紫雲荘から単行本デビュー プロジェクト2期生の梶川さん
著名なマンガ家が若き時代を過ごしたトキワ荘。そのマンガ家の一人、赤塚不二夫がトキワ荘だけでは手狭になり、仕事部屋として借りた隣のアパートが紫雲荘(豊島区南長崎3丁目)。今も現存するこのアパートを活用して、マンガ家をめざす若者を街ぐるみで応援する「紫雲荘・活用プロジェクト」が平成23年より展開されている。
現在、紫雲荘では2期生二人が創作活動に取り組んでいるが、この度、その内の一人、梶川 岳さん(25歳)がWEBコミック作品『真亜ちゃんは今日も家にいたい』(ゼノンコミックス・徳間書店)で、10月20日、初の単行本デビューを果たした。
梶川さんは名古屋市出身。高校生の時には、マンガストーリーを書く原作者(作家)をめざして、出版社のコンテストに応募し努力賞を受賞。その際に「若いのだから絵も描いたら」とアドバイスを受け、作画も行うようになった。大学を卒業後、訪問介護員として仕事をしていたが、マンガ家をめざし一念発起。プロジェクトに応募し、平成26年に紫雲荘に入居した。入居後、マンガを描き続けられないかもしれないと思ったこともあったが、恵まれた環境、同じ志をもった新たな友人たち、マンガ漬けの生活を通し、この2年間で「趣味」だったマンガが「仕事」になった。
今回の作品は、主人公の真亜ちゃんは家にいたいタイプ、しかし彼氏は外に出かけたいタイプで、真亜ちゃんが彼氏に連れられ、ゲテモノ料理を食べに行くなど、いろいろな経験をしていく様子を描いたコメディ。梶川さんは「実は、自分は主人公の真亜ちゃんと同じ出不精。ゲテモノ料理は隣人に誘われ、自分が実際に体験したもの。そこからヒントを得て作品が生まれた。作品を読んだ方が実際に外に出て、同じような体験してもらえたらうれしい」と笑顔ながらも、「初の単行本だけど、売れなければ、第2巻は発売されない。継続して連載を続けていくのは大変厳しい世界」と話す。さらに「今後も単行本が発売され、そして作品のアニメ化、ドラマ化につながっていくことが目標」と夢は続く。
紫雲荘・活用プロジェクトは、トキワ荘のあった街の地域文化の継承と発信に取り組む、区と地域の協働事業の一つ。月額家賃4万円のうち、二分の一の2万円が最長3年間、補助される。紫雲荘2期生の梶川さんは、来春、紫雲荘を旅立つ。
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