2013年1月

第2972号 2013年1月1日号


タバコ、豊島区の矛盾
 高岩寺住職・医師 来馬 明規


 昨年、豊島区とJT(日本たばこ産業)が、池袋駅の東西両側に喫煙所の建設を画策した。いずれも計画は中止されたが、区が国際条約のタバコ規制枠組条約(FCTC)に背いて、タバコ産業の行政介入を歓迎していることが浮き彫りになった。

 区の喫煙所建設計画にはJTの後押しがあった。東口側は駅前ロータリーに候補地を設け、図面を用意(本紙八月八日号に既報)。区が地元に根回しを始めたが、反対の声に自然消滅。

 西口側はJTが三千万円を提供し、「身障者にもやさしい」と銘打った喫煙所を池袋西口公園につくるという、はなはだ噴飯物の計画だった。一部に「地域がキレイになって良い」という声もあったが、地元から「豊島区が喫煙所を作るなら今後一切協力しない」とまで言い放たれ頓挫した。

 池袋の皆様の良識に深い感銘をうけると同時に、全世界に向かってセーフコミュニティ認証取得を宣言したはずの豊島区が、反健康・反WHO(世界保健機関)のタバコ産業と仲良く事業を進めようとするのはおかしい。区民、WHO、FCTC、そしてセーフコミュニティの先輩達を愚弄する行為ではないのか。

 「分煙」というスローガンは「受動喫煙は危険でなく単なる迷惑」とうそぶくJTが喧伝するが、WHOが十分な根拠に基づいて全否定する、「無意味な受動喫煙対策」。喫煙所建設とは「喫煙願望を我慢できないニコチン依存症患者が集う毒ガス発生装置」、つまり壊れた原発のような危険地帯を新たにつくるということだ。 タバコ煙は安全基準が設定できないほどの有毒ガスで、いわゆる「分煙」では解決にならない。喫煙所から有毒ガスが無処理で放出され、 罪のない子供・妊婦・病人はもとより、安心安全を求る区民が有毒ガスに被曝するからだ。

 喫煙所建設の目的はタバコ産業の巨大な利益を確保すること。しかし、タバコ消費が豊島区にもたらすのは病気・早死・火事・貧困・低教育。ニコチンを売るタバコ産業と安全・健康を推進する行政は、元来「利益相反関係」にあるのだ。

 従ってFCTC第五条3項「タバコ産業との提携を拒絶」第十三条2項「タバコ販売促進・後援の禁止」を守り、タバコ産業を一切の行政活動の中にいれてはならない。そしてただちにセーフコミュニティの課題にタバコ対策を含めるべきだ。

 せまいせまい豊島区。人口密度は日本一で、区民一人あたりの公園面積は23区中最下位だ。豊島区は「おかしな街」「ややっこしくてあぶない」(地域批評シリーズ・橋本東堂編・二〇〇八年)という批判があったが、行政官がセーフコミュニティのバッジをつけて喫煙所の図面を引くのでは、くやしいが「言い得て妙」という他はない。


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