第50回1000字感想

 今回の感想は久しぶりという事もあってか、少し乱暴さが減っているかも知れません(笑)とはいえ、いつものように好き勝手に書いています。作者の思いと違った読み方をしている場合もあるとは思いますし、一人の読者の感性の表れです。ですから、面白くないなんて書かれていても、作者はそんな事を気にしないで、しっかり自分の信じる道を歩んでいって下さい。この感想は作者を攻撃する為に書かれているわけではありません。

Entry.01『ノー・タイム』池田 哲さん
タイトルから受ける印象は、時間がないという事なのだが、スノータイムだと、雪(冬)の時間(期間)という感じもするし、試合終了のノーサイドという感じも受ける。話しの内容からすると、どれにもあたりそうであり、そうでもなさそうだ。前半部分は、軍隊を持つ寒い国に住む人の朝の風景とでもいう感じではあるが、後半に入ると途端に地球レベルの異常気象による戦争中の赤道直下の話しに置き換わる。前半と後半のギャップとしては面白いのだが、そのギャップを楽しむ為の設定が少しお粗末な感じがしてしまう。一晩で道が無くなってしまうくらいの雪が降るのに、テント生活でもテントが雪に埋もれないのかなんていう可愛い疑問から、生活の糧であるらしい缶詰はどうやって手に入れるのだろうなんていう事まで考えてしまう。まぁ話しの内容がギャップの面白さだけではなくって(戦争の哀しさなんて事もあるのかも知れないが…)主人公の内面の葛藤なんていう事が描かれていれば、そんな事は些細なことになってしまうのだが、そうでないらしい作品に感じてしまった。つまり何がいいたいんだが、わからないという事です。

Entry.02『当たり籤(くじ)』もふのすけさん
私の作品と違ってこの作品には下卑たイヤラシサが無い(笑)それが良いことなのかどうかは判らないが、内容から考えるとこの作品にはそういう感覚は不要だから問題なし(笑)主人公は15才位だから、少女に惹かれてはいても彼女を本当に好きなのかは不明だし、快感を得る為なのか彼女を他人に渡したくないという気持ちからなのかさえ、大人になろうとする人間の心と身体の調和が取りずらいという感じになっていて、読んでいて気持ちがいい。「みんなにないしょだよ」という彼女の言葉も、学校の仲間には言わないでという事なのか、タダで15になる前にしてもらったという事を色街の人に知られないでという事なのかも、主人公が抱く彼女との関係を表わすようで、良い感じである。

Entry.03『タバコが風にしみるなら』O-KAZUさん
凄く雰囲気が良い。というか主人公が少女だったら、宮崎アニメの世界になってしまう(もちろん少年でも良いのだが…) ラストで突然出てくる屋根を歩いているときに見た女の子や、木彫り(人形なのか?)が話しの展開とは全然別の感じがして違和感が残ってしまったのが少し残念だ。多分毛布を噛み締める原因となったものが妹との別れを表わしているのだろうが、この突然という感じを無くすために途中に何か伏線を入れるか、屋根−少女(略)を外して、妹への想いだけにしても良かった気もする。おっと文字数オーバーじゃないか、これならば屋根−少女は外して、妹の木彫りにでもするしかないか(笑)

Entry.04『坂と自転車と兄ちゃん』長田一葉さん
死というものを扱う作品は多いが、こういった子供から見た作品になってしまうと、悲しさが余計に際立ってしまう。坂を昇りきった所にもいなかった兄に対する思いが、良く使われる手法ではあろうが、短い言葉で並べられると涙腺を刺激しそうになる。私ならば、兄の死はまだ理解出来なくって、もっと勾配のキツイ坂を探してどんどん挑戦していくのだろうというラストにしてしまいそうだが、こういう終り方もありだろう。

Entry.05『絵本』逢優さん
これはひょっとしたら投稿先を間違えたのだろうか? 1000字の小説というよりは詩であるし、500字にも満たない。小説として捉えた場合、恋人のいる幸福感で一杯の主人公のノロケ話であり、赤面のいたりです。

Entry.06『幸福灯』越冬こあらさん
灯りを浴びると幸せになるわけではなくって、幸せを感じたときに灯りが点くという幸福灯がもたらしたものはという設定から、こあら節である説明(妻が聞きこんだ情報の聞きこみ内容の説明)の面白さが、読んでいて安心させてくれる。幸せなんて作ろうと思って作れるものじゃなくて、本当はどこにでも転がっているものなんだよという、なんだか当たり前過ぎるようなラストが少し残念な気もするが、こあらさんのこの設定の楽しさにはやっぱり脱帽するしかない。

Entry.07『サバンナのような夜』第1素描室さん
サバンナというとなんだかアフリカの草原というイメージがあるが、タイトルはきっとハイエナのような食事から来ているのだろう。私は白いドラゴンフルーツしか食べたことがないが、最近ではアイスクリームなんかにもあるらしいから、結構メジャーな果物になっているのだろう。ラストでハイエナのように貪り食っていた彼らは、何を賭けていたのだろうか? エッチな私は窓を閉めてしまった彼女とそのまま××の行為に向かったのだろう、なんて思ってしまったが、多分それは正解なのであって、そうだとすると読者まかせのベッドシーンなしの行為というのは、面白い手法だなぁと思ってしまった。

Entry.08『増子、チアノーゼ』空人さん
子供の生活というか風景を切り取った作品だが、私にはこういった作品は書けないだろうなぁと思ってしまう。ブォー・ブォーとウシガエルや、ジィージィーと鳴くセミ達の中で、暑いにもかかわらず元気に跳ねまわる子供たちのちょっとしたやりとり。大人になってしまうと、それは郷愁をさそうし、大切にしておきたいものではあるが、忘れかけていたものを何となく思い出させてくれるものでもある。何が言いたいんだと言われれば、それは癒しです。と、なんだか肩の力が抜ける、ホッとしてしまう感じがした。

Entry.09『アカクカノジョハサク』犬宮シキさん
幻想的な狂気。ラスト近くまで死体とも取れるが、それは花だったのだろうとも思わせる進め方が凄い。私にはこういう作品って書けないだろうなぁと思うと羨ましい。毎年彼女を見つけては殺してしまうという主人公はモテモテなんだろうかとも思ったが、考えて見れば、目的は殺す為だから、好きなタイプの女性を拉致してきても良いという設定になってしまう。そう考えると、無差別(とはいえ主人公の好み)美女連続殺人鬼である主人公は、映画「コレクター」の主人公にも似ているのだろう。こういう理解出来ない狂気は恐いものなのだが、主人公の視点から幻想的に書かれているせいか、それは薄らいで面白さがアップしている。

Entry.10『哀しい結末』満峰貴久さん
ほとんどセリフだけの展開だが、推理物を1000字で書き上げるには、仕方がないのかも知れない。それでもちゃんと結末はあるし、オチも決まっている。何故心中を企てたのかという謎は残るが、そこは1000字ですから…(笑)しかも料理は必ず奥さんがするというこの年代らしい生活と、自分にもボケが来ているんだろうと判っている老人の哀しさとが、社会派推理とでもいう分野となっていて、秀逸さはてんこ盛りだ。ただ推理物として読んだ時の問題としては、起承転結の起結だけであって、承と転との面白さがないことだ。1000字でそれは無理だとも思われるが、何とか挑戦して欲しい。せめて3000字ではどうでしょう。

Entry.11『ほんとの眼』氷月そらさん
最近視力が悪くなってきた私はメガネを必要としている。とはいえ爺婆メガネだから、年の所為でもある。若い頃からどんなに揺れるバスの中や、少し位暗い中でも全然平気だった読書も、疲れている夜などは、メガネなしでは手を伸ばしても本は読めない(涙)その所為か最近は読書量が減ってしまった。だから今までは視力の悪い人の物の見え方が理解出来なかったのだが、最近なんとなくわかってきたようにも思う。自分が見る世界はニセモノなんだというラストが、本当の世界と自分から見える世界の、どれが本当なのかと問いかける「マトリックス」のような世界観も覗いてはいるが、インパクトが少し弱い気がした。

Entry.12『凹〜ソンザイの証明U〜』檸檬さん
身体中の細胞は各々独立しているわけではない(多分)から、移動してしまうという事はないと思うが、設定として面白い。細胞各々に意思があるという事に対しては特に吃驚はしなかったが、やっぱり移動出来るという事にインパクトが大きい。お腹の細胞に胸の方へ移動して貰うとか、顔だってプチ整形どころか、どんな風にだって変形自在のような気がする。昔々のスタートレックTV版の話しで、地球から遠く離れた惑星に到着したカーク船長達が会った地球から移住していた人達が絶世の美女ばかりで驚き、実は彼女達は美女になる薬を飲んでいて、薬の効果が切れると醜い女性に戻ってしまうというのがあったが、実はその薬は本当は効果が無くて、美女になると思いこんでいた為に、変身する。薬の効果が切れると思いこんでいる頃になると醜い女性になってしまうというものだった。想い込みの力というのは恐ろしいものではあるが、催眠状態の人に水を掛け、それが熱湯だと想い込ませると、火傷の症状が出てくるなんていう事があるのだから、人間って不思議だなぁ、なんて思ったりしたものだが、そういう意味では、こういう話も有り得ない話しでもないのかと思うと、楽しい。

Entry.13『シュレディンガーの箱庭』橘内 潤さん
おぉっと量子力学の世界か、ひょとしたらハードSFなのかもと思って読み始めた(笑)シュレディンガーの猫の例えならば、人と触合って生きている(観察されている)以上は、「人生が『生きて』も『死んで』もない」って事はないと思うが、この話しの場合は、そういう事に固執する必要はないだろう。というのも学生時代の仲の良い友人との楽しい想い出とでもいうべき作品だからだ。昔はこんな馬鹿をやっていたという想いが、読んでいて好感が持てた。

Entry.14『全ては狼男の手の上に』木葉一刀(コバカズト)さん
捕まりたいと思う犯人は、犯行現場に証拠を残していくというのを聞いた事があるが、それが正しいことかどうかは別として、犯人(しかも捕まりたい)側から見た小説というのは始めての気がする。役不足の探偵ではなくて、ラストは「犯人はこの中にいます」というあの名せりふを待ち望むという設定が、新鮮だった。まるでコロンボのストーリー展開のように、犯罪を犯し、捕まらないだろうと画策する犯人とそれを解決していくという展開が新鮮だったように、こういう話しも面白い。

Entry.15『飲もう』日向さちさん
アルコールの話しかと思った。酔っ払いのさちさんが、コーラ!そりゃないだろう。ってツッコミを入れたくなってしまう(笑)もっとも自分のことを好きになってくれる人がいるっていうのは、本当に素敵な事なんだけど、それがまだ理解出来ない年齢という設定だから仕方がない。彼だって主人公を誘うのには勇気が必要だったはずだし、せっかく二人で映画を観られたのに、ひょっとしたら手くらい握っても良いのだろうかなんて悩んでいたんだろうが、喫茶店も付合ってくれないなんて、きっと随分落ちこんでいるだろう。でもそういったピュアな若者の行動が微笑ましい。気になった点はといえば、最近の若者の言葉はよく知らないから間違っているかも知れないが、私の場合、口語調で書くときに、気にするのが、「○○なのだろう」というような言葉だ。良く書いてしまうのだが、「○○なんだろう」という言い方を私はしない。「○○なのかな?」とは言っても「○○なのだろう」という言い方は誤ってはいないが、私には違和感が残った。しかし私は炭酸飲料どころかダイエットを始めてから、お茶類以外は殆ど口にしなくなったが、以前はコーラよりもドクターペッパーが好きだった。それに未だに映画は一人で鑑賞するものだと思っている。

Entry.16『ATOLL』川辻 晶美さん
英語は苦手だから、タイトルの「ATOLL」は調べてしまった(笑)若い頃には簡単に出来た漁も収穫が少なくて生活出来なくなってきたのだろうビキや、破壊されいいく自然に対する感慨は読めば解るが、なんだかどっちつかずの話しになっている気がする。前半部分のビキの暮らしぶりと、後半の自然破壊に対する文章にギャップがあるからだろうか? ラストでビキが見つける巻貝が、自然破壊と今の生活との象徴ならば、地球環境を直接大掛かりに書く必要性はないと思える。ビキの視点から見た生活の変化だけで十分なのではないだろうか。

Entry.17『約束』宮田義幸さん
犯罪者と囚われて女性という図はなんとなく古い気もするが、いつの時代でもそれはあるわけだから、そこにどれだけ特異な点を出すかが決めてになるような作品だ。パンドラの箱式のラストなのかと思わせておいて、爆弾かよ。というツッコミもなんのその、彼女は生きていて長生きする。しかし意識だけという悲惨な運命。というオチはちょっと哀しい。ラストで彼女が死んでしまっているような書き方(女は百歳まで生きた)にするよりは、まだ死んでいなくて、彼女には今の境遇から恐怖を覚える蝉の声だけが聞こえてくる。なんていう終わり方の方が私は好きだ。

Entry.18『歴史管理官』自作
タイムパラドックスなんのその。時代考証や歴史的事実も無視して、たまにはこういったおバカなSFだって書きたくなってしまうのだ。果して主人公の奥さんは信長と出来てしまったのだろうか? 現代(とはいえ未来)に到着する信長を待つ運命は…。以下続く(わけがない)

Entry.19『そして誰もいなかった』大覚アキラさん
「そして誰もいなくなった」のタイトルだけのパロディだが、面白い。笑った。これは参った。ちゃんと最後にループしているし、しかも始めの男性の話し相手が登場していて、これは二重ループになっているようだ。喫茶店の外まで飛び火したらと思うとチョット恐い。おっと、考えてみると全部回ってしまうと、誰もいなかった事になるじゃないか。そういう意味も含んだタイトルだったのか。凄いです。

Entry.20『潮風の彼方に』夢追い人さん
おしい。ラストのせりふが、普通過ぎる。とこれは私の勝手な意見だが、ヨウコにソックリな人がいて、彼女が他の男と付合っていると思ったばかりなのに、何でもなかったように、「ただいま。待たせたね」は似合わないと思ったからだ。「聞きたかった彼女の言葉に私は涙を拭った」くらいのラストにして欲しかった。それまでの、きっと彼は東京から戻ってはこないのだろうなぁと思わせる展開の意外性と感動的な締めだからこそ残念な気がする。

Entry.21『十字街、鮫退治』土筆さん
切り取られた映画のシーンのようで、ストーリーとしては完結しているとは言い難いけれども、面白い。男同士の友情のような刑事との共同作業も男っぽさが出ている。大水とか洪水とかいう設定では許されないような地球規模の大異変が舞台だから、いくら初期の段階とはいえ、本当は人間達も荒廃しているような雰囲気が出ていると、もっと面白くなったような気がする。

Entry.22『新しい車』佐藤yuupopicさん
ビョークっていえば、あのミュージカル映画良かったなぁ。って全然関係ない(笑)作者とはちょっと会っただけだけど、なんだかここに登場する彼女は、作者の投影みたいな感じで可愛い。詩を書く人らしい描写も小説として読んでいると違った雰囲気が出て面白い。こういうタイプの揺れ動く女性の心理というのは、なんだか男としても理解し易すくって、共感が持てる。そういう意味では男性読者の心を掴む手管を心得ているんだろう。やっぱりこの人の実力は計り知れないものがあるようだ(笑)

Entry.23『遠い道』中川きよみさん
こういうちょっとした幸せを感じるいつもの生活の一こまっていう感じの作品って良いんですが、私には書けないから羨ましく思います。そしてこういう作品って結構このバトルでは良いセンまでいくんだよなぁ。でも結構みんな目がこえてきてるから、つまらないところでダメだしをしたりするんです。で書けないヒガミから言ってしまう私のダメだしは、ラストで「幸せが在る」という言葉。ここでいう幸せは、作品として読者に感じて欲しい事なのだから、言葉にしないで、描写にして欲しかった。「娘と私の笑顔があった」なんて感じでも十分に通じます。

Entry.24『裸の王様』ハンマーパーティーさん
「はだかの王様」はアンデルセンだったか? 王様が実は性同一性障害者だったという設定は面白い。で最近思うのだが、こういったアイデア勝負の作品というのは余程のインパクトがないと支持されない。面白いなぁ。と言われてそれで終わってしまう。私の作品もそういう傾向にあるのだが…。で、私はどうやってそれを解決しようとしているのかといえば、2転も3転も話しを転がして、思いもかけないような結末に持っていくように心がけていることだ。そして出きれば、そこに男の悲哀とかを漂わせようとしている。まぁそんな事をしても支持率は上がらないのだが…。

Entry.25『白いふわふわ』スナ2号さん
読んでいて自分の子どもの事に置き換えてしまっていて、涙が出そうになってしまった。日本映画が斜陽だといわれていた時にも、動物と子供の映画はヒットするという伝説があったが、やっぱり子供が事故にあうとか、死んでしまうという話しは読んでいて哀しい。だが、ラストで主人公が気づかれないように涙を拭うシーンだが、気づかれないように考慮するほどの年齢だとは思えないので「ごめんネ。ごねんネ」と心配させた事を誤りながら、涙を見せた方が私には堪える。

Entry.26『シャイニング・スター』カピバラさん
本来は火星だからプラネットなんだけど、日本では空に見える星っていうもんねぇ。で今回の作品はただ火星の時事ネタを採用しただけの作品のように感じてしまった。読んでいて作者が何をいいたいのかわからないからだ。もちろん私の読解力のせいかも知れないから、誤った意見かも知れない。もちろん私の作品のように何をいいたいのか解らないのだってある。でもそこには笑いやら、イヤラシさやら、何か訴えるものが欲しい。仲の良いヨーコの事を好きだっていう事ならば、そういう展開にすべきではないだろうか。なんだか今回は辛口になってしまった。

Entry.27『緑色の目がじっと俺を見つめる。』アナトー・シキソさん
一話だけ読んだのでは何がなんだかわからない作家であるが、このわからなさが、快感になってくる。そして解らなくてもこの雰囲気だけは楽しめるから不思議だ。何故靴なのか。何故猫なのか。契約とはどんなものなのか。老人と男とは何者なのか。解らないことだらけの話しであるし、それが却って幻想的でもある。しかしこの作家の作品には、いつもながら感想が書けない。悲しい。

Entry.28『白黒ガーゼ』るるるぶ☆どっぐちゃんさん
壊れたラジオは同じ曲の旋律を何度も流している。そして男なのに口紅をひいている。病気だと思う男は医者に注射してもらうし、なんの注射なのかも不明だ(そんな医者がいるか!)注射ではなくて、花が病気を癒すと理解する主人公とそうかと納得する医者。そして白と黒との花びらを持つ花(そんな花は世の中には無い)で、これって…。やっぱりこれも何だか解らない。もう勘弁してくれ! で、訳の判らないアナトーさんの作品(笑)と比べると、何がわからないのかというと、舞台設定というかイメージがなかなか浮かんでこない。だから余計に解り難いのだろう。とこんな所で、勘弁して下さい。

Entry.29『嵐が森U』棗樹さん
先月からの完全な続編だが、やはり1000字なのだから今回の作品だけからの感想としよう(笑)何らかの影響で汚染された地上を離れ、地下で植物を育てている博士と主人公。その植物も食用という感じではないから、主に研究機関としての場所なのだろう。ラストで辞令を渡される主人公だが、汚染された地上に行くという展開になっているが、話として完結していないので何ともいえない。汚染された地上が生活出来るかどうかも不明な状態だし、それでも「おめでとう」と言われるくらいなのだから、地下よりは良い所なのだろうか? 面白そうな作品なのだから、3000字でも6000字でも何でも良いと思われるので、一挙に読んで見たい。

Entry.30『八月の夕陽』さとう啓介さん
さとさんの作風はどんどん確立されてきて、読んでいても安心していられる。私の方向性と比べると芸術家と芸人の違いのようにも感じる(笑)で、こういう作品を提示されてしまうと、もうめちゃくちゃに貶してしまいたくなるのだが、なんとか穴を見つけてみよう。子供の頃に親に捨てられ、しかも肌は黒く日本人には見えないのだろう。どんなに苛められたか想像も出来ないが、苦しい日々が続いたのは間違いないはずだ。そんな彼でも日本人としての習慣が身に染み付いているようだ。捨てた母親をどんなに恨んだかは知れないが、もう心の中では許している。そんなストーリーが心を掴む。ラストで登場する母親は、たぶん主人公の幻想で、母親が日本に戻ってくるなんていう事はないのだろうし、主人公も何か踏ん切りをつけるために、やってきているようだ。オミクジで「吉」だと、待ち人だって来るだろうし、失せ物だって見つかるだろうが、捨てていった母親とは逢えないのかも知れない。でもこれからの人生は少しは明るいはずだ。ってどこに穴があるんだ? 初めの焼けた肌ではなく、黒い肌という箇所から、登場する人物が日本人ではないのだと予想がつくし、神社にも通いなれているという感じがするので、日本に住むハーフとかクォーターなどと言われる人なんだろうなぁと判ります。それが「僕は日本人なんだ」という文章から、主人公の悲しさが十分に汲み取れました。ただ(……遥か遠い昔に言ってもらいたかったよ)という文章は個人的には好きになれない。遥かというのはもちろん時間的なイメージもあるが、どうも距離の事を強くイメージしてしまった。それは多分この前で、遠い異国の話しに触れているから、遠いところからの声というイメージが残っていてそう感じるのかもしれない。結局貶すところなんか見つからないじゃないか(笑)

Entry.31『児童虐待』ごんぱちさん
展開が普通なので、どんなオチか期待してしまった分、ちょっと残念。しかし夏休みの宿題とは恐れ入った。しかし職員が呟く「嫌な時代ね」とは一体どんな気持ちからなのだろうか? 
@親が宿題を手伝わないなんて非常識だわ。
A教師が今まで気づかなかったなんて職務怠慢よ。
B今の時代でも宿題を出すなんて、勉強なんか塾ですりゃいいのに、教育体制がなってないわ。
三択でこんな回答ばかりだったらどうしよう(笑)
しかし、宿題をやって来ない理由が親が手伝わないからだと断言する教師も情けない。宿題なんて出来なければ出来ないで、考えたけど判りませんでしたで済んだ(笑)し、親が手伝うなんていう人がいるとは考えもしなかった。そういう時代だった私の小学生時代が懐かしい。

Entry.32『食えない話』lapis.さん
「彼岸花」というよりは「曼珠沙華」という呼び名の方が私は好きだ。根っこを磨り潰して、よく水にさらせば、でんぷんだから砂糖醤油で煮て食べても本当に旨いかも知れない。しかしビールのつまみにするのなら、ピリッと辛い味付けの方が良いだろう。とはいえ試してみたいとは思わない(笑)しかし調べてみたら、昔は彼岸花から食用のでんぷんを取り出す会社があったようだ。食えるかどうかという話を、人を食ったような態度の食えない男とするという設定は面白いのだが、なんとなくそれだけという感じがしてしまった。

Entry.33『うさばらし』浅田壱奈さん
夫のうさばらしって、女装して遊ぶところでしょうか? 奥さんのへそくりもくすねて外で遊ぶという、この夫婦の軍配は男性側の勝利でしょう。しかし初めの方で旦那の髪の毛を抜いて憂さを晴らすという奥さんの陰湿な行動を知らぬ(本当に知らないのか?)旦那の可哀想な運命も、旦那の行動が想像される後半になると、楽しくなってきた。