2012年10月

第2965号 2012年10月31日号


伝統こけしの「菊」模様
 高岩寺住職 来馬明規


 東北復興支援の動きとともに「伝統こけし」が再評価され、若者たちも「カワイイ!」と注目しているようだ。女性美や地域文化を極限まで変形・簡略・省略して一片の木地にこめた造形は、まるでパブロ・ピカソの絵のようにも見えてくる。

 不思議なことに「伝統こけし」の胴を飾る模様は圧倒的に「菊」が多い。筆者は山形県に暮らしていたこともあり、東北地方で受け継がれている「伝統こけし」はありふれた存在として、型や模様まで気に留めていなかった。しかし、「伝統こけし」十一系統のうち、宮城県の遠刈田(とおがった)・鳴子・作並系、岩手の南部系、山形の蔵王・肘折系では、「菊」を胴模様に用いたこけしが目立っている。写真で示すように、写実的なものから抽象的なものまで、多様性豊かな菊の模様が名人から弟子達に伝承され、それぞれの系統の特色を構成している。

 菊模様が多い理由はよくわかっていないが、こけし工人(職人)の出自が、山林を自由にわたり歩き、木々の伐採加工を許された木地師(きじし)達であり、木地師が十六弁の菊花紋であったことと関係がある、とする説もあるようだ。

 昨年秋、高岩寺はこけし愛好家だった女性医師のご家族より、医院の診療室で患者達を見守ってきた「伝統こけし」のコレクションを譲り受けた。当初は、専門家でない我々が数多くの貴重なこけし達をお預かりすることに躊躇した。しかしこれもご仏縁、すこしでも東北復興のお手伝いになればと、伝統こけし愛好家に指導を仰ぎ、にわかに勉強を始めた。そして新しい信徒会館を彩り、来訪者をお迎えする絶好の役者たちとして系統別に常設展示することとした。お蔭様にて今年七月には青森県黒石市から「こけし灯籠」を取り寄せ、著名な工人を招聘してこけし製作実演会を開催するはこびとなった。ロクロの木くずが飛ぶ中で産声をあげるこけし達を、参拝の皆様から地元の皆様まで多くの方が歓迎し、東北各地に思いを馳せてくださったことは大変ありがたかった。

 さて、今年の菊祭りに合わせ、十一月十日より十四日(午前十時~午後四時)まで、高岩寺信徒会館にて「第二回・伝統こけし製作実演」を予定している。菊花共々、巣鴨生まれのカワイイこけし達もご覧いただければ、と願っている。

 【写真説明】=菊模様のこけしたち(左より・写真協力東京こけし友の会)=宮城県鳴子温泉・大沼秀顯工人 「車菊・白胴」(第51回全国こけし祭り最高賞受賞作同型)、宮城県遠刈田温泉・佐藤一夫工人「菊模様」切れ長の眼が特徴、山形県銀山温泉・伊豆徹工人「おしんこけし」NHK連続テレビ小説で有名


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