第3回中学生1000字・第4回高校生1000字全感想

 今回もちょっと遅くなりましたが、学生1000字の感想です。みんな頑張ってますねぇ。おじさんは嬉しいです。感想といっても、年寄りの愚痴みたいなもんですし、今回は特に私の作品よりも質が高いですから、こういう風に感じたおじさんもいるんだと軽く流してくださいね。でも今回はみんな本当に面白かったです。それに学生1000字を読んでいると、学生だからこそ書ける話というのが沢山あって、羨ましい限りです。私だって昔は経験したことのはずなのに、もう記憶の中は混沌としていますからねぇ。

第3回Q書房中学生1000字

Entry1●『春の終わりに』蒼倉宏明さん
普段感想をするときに、漢字をあまり知らない私は、誤字や脱字のことをとやかくは言わないんですが、入試の際には気をつけた方がいいと思いますので、敢えていいますが、共合わない→伴わないですね。ワザと使ったのかも知れませんが、「まったりとした時間」というのは比喩としても、私には奇異に感じました。こくのある味わいが口の中にゆっくり広がっていく様子のことですからね。ゆったりとかねっとり(これは違うか?)の間違いだろうと思いました。ストーリーは、劇的ですし、両親ではなく弟のことを考えるというのも、理にかなっており、弟が生きていたという事が救いになっています。勿論両親も家も亡くなってしまったんですから、救いといっても、諸手を挙げるわけにはいかないでしょうが、弟が生きていることで、主人公が、これからはしっかり生きていこうという決意を持つ。そしてラストでは、今までの自分の不甲斐なさを払拭する様に、空が澄み渡っているというのはとてもいいと思います。でも、彼らが今どんな境遇にあっているのかは解りませんが、主人公の気持ちをそのまま文章にしなくてもある程度は解りますから、澄渡る青空という情景が主人公の心情である様に、主人公の行動で示せば、もっと良くなったような気がしました。

Entry2●『とある日、とあること』ジェイさん
記憶を無くすというのは聞きますが、隠すという表現は始めてです。隠したい記憶が必ず見つかるかどうかは解らないけれど、消したい記憶は一生消したままになる場合もあるそうですね。消した方が幸せならば、消えていた方が良いのでしょう。でも、全く覚えていないから逆に知りたくなる。それが本当に知りたくない記憶でもね。人間の身体は正常に機能するように、自分でコントロールしますから、忘れたい記憶を忘れてしまうというのは、生理的には正常なことだと思います。ラストでは、又記憶を隠してしまっているという受け止め方も出来ますが、そうだとすると、又自分の記憶を探し出すことになるんでしょうか。(始めからの繰り返し)そうだとすると、ちょっと怖い話ではあります。



第4回Q書房高校生1000字


Entry1●『染み付ひた埃』駒宮小雨さん
私が高校生の頃、遊びで書いた詩が、曲をつけられて演奏された事がありましたが、その作曲者と演奏者は、あなたの学校の先輩です。って全然関係ないですねぇ。紙束は出来ればホチキスではなく、黒い紐で綴じていて欲しかった。うーん難解です。染み(埃)は、誇りでもあるのかも知れないし、とにかく自分が持っている何かではある様です。それを捨て去ってしまうけれども、それを捨ててしまったことに対する後悔の気持ちが存在する。ひょっとしたら、みんなに色々言われて、彼氏と別れたけど、やっぱり彼とは別れたくなかったという思いかも知れませんねぇ。うまく理解できているとは思えませんが、不思議な雰囲気が読んでいて面白いです。

Entry2●『とある日、とあること』さえさん
こういう日常の断片っていうのは、いいですねぇ。一般の1000字でもたまにある程度ですが、小説を勉強するうえでは、大切だと思います。私にはちょっと書けないんですがね。妻の事を明日香さんとさん付けで呼ぶというお父さんは、心根は優しいんでしょう。でもひょっとしたら、優しいだけで、何をやってもうまく立ち回れない性格のようです。そういう父に対する「ばっかみたい」とはいいながらも、愛情を感じて育っている主人公(美紀)の若さが、微笑ましく感じました。

Entry3●『お迎え』すずのすけさん
うん。面白い。死神のお迎えでの話は結構あるけれど、地獄が定員オーバーだとか、ネコにすぐ転生してしまうなどというのは、お笑いです。話の読み易さもいいと思います。ただ出来れば、段落の一次下げや途中での改行は、視覚的にも気になりました。あんまり関係ないのかも知れませんけどね。人生で最初で最後の心からの笑みが死ぬときだというのは、ちょっとやり過ぎかとも思いますが、まぁ、そういう設定なんだから仕方がないですよね。せっかく面白いんだから、出来ればもう少し書いて欲しかったという意識はあります。

Entry4●『ラムネ』青さん
始めの方の「…ぼく達どこに行くの?」のせりふと、葉子の困ったような笑いとが、まさか心中?なんて脳裏を掠め、ちょっと不安になってしまいました。ちょっとしたハイキングだったんですね(多分)。金魚を連想させる赤い唇とか黒飴のような瞳という表現がちょっと奇異に感じてしまいました。金魚の様に、ゆっくりと口をパクパクさせる人というのは、見たことがないですし、子供の目を見たときには、黒い瞳よりは、青みがかった白目の方が印象的だからでしょうか。それとちょっと読みにくいと感じましたが、たぶんそれは、主人公の視点から書かれているときと、三人称で書かれている時があって、その違和感かも知れません。なんか文句ばっかりいってしまいましたが、話の内容が心をゆったりする様な話なんで、読みやすさとか表現は重要だと思います。

Entry5●『ZERO』中里幸さん
幽霊が主人公で、しかも自分が死んでいるのに気づいてないっていうのは、すごい設定ですねぇ。彼女が雨の日に死んだのか、それとも本当に心の中に雨が降っているのかは解りませんが、視界さえも遮る土砂降りの雨で、誰かに声をかけられないと気づかない程ですから、このままだと地縛霊になってしまうんでしょうか?Entry1の友人?と同じで、これも不思議な話です。少し気になったのは、漢字の使い方ですが、「其れ」というのは、普段あまり使わないんじゃないでしょうか?友人の話でも使われていましたが、あっちはどちらかというと、戦前の話の様な雰囲気がありましたから、いいと思いますが、現代の話の場合には、やっぱり普段使う言葉でいいと思います。

Entry6●『君にささげる僕の歌』nkyyskさん
うーん。いいですねぇ。恋心が芽生えはじめた頃の心情が伝わってきます。授業での「…終止形だろうか」というのも、きっと彼女に対する心は終わりじゃない、始まりだよという事なんでしょう。他の生徒同士のたわいない遣り取りを見て、自分もあんな風になれたらいいのにという、気持ちが可愛らしく感じました。最後の「サヨナラ」じゃなくて「さようなら」というのは、サヨナラの方が別れの言葉で、さようならは挨拶という意味での違いなんでしょうか?タイトルの僕の歌は、きっと今の心は、こうなんだよという文章のことだとすると、これはラブレターなんでしょうか?(でも、それは無いか?)

Entry7●『セロリ』Ruimaさん
おぉ。かわいい。思わず微笑んでしまいました。私もセロリは大嫌いですが、ピーマンは好きです。この後の展開がどうなるかは勿論読者にお任せですが、意地をはって女の子が無視しつづけでも、彼の楽しさに引きづり込まれて、結局は付合いだしそうな雰囲気もありますし、良き友人としてずーっと仲良くやっていく様な気もします。うん。面白かったです。

Entry8●『シャボン玉』青葉大地さん
自分のことを僕と云い、言葉使いも男の子の様な女の子の出現に始めは戸惑ってしまいました。話の展開から、義兄が出来てから、そういう話し方になったのかと思いましたが、言葉にならない気持ちの部分でも僕という書き方なんで、きっと義兄さんが出来なくても元々そういう女の子だったんでしょう。彼女の気持ちだけでなく、義兄さんの妹を思いやる気持ちも、なんか爽快な感じを受けました。これも面白い。

Entry9●『Ko-To【コート】』アオイさん
男の友情って奴ですね。ふむふむ。いい感じです。幼なじみの秀人(しゅうと?スポーツ向けの名前だ)君との小さい頃の思い出を交え、学校も違ってしまい、多分最近は行き来が無かったんでしょうが、バスケの試合のおかげで、また昔の様に仲良く過ごす事が出来たという事ですか。うめぼしさんの感想には時間経過の話がありましたが、私はこれでもいいと思います。もし気になるならば、例えば、…「なあ、バスケしようぜ」と次の行を入れ替えるとか、とぼとぼと夕陽に背を…の個所に、「ユニフォームの入ったバッグを肩に引っ掛けて、」なんて言葉を入れるとかすれば、いいかも知れませんがね。しかしおじさんの私も若い頃を思い出してしまいました。昼休みや自習の時間には体育館で、バスケをやって汗をかいて、学生ズボンがしおを吹いて白くなったなんてのを想いだします。恋愛物の多い学生1000字ですが、やっぱりこういう友情物っていうのもいいなぁ。

Entry10●『いたずら吸血鬼』北条みゆいさん
現代の吸血鬼は、こうやって生き延びているのかも知れない。なんて事も考えられる話でした。ただ、女子高生の部屋に居候というのは、ちょっとマンガっぽいなぁと思います。この吸血鬼は親達に暗示をかけていて、いない様に思わせているのか、又は従姉妹でも預かっているつもりでいるのかは解らないけれど、そういう設定がどうなっているかが気になってしまいました。ても、話が面白ければいいんだけどね。始めからの軽快なせりふ回しとタイトルで、お腹が空いたという事からのラストの「美紀って甘いなあ〜…」のオチは読めてしまったけど、赤川次郎だったかの吸血鬼シリーズ(なんて云ったかなぁ女子高生の吸血鬼)も思い出してしまいました。

Entry11●『坊やと運』KENさん
運の量がきまっているという話は良く耳にしますが、全人類の運が上昇しだしたら、確かにこういう事もあるかも知れないなぁ。うん。面白い。こういう発想は浮かんだことがありませんでした。でも主人公の坊やであっても、その全人類の運に乗ってここまで来ているんだから、この後一人ぼっちで、悲惨な目にあってしまうんでしょうかねぇ。産まれたばかりの子供達は一体どうなるのかというのも気にはなりますが、彼らの運は上昇も下降もしてないから、相殺されて全人類の運と一緒でいいのかも知れません。

Entry12●『走り続けて』ナナオさん
これから頑張るぞという決意は、解るんですが、文字の羅列で読みにくかったです。結構こういう事って大事だと思うんですよね。一字下げて書くとか、行を空けるとか、ちょっとした、本当に些細なことだけど、読む気にさせる。っていう作業はやっぱり、物を書くうえで大切なことなんだと私は思っています。それから例えば、始めの方の「まっすぎに見据えて…」っていうのは、多分8行位あとの、「あの景色」って事だと思うんですが、私は何を見据えるのか戸惑ってしまいましたし、ラストの方の「涙が溢れた。…この海が愛しくて。…たまらなく愛しかった。」というのも好きだったとかにしないと、同じ言葉の繰り返しになってしまい、せっかく、「悔しくて、腹立たしくて、悲しくて、切なくて…」と来ているのみ、そのステップが台無しになってしまっている様に感じてしまいました。なんか知らないおじさんが突然凄いキツイ事を書いてしまってごめんなさい。でも推敲すればもっと良くなると思ってしまったものですから…。

Entry13●『梢と微笑み』奏筍さん
いつでも自分の思い通りになると思いこんでいる男性の、女性に対する勘違いの話ですかねぇ。そうです。女は強いんですよ。ラストの「いやよ」がバカな男を笑っているようですし、ひょっとしたら、女性はそんな男を判っていて、手玉にとっているのかも知れないとさえ思える、きつい一言でした。(ちょっと深読みしすぎかなぁ)

Entry14●『爆流、天の川。』Beganさん
この石は恋のキューピットの矢と同じ効果があるんでしょうか?ひょっとしたら、彼女も、もう片方の石を持っているのかも知れませんね。ロマンチックな話が、微笑ましく感じられました。名前がちょっと出来過ぎではありますが、解りやすさからいったら、仕方がないでしょう。うん。良かったです。

Entry15●『紅でもなく、蒼でもなく』トト♂ さん
ぞくぞくっとしました。いいです。その所為かちょっと言葉の使い方で、気になったところがありました。「昔から争いもしばし…」「しばし」はちょっとした間ですが、しばしば(度々)の事かなぁ、とか「紫の瞳持ち主」は「の」が抜けてるのかなぁ。きっとパンチミスだな、なんてね。でもそんなことは全然気にならない位に、面白かったです。(あんまり面白いから揚げ足を取ってしまいました、ごめんなさい)