちをしっかり書かないと、恋と生理現象との判別が付き難くなってしまいます。例えば、後で知人にその話しをしたとしても、「巧くやったな」ってな応えが返ってきそうな気がしますからね。

Entry12●『ハートブレイク』羽那沖権八さん(3001文字)
始めの、医者に対するぶっきらぼうな(高圧的)な言葉使いが、主人公の性格を的確に表現している様で、驚きました。ラスト近くの心臓を取り出そう(自殺)とする時の、心臓の反乱も面白い。作者はホラーにはしたくなかったようだが、出来ればこのまま、ホラーとしての作品の方が良かった様に思う。ラストの意外性のなさが、逆に作品を小さくしている様に感じた。

Entry13●『黒い回覧版』越冬こあらさん(3000文字)
うわぁ、悲しい。加藤山さんは、まるで死神の下請けみたいなもんですねぇ。最近続いている昔話口調の話が、これにはピッタリです。言う事なしですねぇ。でも主人公の名前ってなんて読むんですかねぇ。変なところが気になってしまいました。

Entry14●『炎のがらめ』鮭二さん(3004文字)
前回の「がんじがらめ」と同様のキャラクターとパターンだけれど、やっぱり面白い。今回は一層女性の強かな感じが現れていてキャラクターの魅力に拍車がかかってる。いいねぇ。タイトルの「がらめ」は「絡め」なんですねぇ。タイトルだけ見て、ガメラの間違いかと思ってしまいました。

Entry15●『お年ごろ』一之江さん(3000文字)
やっぱりこの作家は面白い。今回は会話と主人公の考えだけから書かれていて、今まで多かった情景描写が一切排除されている。それでもやっぱり情景が浮かんでくるんだから、すごいよなぁ。うーん。読んでて嬉しくなる作品が続くなぁ。

Entry16●『孤独な夜空に』Defaultさん(3001文字)
歌ではなく、唄になっているのが、雰囲気を盛り上げている。ちょっと出来過ぎの様な気はするが、「事実は小説より奇なり」だから、無いとは言いきれない。この青年がちょっと心理学を勉強した学生とか、詐欺師だったりしたら、ラストも変わって来るんだろうが、ラストの星一杯の夜空は、ちょっとやり過ぎかなぁ。
最近せりふの「 」の無い文に興味があるんだけど、defaultさんは回想(自分の立場で物を言っている時)には使っていないようだ。確かにこうするといいかも知れない。こんど使ってみよう。

Entry17●『本能寺炎上』紅緋蒼紫さん(2992文字)
1000字と同じ題材ですが、こちらの方がずっと良い。歴史小説というのは、調べるのも大変だし、過去発表になっている作品から勉強するとしても、態とウソを書いている場合もあるから難しいですよねぇ。歴史的岐路とでも言うべき、本能寺の変は色々な人が書いていますから、当然資料は多いでしょうが、書く人の歴史感とか、解釈(見方)の違いからか、何故という事が疑問にはなっている様です。明智光秀本人さえ、確固とした理由が無かったというのは、見えない大きな歴史の進むべき道が遣わした力なんでしょうか。どちらにしろ、魔王を退治するという考えを持っていたと考えた作者の思いは、頷けました。信長の男としての力強さが溢れていますし、光秀の信長の男気に対するさわやかな気持ちも嬉しいです。時代小説の少ないQ書房ですが、これは面白い。

Entry18●『嘘』ワダナオユキさん(2999文字)
まず「。」がない文章なんで、ビックリしました。それとは別に読み難かったんですが、日本語としての文章という観点からいって、変な部分が多かったからでしょうか?一人暮らしの高校生という設定の無理は気になりましたが、話しの不思議さとしては、いいと思います。ただラストで彼女は自殺に見せかけただけなのに、死んでしまうんでしょうか? それはちょっと悲しいですねぇ。