『無念無想』
○我身軽羽。
 久しぶりに、鉄ゲタを脱ぎギブスも外す。
○気駆総身。
 軽くシャドーで素振り。フゥーン。時間を超えた時のコゲた匂いがした。これなら
大丈夫。手首も柔らかい。
○負気皆無。
 最後の仕上げも終わった。惨めな負け方はしない。
○勝利邁進。
 一年に一度だけの勝負。相手も充分な策を練ってきたのか?いやいや、どうせ楽勝だと思って何も考えているはずがない。去年の俺のことすら、そのへんの奴等の一人ぐらいにしか思っていないだろう。だが、たとえ奴がどうであろうと、今年は俺が勝つ。いやでも覚える。
○策略不騙。
 俺は神社の裏手から、月明かりに照らされながら去年と同じ場所へと進んだ。奴はやはり待っていた。俺は奴に輝きを少し吸い込ませた。俺の味を覚えていたようだ。
「また来たな。少しは上達したか?」
○無念無想。
 俺は道具を受け取ると目をつぶった。
○勝負無心。
 手が動いたと見る間にピチピチ跳ねる山をひょいっとすくい上げていた。端っこには惑星も掛かっている。おわんに入れるまでが勝負。慌てずにおわんに放り込む。(取った)
「腕をあげたな」
○一歩勝道
 俺は思わず頬をゆるませた。だが勝負は始まったばかりだ。気を引き締める。