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≪参考≫INFOEの北米地区「教育フェア」の様子です。(写真をクリックしてみてください)



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≪参考≫中学校・高校での講演会の様子です。



≪参考≫ 東京大学大学院教育学研究科紀要 55, 51-60, 2015

上海日本人学校高等部におけるトランスナショナルな進路選択 : アジアの国際化と日本の大学入試が生徒に及ぼす影響
 The Japanese Students' Transnational Mobility and Education with the Social Background : From The Japanese Public High School Overseas in Shanghai to University in Japan』 (井田 頼子, 2015)

 本稿の目的は、在外教育施設である日本人学校のうち、後期中等教育段階の学校として国から認可された上海日本人学校高等部での現地調査をもとに、生徒のトランスナショナルな進路選択の実情を明らかにすることにある。
 近年、アジア圏の国々では、政治状況の変動と経済成長により、日系企業の進出の増加と企業の多様化が進んでいる。かつては大手企業の参入が主流であったが、現在は中小企業をはじめ、個々人が事業を立ち上げる例も少なくない
(外務省領事局政策課, 2014)。それとともに、アジア圏での日本人学校の児童生徒数も増加傾向にある。
 上海の日本人学校は、全世界で設置されている日本人学校
(義務教育段階)のなかでも ここ数年1、2位を争うほどの生徒数である(外務省領事局政策課, 2014)。しかし、滞在期間の長期化等により 義務教育段階の修了後、現地での進路が学校運営の課題となって浮かび上がった。例えば 中学部まで日本人学校に通った生徒が、高校進学を検討したとき、中国語を教授言語とした「現地校」、上海の現地校のうち、英語を主な教授言語とした「国際学校」、海外の教育機関が運営する「インターナショナルスクール」に通うか、子どもだけが帰国して日本の高校に通う、という選択肢しかなかった、もしくは そのように理解されていたのである。こうした背景から設立された学校が、上海日本人学校高等部であった。
 この学校を説明するにあたり、まず、「在外教育施設」について整理しておく必要があるだろう。在外教育施設とは、学校教育法
(昭和22年法律第26号)のもと、海外に在留する日本人の子どものために、海外に設置された教育施設である。「在外教育施設」は さらに、@日本人学校、A補習授業校、B私立在外教育施設、の三種類に分類されているが、特に @とAに関しては、学校の主たる目的として、日本国内の教育に準じた教育を実施することが求められている。義務教育段階では、国から教科書の無償配布、教員派遣、施設費用の補助が行なわれている。
 在外教育施設のうち、「高等部」を見てみると、これまで、B私立在外教育施設では、すでに高等部が設置されているが、日本人学校の高等部として分類されたのは、2011年4月に開校した上海日本人学校の高等部が初めてである。言い換えれば、上海日本人学校の高等部は、義務教育段階ではなく後期中等教育段階において、@日本人学校 として初めて公的に認可された学校である。
 以上をふまえたうえで、@日本人学校のうち、上海日本人学校高等部の実状について、特に高等部から大学への進路選択に着目し、日本の教育体制や社会的事象とむすびつけて考察することとする。


≪参考≫ 大阪大学大学院人間科学研究科

中国外籍人員子女学校制度に見る上海日本人学校の現状と課題―中国と日本の法規定に焦点を当てて―
劉 宛月; LIU WANYUE, 2024)

  中国における日本人学校は、日本にとっては "在外教育施設" であり、中国にとっては "外籍人員子女校" でもある。 その「2つの側面」を持つ中国の日本人学校は、法規定の側面で分析されていない。 本研究の目的は、中国の外籍人員子女学校に関わる法規定と 日本の日本人学校に関する法規定との比較によって、それらの間に存在する "齟齬" を明らかにし、上海日本人学校の事例においては その "齟齬" をどのように調和しているかについて検討する。(注:"齟齬":同じ物事に対する、中国と日本との法規定の違いを指す)

  中国の外籍人員子女学校の教育に関わる法規は、「限定から開放」「公的から民間的」「中央から地方へ」の変容が見られた。 日本人学校は、日本では "公立学校の性格を持つ 海外での私立学校" であり、中国では「民弁学校、外籍人員子女学校、大使館人員子女学校」の法的な位置付けを与えられている。 日本人学校と外籍人員子女学校とは、"子どもの国籍"、"教育段階と年齢" に対する規定に "齟齬" があることが明らかになった。
  インタビューの分析からは、上海日本人学校が抱える課題を考察した。 インタビュー対象者8名の回答により、上海日本人学校は 中国側の法規定や制度政策から強い影響を受けたことを確認することができた。 同じ上海市においても、各行政区の政策によって 子どもの入学が難しくなることも明らかになった。
  また、上海日本人学校を含む 中国国内の日本人学校は、外籍人員子女学校と在外教育施設という「2つの側面」があるので、中国と日本の両方の法規定に従う必要があり、それらの法規定に挟まれて、本国にある公立・私立学校よりも努力をしなければいけないことがうかがえる。 上海日本人学校の高等部を設置時は、日本側の法律では(当初)、無理と判断された。そのため、中国の側は、法律的に禁じる理由はないが、(日本の法律で無理ならば)中国の「面子」を守る意味で 高等部の設置は(難しいと判断するという)問題となった。(幸い高等部の設置に至る調整はできたものの、) 両国の法規定を遵守すると同時に、どのように学校をうまく運営し、教育の質を向上させるかが、(日本人学校の)1つの課題となっている。
  さらに、中国現地の対日感情からの影響を受けやすいことが、上海日本人学校にとって問題になっている。特に政治事件による反日風潮、現地住民の反日感情などは、学校の経営、学校に通う子どもおよび保護者に影響をもたらしたことがうかがえた。所在国の治安問題(戦争、テロ事件など)から受けた影響と異なり、日本人学校は治安が良い中国において、外交問題による現地住民の対日感情の変化によって、教育活動の実施が難しくなり、休校までになったこともある。それらのことに対して、今後は、韓国の日本人学校との比較などによって、上海日本人学校がその影響をどのように減少することが可能なのか、今後の検討課題となっている。
  なお、日本国籍の子どもしか受け入れない日本人学校が大多数であり、日本国籍ではない子どもに日本人学校の教育をした経験者は少ない。上海日本人学校は それらの日本国籍ではない子どもの入学希望に どのように対応するのかも、課題の1つだと考えられる。




※ 学術研究者のための上海高等部アーカイブは こちら*協力大学会議 * (2010年度の資料ですので、取り扱いには ご注意ください) 

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