2012年1月

第2926号 2012年1月1日号


「喫煙所」は「公害発生所」
 高岩寺住職・医師 来馬 明規


セーフ・コミュニティは例外なき屋内禁煙の実現から

 豊島区は昨年5月30日から「路上喫煙及びポイ捨て防止に関する条例」を施行した。罰則はないが区内全域が路上禁煙で携帯灰皿も使用禁止。大変ありがたい反面、「屋内」に関しては世界保健機関(WHO)や厚労省が求めている「原則全面禁煙」が進まず、優先すべき「屋内」受動喫煙防止がおろそかになっている。自験例をふたつ挙げてみよう。

 区内大塚のホテルでは時に全域でタバコ臭が感じられる。ほぼ全フロアに喫煙スペースが設定され、ホテル側の監視が行き届かぬ所でも喫煙が可能で、吸い殻の不始末による火災リスクも高い。従業員にも受動喫煙が発生し、労働衛生上も問題だ。筆者がこの旨をホテル管理者、所轄警察・消防とその関連団体に伝えたが、一部の喫煙スペースが移動されただけで、抜本的対策はとられていない。筆者は受動喫煙回避のためにこのホテルの利用を控えており、同ホテルで開催される会合には、不本意であるが欠席を続けている。

 昨年6月にレストラン街が新装オープンした池袋東口のデパートでは、禁煙席が大幅に増えて健全な空間が確保されたが、レストラン街中央にある大きな喫煙室からタバコ煙が漏れ、隣接するトイレの利用者、廊下で順番待ちをする利用客に「毒ガス」を浴びせている。筆者は、分煙は不可能であることを百貨店担当者に説明し、日本橋三越など屋内全面禁煙の先例にならい喫煙室閉鎖の検討を求めたが、当初は無視され、結局喫煙室閉鎖の不可が伝えられた。

 「分煙」は科学的に不可能であり、ホテル・レストラン、公共機関などの全面禁煙は、本来タバコ規制枠組み条約(FCTC)に批准した国のレベルにおいて、罰則付きかつ全国規模で、例外なく平等に実施されるべき課題である。豊島区が取得しようとしているWHOの国際基準「セーフ・コミュニティ」の定義には受動喫煙防止が含まれていない。「喫煙所」という名の「公害発生所」がないことは、先進的都市として当たり前のことだからだろう。「喫煙所の存在を容認する行政的発想」が「セーフ」であるわけがなく、豊島区が現状のままセーフ・コミュニティの仲間入りを果たすのは恥ずかしい。

 来年からヨーロッパのサッカー大会「UEFA ユーロ2012」が会場全面禁煙、かつ一切のタバコ販売・広告が禁止となるなか、本邦で開催されたバレーボール・ワールドカップは支援するタバコ会社のマークであふれていた。昨年12月1日、米国ワシントンタイムズ紙は「FCTCを守らず、タバコ会社がスポーツを支援するような日本ではオリンピックは開けない」とする意見を紹介し、2020年のオリンピック開催を目指す我が国を痛烈にこき下ろした。

 豊島区はこのような日本の現状を超えて「セーフ・コミュニティ」という高い国際基準へむけて舵をきっているが、官・民問わず喫煙所を放置すれば、区の文化・健康・スポーツの国際的事業は物笑いの的にされ、観光業界も痛烈な打撃を受けることにならないかと心配だ。

 豊島区はがん対策として健診重視を表明しているが、禁煙推進はなされていない。「喫煙者は禁煙しない限り、健診をうけても健康寿命が伸びない」ことが明らかになっており、現状では十分な成果は期待できない。そのようななか、昨年長野県佐久市が「世界最高健康都市基本構想」を打ち出した。禁煙推進が明記されたすばらしい構想に対し、早速タバコ会社が注文をつけている。このような「タバコ産業が反対するような健康政策」こそ、成果が期待される良策である。豊島区も喫煙率低下目標を明確にしたがん対策を粛々と実行してほしい。

 写真は豊島区役所の明治通り側玄関である。一階喫煙所の換気扇から出たタバコ煙が隣接した「身障者用駐車場」を汚染し、長年のヤニが天井にこびりついて黒くなっている。区役所を訪問する身障者への受動喫煙被害放置は、現在の豊島区の実状を象徴しているように思われ、誠に残念である。


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