第9回3000字感想

今回の感想も相変らず遅くなってしまいました。最近みんな感想が早いんで頑張ってるなぁと思っています。いつもの通り感想にもなっていませんし、自分の作品は棚上げしております。文章が長い短いが作品の質に全然関係ありませんので、御了承下さい。しかしなんか最近辛口になってきたような気がしています。気を悪くなさらないで下さい。

Entry.01『陽・画廊の結婚』有馬次郎さん
私はこういうのが不得手なんで、憧れてしまいます。やっぱり恋愛経験の少なさが原因でしょうか。しっとりした情感と男女の機微が心憎いですねぇ。始めの方の情景描写がちょっと遣りすぎとも思える程に凝っていますが、後で巡ってくる体験?の布石だったんですねぇ。始めは嫌だなぁと思ってしまいましたが、ラストでの効果を考えると、正解ですね。良かったです。

Entry.02『彼女のくじ運』のぼりんさん
この少年が明智小五郎の事だとすると、時代背景がちょっと似つかわしくないから、きっと別の誰かとの仮定での話しだろう。そういう意味では小五郎だとか、苗字が多田野から変わるというような書き方はしなくても良いと思った。謎解きということで、すぐ思い付く疑問点をあげると、宝くじを十枚買っているのならば、1年前の発表であっても、末等が当るはずであること(宝くじをバラで買っても連番で買っても、末尾の番号は0〜9になっています)それを毎回奥さんが金を出して引き取っていたんでしょうか?(そんなはした金はいらないと旦那が捨てていたとも考えられますが…)それから宝くじには第○○回という回数がついています。あれは年単位に1から始まらずに、ずーっと継続していますから、確認の際に回数だけはいくらなんでも見ると思います。だからそれよりは、新聞だけでなく捨ててあった宝くじも一緒に一年前である必要はないと思いますが、古い当たりなしのものとすり替えておくという設定の方が適当な気がします。大体宝くじを買うと神棚なんかに置いておく人が多い様ですから、すり替えは簡単な気がします。勿論末等は奥さんが換金するという名目で旦那から買い取る事は必要になってしまいますけどね。(捨てていたものを拾わないとは限らない)

Entry.03『ヴィンテージ1945』やす秦さん
おぉ恐い。始めは古き良き時代?を懐かしむスパイかなんかかと思って読み始めましたが、悪魔でしたか。私だって美味しい物は食べたいんですが、中々食べる機会がないような高級な料理を、楽しみながらの会話という設定は洒落ていて面白い。アミュゼってなんだか判らないけど、ブルスケッタだとするとオードブルなんていう意味なんだろうか?貧乏人には高級料理は判らない。

Entry.04『「僕らの時」』Ryoさん
学生時代の気のあった友人達。何年も経てば親友と呼べる仲かどうかは判らないが、今その時には、最高の仲間である。そんな彼らの青春が輝く未来に向かっているのが、若い頃を思い出させる。あの頃は良かったなぁってね。でも本当はいつまでもそういう気持ちを持ち続けられればいいんだけど、世間のシガラミってやつが許してくれないのは、仕方がないのかなぁ。ちょっと長いのが気になったけど、楽しく読ませていただきました。

Entry.05『隣人』紺野 れんさん
ひぇーっ。なんちゅう設定じゃ。面白いぞい。電話を使っての年代当てクイズっていう発想は凄い。しかし夜の夜中に電話してくるというのは非常識極まりない。でもテープで最後のブザー音以降の話し声とかを録音しておいて、悪戯電話をしたら面白いだろうなぁ。ところで、主人公はこの後一体どうするつもりなんだろう。同じ様に続けてしまうというラストは、ちょっと意外性を欠いている気がする。例えばラストは未来の場面になって、「先祖と話そう。今何年?」なんて番組だとかね。

Entry.06『飾られなかった花』Naokiさん
途中の半分くらいをしめる量の話しがメインなのは分かるけど、話しが始まるまでの前振りとの関連性が感じられず(あるのかも知れないけど)これじゃ途中の話しはなんでもいいと感じてしまう。これからお話会を始めます。始めに…ってわけじゃないんだから、出だしの内容と中盤の話しの内容とに意味を持たせても良かったと思う。ただ出だしについては、何が始まるんだろうと興味を引かせてくれるから余計に感じてしまった。ラストの「泣いていいかな?」「どうぞ」は、気持ち良く感じた

Entry.07『春という季節に』山森瑞穂さん
悲しくて切なくて泣くというのは、心の浄化作用なのかも知れませんが、子供が大怪我をした時には、私もそうでした。あの子が死んでしまったらなんて考えると、とても遣り切れない思いがします。そういう気持ちは勿論妻に対してもありますが、そういう意味ではこの作品は胸にじーんとくるものがありました。淡々と日々の生活を当たり前の様に送っているけれども、いつかはやってくるものではありますが、心の準備が出来ていない場合には特に、日頃の自分の妻や子供に対する態度が本当にそれで良かったのだろうかと思えるんでしょう。もっとちゃんとしてやれば良かったなんていう気持ちが湧いてきて、自分を責めたりするのかも知れません。東京にも桜とチューリップ一緒に咲くのを見られるところはあるんですかねぇ。私はまだ一緒にある場所を知りません。今年は花見に行けなかったのもあったせいか、余計に悲しくなりました。

Entry.08『ルールの男』河野成年さん
家にはウォシュレットがありません。多分作者がいう風呂も電気で自動的に湧かせるオフロのような気がしますが、その所為で、オチが手探りです。悲しい。ウォシュレットが水だったのは停電か何かがあって、水になっていた。その為、お風呂も沸いていないという事なんでしょうか。まさか突然便意を感じて、靴下を脱ぎ忘れたのが悲しいというだけのオチではないと思いますが、家はガスのお風呂なんで、面白さがよく判らない。

Entry.09『群馬県前橋市』佐藤ゆーきさん
タイトルで仰天した。なんという面白い(誉め言葉)タイトルだ。こういうの一度はマネしてみようなんて思ってます。タイトルと内容との関わりはといえば、途中に出てくる大学生が来た場所だというだけで、話しとは全然関係ない。ラストまで主人公は前橋ってどんなとこだろうと思っているだけという、ある種の憧れにも似た場所である。前橋には行った事もないし、どんな所が分からないが、こういう書き方をされると私も一度行ってみたくなった。

Entry.10『天使のあくび』さとう啓介さん
一人に一人づつ天使がついてたら、こんな事を言ってるのかも知れないねぇ。天使というよりは、背後霊みたいな感じもするけど、しかしこの主人公若いのに、学生気分が抜けきってない様だなぁ。こんな感じでよく会社も雇っているものだ。普通の会社なら即クビの気もするけど、社長の息子だったりするのかなぁ。だったら余計に大変な気もするし、まぁこういう話しにはこういう性格の登場人物が適任のような気はする。

Entry.11『E-mail from,,,』根本智也さん
主人公の息子は留学先で射殺され、知り合った男の息子は政変で亡くなっている。精神に異常をきたしてしまっている彼らの息子への思いが、悲しい話しであるはずなのに恐いです。ほんの最近の事なのに、いつもと同じ様に生活していて、幸せや豊かさにどっぷり浸かっていて、多分戦争を知らないであろう年代の彼らを通じて、平和ボケしている日本人に警告を発しているんでしょうか。

Entry.12『よっちゃんのこと』海坂他人さん
私が知る作者の事は勿論少ないが、脚色したノンフクションという感じがした。学校教育の問題は色々あるけど、随分良い方向に変わっているらしい(と思いたい)私の子供は養護学校に通っているので、普通の学校はよく判らないが、そういえば小学校の低学年の時はこんなだったかも知れないなぁと自分の事を思い出した。4年生からは大好きな先生で人気もあって、当時は先生になりたいなんぞと考えていたものである(なんという今の生活よ)やはりひらがなが多い為に読み難くなってしまってはいるが、淳ちゃんが書く作文だという設定なのだろう。しかし淳ちゃんが可愛い。

Entry.13『木の葉の狐守唄』英 康作さん
ラストは晴明と漢字で書いたんですから、『あべのせいめい』は不要でしょう。始めは木の葉というのは、はるあきとあったんで春秋で、秋には枯葉となって散り始める木の葉っぱの事かと思い、童話の様な話しかと思いましたが、中盤からの狐という事で、子守唄と狐守唄もかけているようだし、どんな話しになるのかと思っていましたが、最近流行しだした?陰陽師でしたか。なんかこれから話しが始まるところなのに終わってしまった感じがしてしまいました。まだ半分位の字数がありますんで、是非もう少し書いて欲しいです。

Entry.14『散歩道』るるるぶ☆どっぐちゃんさん
銃だ。じゅうだ。じゆうだ。自由だ。っていう洒落で落してる話じゃなくて、ガンばって生きて行こうとしている人が、パンドラの箱の底に見つけたのが自由だったっていう話しなんだろう。始めの主人公の想像が、自由を求めるための布石として書かれているんだと思うんですが、マニュアルに従った自由度を失っている接客というのも大変なんだろうなぁと思っています。「ポテトは…」なんていいたかぁないよと思ってるんだけど言えないという思いは店員にもあるのかも知れない。もっともそんな事さえ考えていないのかも知れないけれどね。始めのファーストフード店での狂気に似た表現がピンと来なかったが、三人称でなく一人称で書いていれば別の趣になった気がする。若い人の音楽についていけない私には、イアソンがどんな曲を出しているのかは判らないのも原因のひとつかも知れない。途中で出現する男性が、自由なんてどんなところにでもあるんだよ。と言っている様でもあり、私には自由が掴めないと言っているようでもあり、そういう意味では、話しの展開がラストへ向かって順調に流れているとは思えなかった。これは多分私の読解力の無さだろう。

Entry.15『心中』逢澤透明さん
この作品を読んで以前から考えていた作品のプロットが浮かんでしまいました。そのうち使わせてもらおうと思います。で心中というのが恋愛関係にあった二人が行う悲しい儀式というイメージがありましたが、こういう心中も確かにありですね。サスペンス仕立てで面白いと思いました。一般的にはFAXというところを敢えて略さずに書いた点と、午前12時が正しいけれど、午前0時と書いた点が、まぁそういう設定の人なんだろうとは思いますが、気になりました。世間の目から見たら裏側に住んでいる二人の悲しさと思いが、二人で傷を舐めあっていてはいけないという思いとが、悲しかったです。

Entry.16『りんごジャム』一之江さん
太田裕美の歌を思い出してしまいました(笑)電話が鳴るまでは主人公はてっきり奥さんという年齢かと思ってしまいました。男性と一緒に住んでいたという事で、てっきり彼女は結婚していたんだとばかり思ったんですよね。姉が作ったりんごジャムを食べながらも、姉の様にはならないぞという自分の思いと、振られるという事で自分の悲しさを大事にしながら、少しづつ悲しさを和らげようと努力している感じが伝わってきました。こういう悲しさっていうのは主人公が振られなれていない所為なのか、それともアイデンティティの問題なのかは判りませんが、これから沢山恋をしていくであろう彼女が可愛いです。

Entry.17『奇妙な絵』作者さん
古典的な「心理試験」は、昔江戸川乱歩が使った手だったなぁと、読んでいて思い出した。作者の名前も「作者」というのはちょっと、混乱しそうだが、映像になったら恐い話しである。こういう話しを読むのは想像をかきたてられて余計に恐い。多分事故を起こした男が、精神病院に入れられて治療しているのだろうが、その男と刑事との関係がちょっと弱い気がした。というのは、事故を起こした原因が狂ったからで、狂った原因は少女を殺したから?だとすると、白骨化した少女は何年も前に殺害されており、多分その直後の事故だろう。だとすると、何年も病院入りしている男の所へ刑事が捜査?にくるという点だ。ひょっとしたら、もっと長くて削ったのかも知れないが、気になった。しかし久しぶりに恐い話しを読ませて貰った。

Entry.18『アルパカ大行進』伊勢 湊さん
ラマに似たあのアルパカが本当に出てくるとは思わなかった。アルパカが本当に大行進するのかどうかは判らないが(多分しないと思うが)不当な仕事?を与えられて、仕方なくその仕事をやるという、なんか貧乏くじを引いたサラリーマンの話しの様だ。日本の会社社会とは完全に独立している個(この場合のアルパカ)を出現させるという手は、そのギャップが大きければ大きい程面白いと思うが、アルパカが出てきて、しかも大行進というんだから設定としては、楽しみだったが、アルパカとのシーンがもう少し欲しかった気がする。一体あれは何だったんだろう、夢だったんだろうかと思わせる為なのかも知れないが、やっぱりリアルな感じのアルパカのシーンが欲しかった。

Entry.19『スーパー清水くん』鮭ニさん
遊んでるなぁ。若奥さんのキャラクターまで出している。始めの土管いじりの意味が判らなかったけど、そういう事でしたか。あいかわらずの変態ぶりである。しかし主人公は思いも遂げられずに、じしょうスーパー清水くんのままだというのは悲しい。でか過ぎるというのは、問題だよなぁ(などと羨ましいけど、小柄な私は思います)

Entry.20『牛の背』越冬こあらさん
小説というのは読者の対象を選ばないと思うけど、こういう童話の様な話しというのは、勿論色々な意見はあるだろうし、そんな事はないといわれるかも知れないけれど、子供(しかも低年齢)向けに書くのが良いのではないかと私は思う。そういう意味ではこの話しは難しい。と考えると子供向けのように書いている大人向けの話しなんだろうか?しかし大人向けの話しだとすると、「――ました」で終わる文が、煩わしく感じてしまった。文体を変えると随分違った感じになりそうなのになぁ。しかし、最近のこあらさんは、なんか童話づいてる感じだけど、私は昔の作風が好きだった。

Entry.21『こんにちは』羽那沖権八さん
何色には笑ってしまった。しかしこんな異星人が侵略して来なくて良かったなぁ。地球人にはない器官が技術躍進の決め手というオチは尾も白かった。(古過ぎてカビが生えていそうなシャレだ)最初にコンタクトしてきたのが、アメリカ大統領という信じられない事態が偶然とは思えないから、きっと地球上で一番権力がありそうな人を対象にしたのだろう。そこから来る喜劇だからこその可笑しさだ。せりふが多いのが気になったが、しかしひょっとしたら猿とかの方が賢くなれるのかも知れない。

Entry.22『シェル』小径さん
シェル=カラを打ち(撃ち)破るという話しなんでしょう。なんか日頃の鬱憤(なんだこの野郎)を晴らすかの様に、ラストで主人公が撃ちまくるシーンは、爽快感(キモチイ〜ィ)が出ていると思います。口笛が高いド♯だったりするのも凝っているし、不条理な世界へ突然飛びこんだ主人公の戸惑いもテンポよくて面白い。でもこれって、主人公だけの幻想なのが、ラストで判ってしまうけど、このまま不条理な世界として続いた方が個人としては面白い様な気がする。

Entry.23『正義の味方だ。サラリーマン』自作
しかしなんちゅう話を書いてるんだか、笑って貰えれば嬉しい。