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☆ 
父親との会話は

小山
(コーディネーター)
 ありがとう。この第4分科会のテーマというのは非常に地味で、まさかこんなにお集まりいただけるとは、正直思っていなかったのです。でも一番じくじくじくとくる部分なのかなということが、この皆さんの人数を見ている間に伝わってきました。今井君がいま言いましたが、何か不安になってしまっているのですね。子供のことを知りたいとか、子供の様子をもう少し理解したいとか、友達関係はどうなっているのだろうか、もっと知りたい、知りたいということがあるのだと思うのです。でもそれは裏を返せば、子供が見えていないということの焦りもあるのではないかと思うのです。山口さんどうでしょう、そこら辺りお父さんとして。
娘との話、お母さんは100、私は60

山口
(パネリスト)
 親が子供の心配をするのも当たり前ですよね。だって自分の子供なのだからかわいくてしょうがないわけです。いろいろなことも知りたいですが、お母さんというのは結構、特にうちの場合は娘ですから、お母さんと娘などというのは友達ではないですが、なんでも話すわけです。でもお母さんほどにお父さんに対してはそんなにしゃべらない。うちはそれでも結構しゃべるほうなのです。
 それでもお母さんに対するしゃべり方、しゃべる内容と、お母さんには100言ったことでもお父さんには50とか60ぐらいのことしか言っていないかも知れない。その残った50、60はお母さんから聞くわけです。直接聞きたいのだけれど、父親というのは女の子に対して聞きづらい面もあったりするのです。変なことを言って嫌われちゃったらどうしようかなとか、嫌われることはないにしても会話の糸口のようなものが、お父さんというのは何か女の子に対しては、ひょっとして男の子に対してもそうなのかも知れませんよ。
 高校生ぐらいの男の子というのは結構無口だったりするから、そういう意味ではお父さんはまた話しづらいのかも知れない。もっと知りたいのだけれど、自分もちょうど高校生ぐらいに戻って、好きな女の子にはなかなか話しかけられないような、そんな部分もあるのです。本当はもっといろいろと知りたいのです。
小山
(コーディネーター)
 では逆から見たらどうですか。林さん、なぜ教えてあげないの?
うちは、90対2


(パネリスト)
 うちの父は家庭を顧りみないというか、子育ては母だけです。先ほど山口さんは母に100言ったら父に60とおっしゃいましたが、うちは母に100......。でも母に100も言っていない。母に90だったら父は2です。
山口
(パネリスト)
 うわっ、2?
小山
(コーディネーター)
 でもなぜそうなる? 何がそうなるのだろう。


(パネリスト)
 話がかみ合わないのです。うちの母は関西人で、うちの父は堅い関東人なのです。そうすると「なんでやねん」などと母親に突っ込んでいると、母親は返してくれるのですが、父はまじめだから「バカにするな」などと言って怒り始めてしまう。(笑)話さないほうが逆にいいのではないかなというような。
山口
(パネリスト)
 そうかといって、あまり「なんでやねん」というお父さんもどう?

(パネリスト)
 そうするとうちは兄弟がいないので3人なのですが......。
山口
(パネリスト)
 漫才みたいになる。

(パネリスト)
 たぶん漫才になって大爆発するので、それはそれでいいんじゃないかな。(笑)
山口
(パネリスト)
 でもそれはお母さんと林さんが「なんでやねん」と会話をしているのを、お父さんが「いや、ここ一本おれが締めておかなければいけない」とか、お父さんは乗らないんだね。
お父さんと手をつないで池袋の街を歩く
小山
(コーディネーター)
 ちょっと待ってください。司会は私ですからね。(笑)
山口
(パネリスト)
 つい癖がでてしまうもんで、すみません。習性なのです。
小山
(コーディネーター)
 関戸さんはよく池袋のまちをお父さんと手をつないで歩いていますよね。
関戸
(パネリスト)
 歩いていますよ。
小山
(コーディネーター)
 すごいと思うのです。うらやましいけれど。
関戸
(パネリスト)
 そうかな。でも結構うちは当たり前に、いまでも手をつないで歩きます。
小山
(コーディネーター)
 何が違うのだろう。

関戸
(パネリスト)
 たぶんうちのお父さんは、小さいころから私に好かれようと一所懸命頑張っていた。(笑)それが子供の側から見て取れるぐらい頑張っていた。「ああ、嫌われたくないんだな」とわかるぐらい頑張っていた。
親父との会話難しい
小山
(コーディネーター)
 李君はどうですか。家が自営業ですよね。そうすると、しょっちゅうお父さん、お母さんが目の前にいるわけでしょう。

(パネリスト)
 そうですね。
小山
(コーディネーター)
 話さないですか。


(パネリスト)
 残念ながら父とはあまり話さないです。うちの父は韓国の済州島というところで教育を受けたのですが、韓国というのは儒教の国で親が一番という、親が死ねと言えば子も死ねというぐらい厳しいので、常に目線が高いのです。うちの母は逆に目線を合わせてくれるというか、かといって甘やかし続けるということではなくて、けじめをちゃんとつけて接してくれるので、どうしても母と多く話してしまいます。最近は少し野球ネタとかで父としゃべるのですが、家に帰ってプロ野球ニュースを楽しみにしているのに、きょう中日が負けた、勝ったとか、気になることを言われ、プチンと切れることがあるのです。
小山
(コーディネーター)
 先に言われてね。

(パネリスト)
 先に言われるのですよね。
小山
(コーディネーター)
 ビデオで楽しみたいのね。

(パネリスト)
 「黙っていて。そのあとでしゃべるから」という感じなのです。そういうことがあります。
小山
(コーディネーター)
 今井君どうですか。先ほど少し「もう高校生のことはわかんねえや」などとポロッと言ってしまって。そんなことを言ったら本当に十数年後、しっぺ返しをされるからね。
今井
(パネリスト)
 そうですね。
小山
(コーディネーター)
 どうですか。親は知りたいと思っているのに、うまく伝えられないというか、言えないというのは何なのだろう。
今井
(パネリスト)
 そうですね......。
小山
(コーディネーター)
 いまは落ち着いているけれど、相当ケンカもしたんじゃないの?
今井
(パネリスト)
 やはりしましたね。父親とはほとんど話しませんでしたし、母親とはやはり口頭での、口ゲンカが多かったです。
小山
(コーディネーター)
 親父とはケンカにならない?

今井
(パネリスト)
 うちの父親というのは先ほど少し話したのですが、結構かんしゃく持ちで、すぐに手が出るのです。大酒飲みで、よくだらしない姿を見ます。ヘビースモーカーで非常に煙たい。存在自体も煙たいという、全然いいところがないなと子供のころ、ぼくの目からは見えてしまったのです。絶対こういう大人にはなりたくないということで、ぼくは工業高校を卒業していて、周りは不良だらけだったのですが、1回もタバコは口にしたことがないのです。それは父親がヘビースモーカーで嫌だったからというのもあります。
小山
(コーディネーター)
 お酒は?

今井
(パネリスト)
 お酒は大好きです。(笑)あれはやはりおいしいので飲んでしまうのです。そうやって父親は反面教師ということで、ほとんど口を聞かなかった。また母親とも女性というか、全然お互い理解し合えるというか、納得のいくお話というのはあまりしなかった。すぐに向こうが感情的になってしまうというので、あまり話......。
小山
(コーディネーター)
 感情的になってしまうというのが一つあるのね。
今井
(パネリスト)
 そうですね。お話にならないというのが、まずありますよね。
小山
(コーディネーター)
 でも君のことを知りたいとは思っているというのはなかったのかな。

今井
(パネリスト)
 あったにはあったと思いますが、それが非常にわざとらしいというか。小学校ぐらいの話になってしまうのですが、友達感覚でしゃべってくる時期があったのです。いまでいうタメ口ですか。
小山
(コーディネーター)
 タメ口。

今井
(パネリスト)
 あまり記憶に残っていないのですが、本当に友達感覚で接してくる。うちはぼくが長男なのですが、ほかのぼくの付き合っている友達などが次男、三男が多くて、お母さんが若かった。そういうお母さんとつきあっているうちに、私もこうしなければいけないのかなと周りに影響されて、ぼくと友達感覚で話す、若ぶって話すという癖がついていたのかも知れません。それが見え透いていて非常に嫌だなという思いがありました。
小山
(コーディネーター)
 むずがゆいような感じで。
今井
(パネリスト)
 ええ、そうですね。
お母さんが「こういう夫婦になってはいけない」
小山
(コーディネーター)
 でも林さん、お父さんは本当に話ししたいだろうと思うのだけれどね。

(パネリスト)
 どうなんですかね。
小山
(コーディネーター)
 殴ったりはしないのでしょう。


(パネリスト)
 しませんね。だからたぶん無関心なのです。言っちゃいけないかな......。母との関係がよくなさそうな感じで、(笑)こういう夫婦にはなってはいけないぞというやつで......。小学校時代によく覚えているのが、民法というのを社会か何かでやるのです。やりません?
関戸
(パネリスト)
 ああ、小学校6年生とかで。

(パネリスト)
 そう、そう。そうすると夫婦の条件、「夫婦は互いに敬愛し合い」と書いてあって、びっくりしました。(笑)
関戸
(パネリスト)
 びっくりしたんだ。


(パネリスト)
 「えーっ、夫婦って無関心じゃないの」と先生に言ったら、「何言ってるんだ」とすごく怒られて、「ああ、そうか」なんてびっくりしたぐらいなのです。
小山
(コーディネーター)
 でも「どうしてるの」などと根掘り葉掘り聞かれることはないですか。

(パネリスト)
 父はもう聞いてきません。酔っていると......。
小山
(コーディネーター)
 酔わないと聞けないんじゃないの?
昔の話をくどくどと


(パネリスト)
 そうですね。だから酔っていると、私はいま浪人しているから「おまえ勉強しているか」とか「おれがな、浪人したころはな、つまりだな」などと言って、ずっと「つまりだな、そのな......」と「つまり」が5回ぐらい出てきてしまって、要点がまとめられていない。しらふのときに「この間、お父さんはこんなこと言ってたじゃん」と一応振ると、「そんなこと言ったっけ」と言われてしまって、「えっ?」という。
小山
(コーディネーター)
 あ、そう。では李君に逆を聞こう。お父さんが聞きたがっているなというサインというのはないですか。

(パネリスト)
 サインですか。
小山
(コーディネーター)
 何かきょうは座らせて話がしたいというような。


(パネリスト)
 うちは店が終わってから夜食というか、寝酒というか取るのです。そのときに、自分は店にいないで大体家に帰っていることが多いので、帰って来て一緒に食べないかとか、飲まないかというようには言われるのですが......。
小山
(コーディネーター)
 もう飲めるの?

(パネリスト)
 大丈夫です。
小山
(コーディネーター)
 でも高校時代の話だよね。


(パネリスト)
 ちょっと......。(笑)そこで母と3人でいる間は、テレビを見ながら黙々と食べたり飲んだりしているのですが、母が先に寝てしまうと、ややピンチというか......。(笑)父がいろいろと昔話というか、武勇伝というか、もう5回ぐらい聞いたよという話を聞かされる。何を聞き出そうとしているのかわからないのですが、何をいま考えているのかなということを聞きたそうな感じはします。
父親に聞きたいこともある

(パネリスト)
 でも逆に私たちから言わせると「お父さん、何聞きたいんだよ」と聞いてしまいたくなる。


(パネリスト)
 自分からあえて自分の周りの話はしたくないというか。なんなんだろう、父親には照れがあるのかな、どうなんだろう。母親には昔から話している習慣があるのであれなのですが、父にはあまり知られたくない。

(パネリスト)
 あと話題がわからない。
小山
(コーディネーター)
 知られたくない?


(パネリスト)
 知られたくない。でもたぶん父のことも働いている姿などを見ていますが、やはり見えてこない時期がある。時期というか時代というのですか、この年どうしていたのというのがあるので、お互いに手のうちを明かさず状態なのですかね。わからない......。
小山
(コーディネーター)
 それはあるよね。

(パネリスト)
 これからなのですかね。
小山
(コーディネーター)
 隠しているなと感じているときがあるのでしょう。

(パネリスト)
 あります。それか、母がいるので言えないことがあるのかもしれないですが。
小山
(コーディネーター)
 そういうときには寝てしまったときを狙って、逆に聞いてしまうとかはしない?


(パネリスト)
 えっ、ぼくが聞くのですか? 話が長いのですよね。(笑)次の日、朝が早いのですが、3時半とか4時までになってしまったり、ずっとしゃべっているのです。でも2人になってしまうと、かわいそうだから聞いてあげないといけないのかなといって、付き合ってしまうのです。そうすると朝、母に話すと「早く寝ちゃえばよかったのに」と一言、言われるから。(笑)

(パネリスト)
 言われる、言われる。
山口
(パネリスト)
 それもつらいな、お父さん。
小山
(コーディネーター)
 それはつらいな。

(パネリスト)
 そうできたらそうしたよと言いたいのですが。

(パネリスト)
 私もそう言われて、それから「そうか寝ればよかったんだ」と思って、無視するようになりました。
うちは友達と同じような会話を
小山
(コーディネーター)
 関戸さんは随分不満そうに聞いているから、お宅の場合は?
関戸
(パネリスト)
 うちは聞きたいこととかは、あるんだろうなと思う前に聞いてくる。
小山
(コーディネーター)
 お父さんが?
関戸
(パネリスト)
 お父さんが。きょうどうだったの、きょうはどこに行ってたのとか。
小山
(コーディネーター)
 そんなにいちいち聞かないでよとは思わないわけ?

関戸
(パネリスト)
 でも気になるのは当然だし、私もお父さんが何しているのか気になって「お父さんきょうどうだったの?」と聞く。だからきょう電車の中であったおかしな人の話をしたり、友達とするような会話とかもするし、人生相談のような話もする。
小山
(コーディネーター)
 うらやましいね。それは後半でじっくりコツをいろいろと教えてほしいです。
関戸
(パネリスト)
 コツを伝授。(笑)
小山
(コーディネーター)
 でも根掘り葉掘り聞くということに、私も学校の現場にいるものですから、お父さんとうまくいっていないなと思っている子に聞いていると、やはり聞かれたくないという子が多いです。詮索しないでほしい。それから今もう少し待ってくれれば解決したあとに話をしてあげるのだけれど、する前にグチャグチャ言われてしまうというのに、すごく抵抗があるというのはよく聞きます。それと先ほど李君が言いましたが、隠しているなという。子供も本当のことを言ってほしいと思っていて隠されていると、こちらもある程度取っておかなければいけないという部分があったりというのもあるのではないかなと思います。でも親の本音としては聞きたいというのは相当あるので、なんとかもう少し......。
山口
(パネリスト)
 聞きたいのだけれど、ついつい聞きたいほうが先に立ってしまって、刑事の取り調べのようになってしまって......。
小山
(コーディネーター)
 だからそれが詮索になってしまうわけです。

山口
(パネリスト)
 どうなんだ、それはどうなんだ、どうなんだと。言おうと思ってもそういうふうに聞かれると、言いたくなくなることはあるかもしれないね。聞き方にも問題が......。お父さんは表現力が少し下手ですよね。自分の気持ちの表し方が下手なお父さんが多いのではないかな。

(パネリスト)
 嫌だという気持ちを出すのは、うちの父はうまいと思うのです。うれしいとか楽しいという気持ちを出してくれれば、たぶんいいのではないかなと時々思います。
小山
(コーディネーター)
 でもいろいろな性格の人がいますからね。

(パネリスト)
 そうですね。うちの父親は堅いほうだとは思うのですが......。
山口
(パネリスト)
 関戸さんのお父さん以外はみんな明治、大正生まれのお父さんのような、堅い感じなのね。

(パネリスト)
 というか、うちのお父さんの家は堅いのです。うちのお母さんの家はもともと京都の人で関西人なので......。
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小山和智プロフィール
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