2015年1月

第3060号 2015年1月1日号


「煙草は危草」
 とげぬき地蔵尊高岩寺
 住職・医師 来馬明規


 「消滅可能性都市」と名指しされ、危険ドラッグ使用者が池袋駅前で暴走運転の末に殺傷事故。

 昨年はWHO認証セーフ・コミュニティを標榜する豊島区に、不名誉なニュースが相次いだ。しかし筆者の視点からは「タバコに寛容な豊島区」が招いた必然的な結果、と受けとめている。

 タバコも広義の危険ドラッグである。専門家は「入門薬物(ゲートウェイ・ドラッグ)」と呼ぶ。触法薬物依存の多くが喫煙者で、ニコチンを出発点にして、さまざまな薬物に手を出すからだ。

 覚醒剤や危険ドラッグの摂取法はタバコと同じ。急速に普及している「電子タバコ」も触法薬物の簡便な摂取手段になり得ることが懸念されている。

 池袋駅前には区立の喫煙所が用意されている。これは区の中心に依存性薬物の「公認補給所」があるということだ。未成年の眼にも触れ、入場も可能だ。

 規制から漏れた危険ドラッグをタバコに混ぜて区立の喫煙所で吸っても、ハタ目には単なる喫煙行為で、事実上違法ではない。喫煙所は薬物依存を肯定し、危険ドラッグを呼び込む下地をつくるということに他ならない。

 区の情報公開資料によれば、池袋北・東・西口に相次いで設置された喫煙所には、JTからおよそ7千万円超もの資金が提供されているようだ。

 タバコ産業の行政介入は、WHOが主導したタバコ規制枠組み条約(FCTC)五条3項で禁止されているが、区はWHOとFCTCを無視し続けている。

 「環境美化」にすり替えられた「タバコ消費維持・反禁煙推進」の橋頭堡が区立喫煙所である。区民はタバコをやめたくても、ここでずるずると喫煙してしまい、前を通る子供にはタバコの肯定が刷り込まれる。危険ドラッグが静かに忍び寄る。

 筆者は日本禁煙学会とともに本紙面等で喫煙所設置反対を訴え、WHOにも告発した。

 外圧にも期待している。ぜひ「toshima safe community」でインターネット検索して欲しい。筆者が昨年6月に英字新聞『ジャパン・タイムズ』に投稿した記事『区長様!喫煙所を取り壊して豊島区を真のセーフ・コミュニティにしてください』が最上位でヒットする。

 区民を守るため、「がん対策推進計画(平成23年)」に盛り込まれたタバコ対策は予定より展開が遅い。新庁舎ビル「としまエコミューゼタウン」には医療モールも予定されているのに、テナントに入るレストラン、私有スペースなど、区が制御できない領域で喫煙可能な施設が予定されているようだ。

 また、今年以降、大塚や駒込駅前でも池袋のような喫煙所の設置が計画されている。タバコ利権関係者が地元で「ご説明」に余念がないようだ。

 受動喫煙防止は屋内禁煙が基本。屋外喫煙所は過渡的措置として必要かもしれないが、タバコ産業に作ってもらうのは違法であり、過密な豊島に適当な場所はない。

 タバコ規制は本来国の仕事であり、地方自治体のやることではない。先進国ではFCTC、WHOの指針に従った罰則付き屋内全面禁煙が常識。日本は北朝鮮やインドネシアよりはましかもしれないが、西欧・タイ・オーストラリアははるか先で、中国・韓国・ロシアよりも遅れているのが現実である。

 我が国ではタバコ産業と癒着した政権・官僚が規制法の立法化をサボタージュし、その始末が都や区に押しつけられている。

 東京都では、オリンピック・パラリンピックをきっかけとした受動喫煙防止推進条例の策定が検討され、筆者も都の公開検討会を傍聴し注目しているが、タバコ産業の息がかかった委員らが露骨に横槍をいれ、その雲行きはあやしい。

 今春に選ばれる新区長と新区議らは、「タバコが危険ドラッグと同根の依存性薬物」という認識をもてるだろうか。新庁舎への移転を目前に控え、まずは区職員(昨年度喫煙率11.9%)や、区議の自覚と卒煙が求められる。

 筆者の一年の計は、あらためて「タバコという『とげ』を抜く」ことであり、WHOが示す道と同じである。

 煙草(タバコ)は票田でも財源でも嗜好品でもない。豊島区の消滅を促進する「危草(キケンドラッグ)」なのだ。


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