新世紀 [小説本来のおもしろさをもった小説つまりジャンル不問部門] 感想

この部門は発表も早かったんですが、実は始めの作品で挫折してしまって、進みませんでした。よく読んでみれば、そういう事なのかとわかりますし(本当?)おもしろいんですが、始めの作品は私には難しかったです。そういうわけもあってこの部門は遅くなってしまいました。まぁ、きっとこの部門の人達は私の感想は無視してくれると思っておりますので、相変わらず勝手な事を書いてしまいます。

○Entry.01『海神(ウンジャミ)』龍果さん
まるで、浦島太郎の所にやって来た乙姫の様な話。ニライカナイの伝説などの一部とも思える話に引きこまれた。が素人の私には読めない字も多く、設定が昔の、しかも南の島だからだろうが、理解出来ない個所も多い。文章からは雰囲気も伝わってくるし、老婆との二人暮らしの中での青年の思いも理解出来るが、やっぱり素人である私にはわかりにくかった。

○Entry.02『関脇・阿波ノ花』ツチダさん
相撲の桝席などは、コネがないと取れないらしいが、実は私にはコネがあったりする。でも一度も見にいったことがない。私はあまり相撲が好きではないからだ。これは野球も同じ。スポーツをするのは好きだが、観るのは好きではない。これは多分、私がスポーツを競技として見ていないからだと思う。主人公もそんな私と似ているのかも知れない。知っていて当たり前と思われている人が、又そう自負している人が、知らないという人にあった時に起こす反応と、何故知らないんだというジレンマとが、面白い。例えば誰でも知っているはずの総理大臣が、無視されたら、やっぱり気持ちのいいもんじゃないだろう。森の石松の「千石船」みたいなもんだ。もっともあれは最後に、思い出してけなされるというオチがあった。そういう意味ではこの作品には、すれ違いの可笑しさが続くだけで、ちょっと物足りなく感じた。

○Entry.03『夏祭り』伊勢湊さん
夏休みに起きた、少年の淡い恋が、精一杯に少女への思い遣りとなって溢れていて、心地良い。来年就職という時期から考えると、自然が随分残った田舎で羨ましい。私が子供の頃は夏祭りとはいっても、今の様に夜に花火なんかは上げなかった。櫓の周りで盆踊りを踊った位である。もちろん、太鼓も笛もテープなんかじゃなくて、人が演奏していた。近くに神社はなくて、小さな祠があって、確か竜神様だったと思うが、山の中の祭りだった。考えてみるとめちゃくちゃ田舎だ(笑)子供の頃の思い出と、ひょっとしたら逢えるかも知れないという小さな期待からだけではないだろうが、もう社会に出てしまうという気持ちの整理の為か、とにかく昔の自分を発見したくなるという気持ちは誰にでもあるものだろう。そういう郷愁が如実に伝わってくる。こういうのって好きです。