2007年2月

第2709号 2007年2月14日号


未来への改革を本格化
 平成19年度の重点政策 第1回豊島区議会定例会


 平成19年度第1回豊島区議会定例会、いわゆる予算議会が2月9日に開会された。会期は3月16日までの36日間。初日、招集に立った高野之夫区長は「豊島区は今、ようやく長いトンネルから抜け出ることが出来ました。財源不足の対応に追われ続ける状況を克服し、やっと将来に目を向けることが出来るようになった。今こそ、『文化と品格を誇れる価値あるまち』を目指し、『未来をひらくための改革』を本格化すべき時。来る19年度は『未来への改革を本格化させ、地域経営の確かな信頼を築く年』と位置づけ、区政を進めていく」と所信を表した。ここでは所信表明の中から19年度の重点政策について紹介する。(要旨)

 (1)保健福祉、健康

 まず、高齢者対策としては、高齢者虐待への対応を強化いたします。専門家からなる対策会議を設置し、迅速な対応を図るとともに、医療的な措置も可能な避難場所を確保いたします。

 また、高齢者からの困りごとを気軽に相談できる「おとしよりホッと相談」を設置するとともに、電球の交換や箪笥の移動など、ひとり暮らし高齢者等のちょっとした困りごとを援助する事業をスタートいたします。

 このほか、高齢者の見守り活動を行う高齢者クラブへの助成や、シルバー人材センターへの補助拡充など、地域の力と協働した自立支援策を進めます。

 障害者の自立支援については、就労の場の確保に取り組みます。新年度は、これまでの公園清掃委託を、現在の4か所から22か所に拡大するとともに、授産施設の活性化に向け、区内施設の相互交流を深め、魅力ある生産品の共同開発や包装紙の統一、共同販売等に取り組んでまいります。

 地域密着型サービスの基盤整備については、今年度、民間事業者を誘致した、夜間対応型訪問介護サービスが2月からスタートするとともに、認知症高齢者グループホームと小規模多機能型介護施設を合わせて3か所、来年度中に整備できる見通しです。

 また、旧第八出張所跡地では、知的障害者グループホーム及び高齢者のディサービス事業所等が、4月にオープンする予定です。来年度についても、さらに積極的に民間事業者の誘致を図り、福祉基盤の整備を進めてまいります。

 わが国の疾病構造が大きく変化するなかで、生活習慣病やメタボリック・シンドローム対策は、医療費の適正化のみならず、健康寿命延伸の視点からも重要な課題であります。来年度の健康政策では、まず、区民の健全な食生活をとりもどすことを第一に考え、「食育推進プラン」の策定に着手するとともに、“食の安全”に関する普及啓発に取り組みます。

 昨年度スタートした「としま健康づくり大学」については、受講者を50名から90名に増やすとともに、区民ひろばなど、地域のなかで卒業生の皆さまにご活躍いただける場を設定してまいります。
 また、平日準夜の小児救急診療と調剤業務を行う施設を新たに確保するため、医師会や医療機関との協議を進めるとともに、母子保健と子育て支援の両面からの対策として、妊産婦健康診査の助成を拡充いたします。

 (2)子ども・子育て

 来年度は、まず、「子どもの医療費助成」の助成対象と内容を大きく拡充いたします。これまでの入院に加え、4月からは通院の助成を小学校6年生まで広げ、さらに10月以降は、入院・通院ともに中学校3年生まで対象を拡大いたします。これにより、本区の助成水準は、23区のなかでもほぼトップレベルとなります。

 今年度から始めた「育児支援家庭訪問事業」についても、出産日から1年以内としていた訪問対象を2年以内に広げるなど、子育ての経済的、精神的負担の軽減を図り、より効果的な支援策を進めてまいります。

 また、虐待やいじめ等の問題に迅速に対応するため、東部子ども家庭支援センターにおける相談体制を充実するとともに、児童相談所や警察等との連携による虐待防止ネットワークをさらに強化することで、子どもの権利侵害全般に対する専門的な相談機能を向上させます。

 「子どもスキップ」につきましては、平成18年度の10小学校区に、駒込、池袋第三の2校を加え、12校で展開いたします。残る小学校区についても、今後、早期の実施が可能となるよう、区立小中学校の改築を含めた公共施設再構築を検討するなかで、必要となるスペースを確保するよう努力してまいります。

 「地域子ども教室」との連携を図った豊島区独自の取り組みは、全国から注目されており、昨年に続き、今年に入ってからも、全国各地から視察が相次いでいるところであります。

 そして、「子どもスキップ」の展開に合わせ、中高生等の居場所、活動・交流の場として、区内2箇所に「中高生センター」を整備いたします。平成19年度については、東池袋児童館の一部を転用し、「ジャンプ東池袋」を開設するとともに、平成20年度には、西部地区の施設を整備いたします。

 区立保育所の民営化につきましては、昨年4月から、南池袋保育園を同援さくら保育園として民営化し、駒込第三保育園の委託化を実施いたしました。

 移行に当たりましては、保護者の皆さまに十分ご説明し、ご理解をいただきながら慎重に進めてまいりました。現在では、保護者の皆さまから保育内容について、満足しているとのご評価もいただいております。

 今年4月には、新たに雑司が谷保育園の委託化を行います。また、今後も、平成20年度に1園、21年度に3園の民営化等を計画しておりますが、これまでに増して、保護者の皆さまの安心に気を配り、ご理解をいたたきながら取り組んでまいります。

 また、来年度からは、これまで総務部で担当していた、私立幼稚園に関する事務を子ども家庭部に移し、子育て支援に関するワンストップサービスを拡充したところであります。

 (3)学校教育

 現在、小学校3年生以上で実施している英語活動を小学校全学年に拡大するとともに、1年生から6年生まで総計110時間、外国語指導助手を派遣いたします。指導にあたっては、中学校英語との接続性を考慮した、区独自のカリキュラムを用い、実践的なコミュニケーション力を育成いたします。

 また、プロポーザル制度による「特色ある学校づくり」をさらに拡充するとともに、補充学習が必要な中学1、2年生の希望者を対象として、進級に向けた不安を解消するための土曜補習「としまアカデミー」を開設いたします。

 昨年の自殺予告の手紙を契機とする“いじめ問題”への対応については、早期発見、早期対応を一層推進するため、日常的に学校を巡回し、相談を行う「いじめ対策相談員」を新設するとともに、引き続き「電話相談」を午後7時まで開設いたします。

 本格実施となる特別支援教育については、小学校2校でのモデル実施の成果を踏まえ、医師による巡回相談や施設整備を行うとともに、千早小学校に情緒障害通級指導学級を新設いたします。

 また、「子どもスキップ」を実施する小学校12校を対象として、放課後や週末に、学習や遊び、スポーツ・文化活動の場を提供する「放課後子ども教室」を、展開いたします。

 老朽化が進む区立学校の改築問題についても、財源を含め、非常に大きな課題であります。来年度は、西池袋中学校の改築を含めまして、今後10年間における全体の改築計画について、さらに検討を進めてまいります。

 (4)防災対策、治安・危機管理

 まず、防災対策ですが、来年度は、地域防災計画の抜本的な見直しに着手いたします。首都直下地震の発生の逼迫性が指摘されるなか、昨年、東京都による被害想定が公表されました。それによれば、マグニチュード6.9の直下地震が起きた場合、本区では、建物の全壊500棟以上、死者30人、負傷者1,777人の被害発生が想定されています。

 「未来戦略」では、人口増加に伴い、今後、日本で一番人口密度の高い都市となることを想定し、高密でも安心快適なまちづくりを目標として掲げています。「住みたいまち」となるためにも、災害に対する安全確保は重要課題であります。

 今年で12年目を迎える阪神・淡路大震災、そして、その後各地で発生した地震災害等による教訓を踏まえ、高密都市にふさわしい防災計画のあり方を検討してまいります。

 また、高齢者や障害者など、いわゆる「災害要援護者」対策にも取り組みます。

 昨年度は、福祉部門の個人情報を防災課で集約する「共有方式名簿」を作成し、先進的な事例として、全国的に注目を集めたところですが、今後はさらに、平時から地域防災組織や消防署等と情報共有ができる「手挙げ方式名簿」の作成や、要援護者一人ひとりに対応した「避難支援プラン」の作成に向けた検討を進めます。

 さらに、老朽化が進んでいる戸別受信機の更新を2年計画で進めてまいります。新型受信機は、無線情報の着信性能が非常に高く、また、文字情報にも対応しているため、更新により、情報連絡態勢は一段と充実するものと考えております。

 治安対策につきましては、これまでの安全安心パトロールを、午後9時まで3時間延長するとともに、小中学校や保育園、ひったくり発生地点のような要所において、新たに「立哨(りっしょう)警備」を実施いたします。

 パトロールのように、移動しながら警戒にあたるだけではなく、一定時間その場に留まり、行き交う人々と会話を交わすことで、パトロールの効果を一層高めるとともに、安心感の向上、そして防犯意識の向上に努めてまいります。

 なお、現在、区内4か所の交番の見直しに伴う代替措置として、「地域安全センター」の設置が警視庁において検討されています。立哨警備の実施にあたっては、このセンターとの連携を含め、警察と十分な情報交換を図りながら、展開してまいります。

 (5)環境、清掃・リサイクル

 環境政策における、来年度の最重要課題は、新たな資源回収事業の構築であり、平成20年度からの廃プラスチック・サーマルリサイクルへの移行に備え、モデル事業を展開いたします。

 これまでの8品目12分別という先進的な資源回収システムを充実し、現行週1回となっている資源回収日を週2回に倍増し、同時に収集内容も不燃系資源、可燃系資源と分かりやすくすることで、ごみの増加抑制と資源回収の増加が見込めると考えています。なお、モデル事業は、7月から区内3%の地域で、10月からは10%の地域で順次実施し、平成20年10月からは、区内全域で本格実施に移行する計画であります。

 このほか、平成19年度の新規事業として、家庭用高効率エネルギー機器の導入支援や、エコライフ情報誌の発行に取り組むとともに、レジ袋の削減とマイバック利用の促進、使い捨て容器の利用抑制など、さらなるごみ減量や、環境配慮行動の浸透を目指して事業を展開いたします。

 環境美化事業については、「としま喫煙マナー」、「ごみゼロデー運動」などを実施し、歩行喫煙率の低下を実現するなど、一定の成果を挙げてきました。

 今後は、都市整備事業などとの連携をさらに深めるとともに、「としま喫煙マナー推進事業」を大幅に拡充して展開することにより、特に、池袋駅周辺における路上分煙を徹底し、美しく品格ある環境づくりを進めます。

 緑化推進につきましては、新たに「みどりの基金」を設置し、原資を1億円積み立てるとともに、癌研跡地の上池袋一丁目防災公園や高田小学校跡地の近隣公園の整備を進めます。

 また、ヒートアイランド対策も視野に入れながら、公園、施設、そして街路樹などのみどりを、ネットワークとして効果的につなぎ合わせる取り組みを進めてまいります。

 (6)市再生

 去る、1月30日に、20年もの歳月を要した、東池袋四丁目第一地区の再開発事業が竣工いたしました。

 この再開発をはじめ、池袋副都心を取り巻く主要な都市計画道路の完成が視野に入ってきており、私が目指す副都心再生の骨格がようやくイメージできるようになってきました。新宿・渋谷方面に延伸される地下鉄13号線の名称も「副都心線」に決まり、平成20年6月の開業まで、あと1年4か月であります。

 新年度は、ユニバーサルデザインに基づく池袋駅の改良や東西連絡機能の向上、人にやさしい、ゆったりとした駅前空間づくりに向け、国の都市再生交通拠点整備事業を活用して、総合的な調査、検討に着手いたします。また、環状5の1号線や環状6号線、補助172、173号線、そして補助81号線の整備を踏まえ、副都心全体の「都市交通ビジョン」を策定いたします。さらに、西口駅前広場の改修についても、平成21年度の完成に向け、実施設計を行います。

 また、風格ある商業・オフィス街の形成に向け、池袋副都心の商業業務エリア全体に地区計画を広げるとともに、東池袋四丁目第二地区の再開発事業や、南池袋二丁目地区の街区再編街づくりを進めます。新庁舎整備や現本庁舎の跡地活用についても、本格的な調査・検討を実施いたします。

 そして、「住みたいまち」としての評価を高め、区内各地域の活性化を図っていくためには、その玄関口ともなる鉄道駅を中心とした街づくりに取り組むことが重要であります。

 これまでも東長崎駅や大塚駅の整備を積極的に進めてまいりましたが、その結果、東長崎駅については、平成19年度中に主要部分が完了する見込みとなりました。

 大塚駅については、平成21年度の完了を目指して順調に工事が進んでおり、南口地下に計画する駐輪場も、平成23年度の開設に向け、来年度は設計に入ります。

 椎名町駅についても、早期の事業化に向け調査・検討に着手いたします。

 また、まちづくりの基本は“道づくり”であり、街並み景観を含めた、心地よい道路空間の整備は、まちの“品格”をかたちづくる重要な要素であると考えています。

 平成19年度は、帝京平成大学の進出に合わせ、「学園通り」の整備に着工するとともに、目白ブランドの一環として、“学習院椿の坂”の電柱地中化や“ライトの小径”のカラー舗装化に向けた調査・設計を行います。また、区道のバリアフリー化を進めるとともに、放置自転車のない道とするため、自転車駐車場についても計画的に整備を進めてまいります。

 (7)文化、商工

 今年は、新たな文化政策のシンボルとして、豊島区初の“創造発信型”文化施設として、舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」がオープンいたします。300人規模としては、都内有数の奥行きのある広い舞台を持つ施設であり、一流のアーティストのニーズに応える最新鋭の舞台照明、音響設備を備えております。

 新中央図書館とともに、文化芸術の創造と情報発信の拠点と位置づけ、政策相互間の横断的な連携を深めながら、また、広く芸術文化団体や大学、企業等との協働を進めながら文化政策を展開してまいります。

 なお、新中央図書館の開設に伴い、地域図書館6館についても、祝日開館を実施するとともに、地域に根ざした図書資料の収集・展示機能の向上に努めてまいります。

 また、現在、「熊谷守一美術館」を豊島区初の区立美術館とすべく、協議を進めております。“池袋モンパルナス”を代表する画家、熊谷守一氏の作品を、豊島区が誇る文化資産として継承していくため、熊谷氏の作品153点の寄贈を受け、今年12月を目途に区立美術館としてスタートする予定であります。

 3月15日から開催される「新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館」も今年で2回目を迎えます。今回は、“池袋モンパルナス”の名付け親である小熊秀雄の作品展示も加わり、さらに魅力的なイベントとなります。

 そして、文化を担う人材の育成にも力を入れて取り組みます。新たに「文化ボランティア育成事業」や「子どものための文化体験プログラム」等を実施し、地域の文化活動のリーダーとなる人材やサポーターの養成に取り組みます。

 文化によるまちづくりについては、引き続き、目白と駒込において、地域ブランド創出支援事業を実施するとともに、都市型観光ブランド事業として、地場産業である伝統工芸の工房を中心とした観光ルートを整備し、マップの作成や案内板の設置を行います。

 さらに、産業振興の新たな試みとして、「としま ものづくりメッセ」を開催いたします。これは、区内製造業の技術力を内外にアピールし、新たなビジネスチャンスを広げることを目的とした、いわば「産業見本市」であります。

 このほか、巣鴨・大塚地区のTMO構想の実現に向け、巣鴨駅前商店街におけるアーケードのソーラーパネル化等を助成するとともに、門前町として全国に名を馳せる巣鴨地蔵通り商店街のさらなる活性化に向け、観光資源の活用手法やインフラ整備に関する調査研究を支援いたします。

 また、信用保証制度の変更に対応した制度融資の拡充や、事業再生特別融資の創設など、中小企業に対する制度融資の充実に取り組みます。

 スポーツ施策につきましては、将来の体育施設全体のあり方を明確にしつつ、豊島体育館の改修や、長崎中学校跡地における西部スポーツセンターの事業手法の検討に着手いたします。

 現在、国や東京都では、平成25年の東京国体、平成28年の東京オリンピック開催を目指し、競技力の向上をスポーツ施策の重要テーマとして位置づけ、ジュニア層の育成に力を入れております。本区におきましても、豊島区体育協会と連携を図りながら、ジュニア育成事業に積極的に取り組んでまいります。


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