子女教育ニュース |
担当: 国際教育相談員 小山 和智 facebook note |
海外人事や教育関係の実務担当者の皆様に配信しているニュースの一部を、 一般の皆様にも公開します。 教育相談などについては 「教育相談から」を。 |
2024年 7月、6月、5月、1月〜4月、2023年 9月〜12月、5月〜8月、1月〜4月、2022年 9月〜12月、5月〜8月。 |
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ページトップ、 海外支援センター ※ ニュースのオリジナル版は、日本人学校・補習授業校にも お送りしています。【2024-8】 ◎ 集中豪雨の季節です。 集中豪雨のニュースを聴くたびに、香港の 「紅雲(Red Rainstorm)」「黒雲(Black R.)」の警報を思い出します。 始業時間前に 「紅雲」(50mm/時の降雨予報)が発令されたら 学校は休み、「黒雲」(70mm/時の降雨予報)だと職場も休み… つまり、学校なら教職員も出勤しなくて好いのです。 台風の接近(こちらは「Signal 8」と呼ぶ)でしたら理解できるのですが、単なる豪雨予測で休校となるとは驚きです。 当然、日本の学校が説明会等のイベントを予定していても、「紅雲」の警報が出たら 泣く泣く中止せざるを得ません。 しかし、学校や勤務先が休みになるような困難を乗り越えて、イベント会場にやって来る勇敢な家族もあるのです。 タクシーもバスも止まってしまうのに、「日本から先生が説明に来てくれるのは、貴重な機会」と思ってくださる…… こちらも「一人でもいらしてくださる方があれば…」と無理もします。 くるぶしまで水に浸かりながら(革靴は台無し!)何とか会場に辿り着くと、感動の対面が待ってます (笑)。(決して お勧めはしませんが…) ◆ 香港では、多くの学校が 「紅雲/黒雲警報」に遭ってイベントを中止しています。 私は “晴れ男”と呼ばれるほど不思議に遭ってないのですけど、2008年だけは直撃されました(同行していたTさんが "雨男" だから (笑))。 それでも日本人クラブには、3家族が見えてました。 ◎ 空港の「CIQ」って? 空港の建物などで「CIQ」は、税関(Customs)・入出国管理(Immigration)・検疫(Quarantine)の合同事務所を指します。 いわば "港の3大関門" で、「Please come here...」と別室に促されたら、お説教や “検査” が待っています (笑)。 日本人は法律(その国の禁制品や数量制限)を知らずに持ち込む “幼稚さ"がある国民だと、各国で思われています。 若干の説教はされるものの、没収/課税の手続きが済めば、普通は 「以後、気を付けてください」で赦してもらえます。 「日本人は規則を守ろうとするし、処分には素直に応じる潔さもある」 と好意的に見られてきたのです。 ところが最近、税関職員に食ってかかったり、「中身は知らない」と開き直ったりする例も増えてきたそうです。 「P2P courier」というアプリを使った "お友達便" や "小遣い稼ぎ" に、安易に関わる例も少なくありません。 かつては 海外のホテル等の調査で「最も歓迎したい旅行者」のトップは、常に日本人でした。 理由は、部屋を汚さない、マナーが良い、礼儀正しい、謙虚…… それなのに、誤った「グローバルな生き方」の思い込みにより、次第に “信用” を落としつつあるのは残念です。 ◆ 私も出張の際に、親しい知人から「これを運んで」と頼まれたことが 何度かあります。 その人は知っていても 実際の受益者を知らないし、その中身が 本当は何なのかも不明ですから、言葉を尽くして断りました。 ◎ 広島・長崎の原爆忌も “80回忌” 原子爆弾廃絶を訴える声は世界中に拡散する一方で、肝心のわが国では冷めてます。 核兵器の保有や使用などを全面的に禁じる核兵器禁止条約(TPNW)に、日本政府は署名・批准をしていないのです。 同条約は2017年、国連加盟国122ヶ国が賛成して採択され、2021年1月に発効しました(50ヶ国以上が批准)。 頑なに参加を拒否する岸田首相は 「条約に参加していない核兵器国を具体的に動かすことに力を尽くしていく…」 と大嘘を並べるばかりです。 広島市民がなぜ彼に投票するのか、不思議でしかたありません。 9日も 「核保有国を巻き込み、核実験、核兵器の物質の禁止といった取り組みを前進させていくことが重要だ」と発言。 原子力発電所が出し続けている核廃棄物は 「核兵器の物質」そのものですが、原発の再稼働を推進しているのです。 原発の核廃棄物の処理技術を人類は 未だ発見していませんし、原発のための研究者・技術者を育てる学校はありません。 日本だけでなく 中国・韓国の沿岸部にも、核廃棄物が蓄積され続けていて、既に流出の危機に瀕しています。 ◆ 2014年、東京電力は 「福島県に高校生を呼び戻す知恵」を密かに募集してました。 私は 「原子力の技術者を養成する専修学校を創り 世界中から優秀な生徒を招へいすれば、高校生は戻ってきます」と提案しましたが、無視されました。(福島第一原発の廃炉も、真面目にやる気はないのです) ◎ 「昔の話」 と 「今の話」 「昔の帰国生教育の話をしてください」と頼まれた時、1970年代から話を始めると、皆さん キョトンとしています。 あれ? と思うと、「そんな大昔から話されても…… 2000年以降の昔の話を聞きたいんです」 等と言われます。(笑) それはそうですよね。 私たちだって 四半世紀以上前のことは 「歴史」と思って仕事をしていましたから。 コンピューターで検索すれば、いくらでも学術的な分析資料は読めるものの、それらは直接の参考にはならないのです。 それに気づいてからは 「2000年頃からですか? それとも 2005年以降ですか?」と聞き返すようにしています。 従来、苦笑い(orイライラ?)しながらも大人しく聞いてくれていた皆さんには お詫びします。 今やICT機器やネット環境の普及とともに新たな教育手法も登場し、サイバー犯罪も急増した時代なのです。 私たちは特殊な専門知識だけでなく、社会全体を把握しようとする 「よき市民」の素養で、子どもたちに接したいものです。 多田 孝志さん(金沢学院大学)と諏訪 哲郎さん(学習院大学)が 『対話 2050年の日本の学校教育』 を上梓されました。 <AIを使えば学習効果が高まるのではなく、協同学習を推進する教師の育成や 思考・対話スキルの習得の日常的な指導、相手を受容しながら建設的に意見を出し合える空間づくり等が大切……> まさに “学び” の原点を易しく解説されています。 ◆ 40年前、朝日新聞の筑紫 哲也さんが 「先日、某有名大学で講演したのです、『日本とアメリカが戦争をした時…』と話したら、 『どこの国と対戦したのですか?』と質問されました。 いま日本とアメリカはとても仲良くしているので、40年前の 『日本vsアメリカ』の構図は理解できないのです」と苦笑しておられました。 ◎ 日光食品から「翔海」に ここ数年 「翔海 <xiang2hai>」を よく耳にします(「上海<shang4hai>」とは声調=抑揚が異なる)。 中国の広東翔海集団(1998年設立)は 光電技術開発、再生資源、非鉄金属、不動産などを扱う総合企業グループです。 かつては、中国や東南アジアの食材は 「日光食品」という台湾系輸入業者が、国内需要のほとんどを賄っていました。 日本で流通するエスニック食材のほとんどに 「日光食品」の "正札" がついていて、値段も手ごろだったのです。 ところが今世紀に入り、小泉内閣の規制緩和で 並行輸入や個人持ち込みが増大、様々な品質のものが売られ始めます。 日光食品のある池袋駅北口辺りには アジア各国の食材・飲食店が集まり "在日外国人の買い出しの街" となりました。 しかし、「なんでもあり」の風潮は、日光食品の格式が否定され、衰退することを意味していました。 2022年夏、ついに日光食品の直営店は閉店し、権利を譲り受けた広東翔海集団が「翔海」を駅前に開店しています。 ◆ 習近平主席の「日本に1億人を送り込む用意がある」の発言から12年が経ちますが、中国からの "移住者" (日本に帰化する予定) は相当数に登っています。農漁村部の小中学校では深刻な悩みも聞かれるものの、若年人口を増やしてくれるのですから、わが国にとっては貴重な人達です。大事なのは共存体勢であって、紛争を煽ることではありません。 ◎ やっぱり日本国内産が好い? 中国に居ると、「たとえ日本メーカーの工場で生産されても、中国産も韓国産も品質が劣るんだよね」 「少し高くても、日本国内産のものが欲しい/持って来て」等と、現地の人たちからよく言われます。 農産物でも、日本から "密輸" された種苗による作物が、中国製/韓国製として栽培され、市場に溢れています。 それらは世界各国にも輸出され人気商品であるものの、それでも「日本産のものが、もっと美味しい」と言われます。 とかく 「日本人は細かいことに拘り過ぎ/オーバースペックだ」と揶揄<カラカ>われるのですが、品質管理は商品の命なのです。 「判らなければ儲けもの」という根性を嫌う日本人の倫理観が、偏差値偏重教育で損なわれてきているのは残念です。 よく例に引かれる 「韓国LGES製のリチウムイオン電池」ですけど、発火・炎上事故は十数年前から頻発しています。 それでも、日本メーカーなら怖くて出荷できないレベルの製品が、どんどん世界の市場に出回わっていくのです。 韓国政府が莫大な助成金を出しているので、「同社製品を使わないと競争力が出せない」と日本の経営者も考えます。 今年3月、鹿児島の太陽光発電所で爆発・炎上する事故がありましたが、「安ければ好い」だけでは済まないでしょうに…。 ◎ 8月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★ 教育AIサミット2024 ---8月2日(金)午前9時半〜、於:議員会館 国際会議室・多目的ホール、テーマ 『生成AIで変わる近未来の教育を体感せよ』。 ※ 教育現場での生成AI活用普及を通じて、教育の質向上を目指す(一社)教育AI活用協会の主催。 翌日(8/3)はオンライン配信のワークショップ 『生成AIで教員の働き方を変える』。 ★ 全海研 第51回全国研究大会--- 8月9日(金)・10日(土)、於:鳥取県米子市コンベンションセンター。 記念講演 『帰国教師は赴任経験をどのように活用しているか?』=芝野 淳一(中京大学 准教授)。 ※ コロナ禍を機に変わっていく教育現場とその可能性が焦点です。 [作品募集] 第1回EDUBAL エッセイコンテスト--- 小4〜高3対象、テーマ 「私が日本に学校を作るなら」。 ※ どんなユニークなアイデアが集まってくるか楽しみです。 募集受付:7/1〜8/31。 ★ 第57回 市民文化フォーラム 8・15集会--- 8月15日(木) 午後1時半〜、於;日本教育会館(東京都千代田区一ッ橋)。 テーマ 『民主主義の再起動:基地と原発のない国にするために』。 ※ 第二次安倍政権以降、民主主義の制度を破壊し機能停止に追い込む政治が続きました。 この破壊された民主主義を再び機能させるために、私たちは何をすべきでしょうか? ★ HLAB 2024 年次総会--- 8月23日(金) 午後6時〜8時、於:一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)。 ※ 14年目を迎えた HLAB 恒例のキャンプ実施報告&フォーラムです。 翌日、4年目を迎えた "下北カレッヂ" の内覧会も開催。 [研究成果公開] 慶應義塾大学外国語教育研究センター 『外国語の授業づくりの手引き(試行版)』 ※ 教員養成機関等との連携により専門人材育成・確保を図ろうとするものです(文科省委嘱事業)。 [作品募集] Panda杯 全日本青年作文コンクール2024--- 募集対象:16〜35歳の日本人、テーマ 『@Japan わたしと中国』。 ※ 中国外文局アジア太平洋広報センター、中国大使館、(公財)日本科学協会が、普段感じている中国に対する "思い" を募集しています。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ 5年前には JOESからも全海研からも無視され、調査・研究に協力してもらえなかった芝野 淳一さん(中京大学)ですが、やっと光が当たり始めています。 渋谷 真樹さん(日本赤十字看護大学)・瀬尾 悠希子さん(茨城大学)などとの共同研究も進んでいます。 ◆ 私たちの新媒体 「ぐるる」で、古家 淳さんのルポ 「川崎の多文化共生を探る」の連載が始まりました。 わが国において地域社会を挙げて 「多文化共生教育」に取り組んでいる事例といえば、まず川崎市ですね。 「へら鮒から始まって・・・」という感じでしょうか。 ◆ 6日(火)、札幌大学で 遠山 顕さん(NHKラジオ英会話講師)が講演されるとのこと。 齢を重ね、病を重ねても走り続けるケンさんのタフネスに刺激されつつ、自分自身の “幕引き”を考えている私です。 ◆ 2012年暮れの第二次安倍内閣以降、どういう政策がとられ、どんな法律が成立してきたのかを、冷静に考える必要があります。 「まず経済を立て直さなくては」という言葉に騙され “批判票” すら投じて来なかったのは、私たちの怠慢なのです。 知らない間に 「情けない国」にした反省を、今こそすべきです。 ◆ "嘘つき首相" が政権を投げ出すことになり "軍備増強大好き党" は総裁選の話題で一色です。 しかし、旧統一教会と創価学会の "基礎票" があるため議員落選の心配がなく、緊張感が全くありません。 ♪死んだ男の残したものは……(情けないです) ◆ 3月末に皇居前で転倒し、両手を痛めました。 一時は大きく腫れ上がって、親指でしかパソコンを打てなかったのですが、なんとか10指が使える状態に回復しました。 唯一、右手の中指はまだ腫れてる(折れてた?)のですけど、♪痛みは生きてる徴だ… と気長に治るのを待ってます。 ◆ 母を亡くして早1年が経ちます(享年99歳)。 原爆投下の3日後に広島に入ったので被爆者なのですが、「被爆者手帳」を頑として拒否する一方で、国防力の必要性を説いていました。 彼女の護ろうとした 「国家」とは何だったのか、いま呆然とせざるを得ません。 17日(土)が母の一周忌でしたが、歌手の高石 友也さん(大学の先輩)の訃報に心を持って行かれました(親不孝者!)。 『受験生ブルース』など10代の頃からずっと親しんできた歌の数々が思い出され、私の青春時代の大事な "構成要素" だったのだと感じます。 享年83歳、合掌。 ================================================================================================== |
【2024-7】 ◎ 7月は海外組が帰国/来日 7月は 海外で学んだ子どもたちが どんどん帰国/来日しますので、受け入れ校は対応に追われます。 感覚の違いからくる誤解や思い込み、あるいは 余計な不安を抱かれたりもするのですが、柔軟に対応したいものです。 誰もが自主的かつ主体的に努力を続けられる環境を整えることは、生涯学び続ける習慣を皆の財産としていく営みです。 また 対話は、理解や知識のバラツキを減らし、深い学びに向かわせます。 帰国生などの場合、触れて来なかった情報や体験も多く、その社会で暮らしていく上で戸惑うことも少なくありません。 「そんなことも知らなかったの?」「それは何度も言ったでしょう?」と言うのは簡単でも、本人を責めることはできません。 ◎ 肌身で解っていてほしいこと 子どもが 単に知っていればいいことと、本当に肌身で解っていてほしいこととの峻別は、周りの大人が教えるべきです。 とくに 「一人一人の人間の価値は同じ」「子どもは社会全体で育むもの」の2点は、社会づくりの基本です。 ここ十数年、わが国でもそれらを真っ向から否定するような事件が相次ぎ、破滅に向かう恐ろしさすら感じます。 近年は、他人をバカにし、平気で責任逃れの嘘をつく人が増えました。 政治家が社会に与えた影響は大きいのです。 子どもが 「あなたと私は ○○が違う。 だから、私には関係ない」 と平気で言える神経を放置してはいけません。 そこには “深い学び” などないし、まして 感謝も敬意もなくて、心からの幸福感も得られないのですから。 ◆ 最近よく 「非認知能力」が話題になりますけど、対人的なコミュニケーションや五感で感じ取った “体験”に基づいて簡潔な文章にまとめ上げる訓練が、“学び”の基礎となります。 また それにより、SNSに毒され 軽薄短小に堕した頭脳を 正常に働かせることができるのです。 ◎ 第90回グローバル化社会の教育研究会(EGS) の開催 話題提供してくださる大津 由紀雄先生は 日頃、日本型の複言語主義の開発を訴えられています。 日本の言語・文化土壌に適合した形にするためには、母語教育("国語" 教育)と外国語教育の一体化を図るべきだと。 今回のテーマは 『ことばの認知科学から見た、母語の重要性』。 具体的には; 「1. ことば(母語)基盤を成す」 「2. ことばはコミュニケーションの手段としては欠陥品である」 「3. 言語教育の目的は、1と2を学習者に自覚させる(メタ認知)ことにある」 「4. CEFRの基盤原理である複言語主義(1〜3 と有機的に関連)が日本の英語教育界での受容では抜け落ちている」 「5. 「おうち英語」の流行は危険極まりない」……。 専門的用語は あまり用いずに解説してくださるそうですから、ずっと疑問だったことなどを解明できるかもしれません。 そして それを素に、大いに話し合いたいと思います。 ◎ 怪談のシーズンですね なかでも 『四谷怪談』は定番です。 今の新宿区四谷二丁目の南側に 「戒行寺谷」(昔は伊賀者の駐屯地)があり、江戸幕府は多くの寺をここに移転させました(寺院は 格好の武闘訓練場なのです)。戒行寺谷(別名 "油揚坂")の西の丘は “お岩さん”の左門町…… 『四谷怪談』の舞台 「於岩稲荷」があります。 歌舞伎俳優だけでなく、「男の浮気封じに効く」として花柳界からの信仰も集めて賑わう “観光名所”でした。 ところが、「於岩稲荷」は1879年の火災で焼失し、歌舞伎界・花柳界の肝いりで 中央区新川に移転します。 「お参りに便利なように」という理由ですが、食事や遊興、土産物などで儲けていた四谷の商店会は 困り果てました。 昭和初期に 四谷で “お岩様縁<ゆかり>”の井戸や祠らしきものが “発見”され、商店会も応援して 陽運寺が創建されます。 また太平洋戦争後、於岩稲荷も再建されましたが、江戸時代の場所(現 左門町19番地南端の公園)とは異なります。 ◆ 井戸に関係する怪談といえば、『○○皿屋敷』の “お菊”ですよね。 全国各地に類似の話がありますけど、東京は 市谷駅の南の 「帯坂」が舞台(井戸水は四谷から来てました)。 「桐生稲荷(皿明神)」は 飯田橋駅の西口近く、日本歯科大学の東側にあります。 ◎ 「聴講」って何? 「聴講 <Ting1jang3>」は本来、指導者や専門家の話を聞いて学び、それに従うことを指す言葉です。 古くは高名な 「老師 <Lao3shi1>」の居る寺院を訪ね、講義・講話・卓話を聴かせてもらう(+実体験する)ことでした。 明治時代以降、近代的な学校制度が整備されていくと、「聴講」も一般的な言葉として普及します。 授業やセミナー等で(教授等の)話を聞くことで “新たな知識や情報を得る=自己啓発や学び”の意味になりました。 ところが他方で、「履修申請はしていないが、関心があるので授業だけ受ける」(つまみ食いする)ことの意味にも…… 単位取得が目的ではないため、定期試験は受験しません。 質問もしません。 だから、ともすると 「聞いているだけ」に堕していきます。 グローバル化社会の教育研究会(EGS)は、実務者による手弁当での勉強会なので 「聴講」の概念がありません。 全員が実務者として謙虚に、かつ本音で議論し合う場なので、高名な先生もボランティアで来てくださいます。 大学のゼミと同様のサイズで、互いに面と向かって質問したり意見を言ったりするには、参加者にも覚悟が必要です。 また、研究会の終盤には、参加者から話題提供者への 「フィードバック・タイム(一人1分)」が設けられています。 「聞いてるだけ」は許されないので、YouTube や オンデマンド講義に慣れてしまった若い世代には重荷のようです。 しかし 「聞いてるだけ」では、多民族・多文化・多文化の環境で仕事や学業を続けるのは困難と言わざるを得ません。 ◆ 「Learning Pyramid(学習ピラミッド)」は、能動的になればなるほど学習の定着化が増すことを現わします。 一斉授業/講義を聞いているだけだと 知識は5%しか定着しないのに、実演を見ると30%、他者と議論すると50%、他者に学んだことを教えると90%も定着するのです。 ◎ 水浴びの恩恵 猛暑が続いていますが、熱帯地方で健康に暮らす知恵に 「Mandi」(沐浴・水浴び)があります。 元は、神仏にお祈りする前に心身の “けがれ”を取り除く、聖と俗との分離を図る(きよめ)等の意味合いでした。 水を浴び 身体を清めることで、心身がリフレッシュされるだけでなく、毛穴を開き 身体を冷やす機能も無視できません。 だから、一日に数回するのが普通です。 身も心も清潔に保つことは健康に過ごすための基本ですし、熱帯地方では格好の熱中症対策なのです。 なお 日本の神社では、入口付近に 「手水<ちょうず>」の場所が設けられていますが、これも “きよめ”の一種です。 同様に、水資源に乏しい地域では、お祈り前の “きよめ”は 「Wudu」(水で手・足・顔などを洗うだけ)にします。 また、水がなければ、砂・石で清めること(Tayamum)も認められています。 ◆ 仏教・ヒンズー教では 「Aqua(閼伽, 水)」は “けがれ”を除去する必需品ですが、「水垢離 <みずごり>」までいくと 苦行になってしまいます。 また、温浴の効果も広く認められていて、「斎戒沐浴」「施浴」の習慣は 仏教とともに日本に伝来しました。「Mandi」と似た言葉に 「Mandub」があります。 こちらはアラビア語で “義務ではないが、した方が好いこと/奨励されること”の意味です。 親しい人から 「Mandi」を勧められたら、「(少し)水浴びでもして 休んだら?」という心遣いだと感謝しましょう。 必ず功徳がありますから。 ◎ 第90回グローバル化社会の教育研究会(EGS)を開催 12日(金)、慶應大学の大津由紀雄先生を囲んで開かれました。 まず大津先生に 『ことばの認知科学から見た、母語の重要性』のテーマでお話しいただきました。 <ことば は コミュニケーションの手段としては欠陥品であり、制御して使う必要がある> 一つの言語表現が複数の意味を持ち得る(曖昧性)/誤解が生じる可能性があることを自覚させること(メタ認知)…… 制御して使うことが重要であることを学習者に実感させることが言語教育の目的であると話されました。 しかし、「母語は習わなくても使えるもの」という錯覚や 「国語教育」の偏向性などが歪みを与えます。 他方で、英語教育に関して 「実用指向」「文法の軽視」「英語の授業は英語で」の短絡も見受けられます。 大津先生は 「日本型複言語教育」を提唱されています。 母語では直観を利用した 「ことばへの気づき」を育成し、 それを外国語を学ぶことで、更に 「ことばへの気づき」を増す= 母語と外国語の効果的運用を実現を目指す考え方です。 言い換えれば、自分の中に複数の言語知識が存在し、各言語が互いに関連づけられていく過程……“ことば” 及びコミュニケーションへの気づきやメタ認知方略の発達さえも促進していくわけです。 しかし、それを促進するためには “喜び/快感”の実感が伴っていかないと、上手くいかないでしょう。 学ぶことが楽しくなければ(喜びに感じられなければ)、想像力は十分に働かないし “気づき”に至らないのですから。 ◆ 大津先生といえば 約5年前、2020年からの大学入試改革が話題になっていた頃の印象が強烈です。 当時、いよいよ大学入試が変わるという感激の一方で、私たちは文科省のやり方に 何だか違和感も感じていましたが、文科省に向かって堂々と異議を申し立て、闘っておられたのが大津先生でした。 結果的には、当時の文科大臣と業者との癒着が発覚して、大学入試改革そのものが頓挫しましたが、その時に課題とされていたこと、特に 「学習指導要領に則って作られていない民間試験を入試の一部として導入することの問題点」を、私たちは忘れないでおきたいものです。 ◎ 7月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★ IDEC横浜セミナー第2回「展示会出展の成功ポイント!」---7月11日(木)、於:横浜情報文化センター11F。 テーマ 『海外市場開拓、成果を出す展示会出展のノウハウ』=吉村 章(Taipei Computer Association)。 ※ 「10秒」「1分」「○○禁止」など "目から鱗" のコツを聞けます。 ★ 第90回グローバル化社会の教育研究会(EGS)(Hybrid)--- 7月12日(金)午後2時〜、テーマ 『ことばの認知科学から見た、母語の重要性』=大津 由紀雄(慶應義塾大学名誉教授)。 ※「ことば」を子どもの認知発達の観点から客観的に眺め、言語教育のあるべき姿を話し合います。 ☆ JOESオンライン特別講演--- 7月20日(土) 午前9時〜 <日本時間>、テーマ『多文化の中で育つみんなへのメッセージ』=ネルソン・バビンコイ (文化通訳家)。※ 数多くのアーティストに英語歌詞を提供するアーティストが、異文化理解の素晴しさを語り掛けます。 ☆ ASIA-NETセミナー(On-Line)--- 7月24日(水) 午後7時〜8時、テーマ『「台湾の本音」(光文社新書)の野嶋剛氏が語る台湾』=野嶋 剛 (ジャーナリスト/大東文化大学教授)。※ 台湾人の「親日」の背景、「台湾有事」、「台湾アイデンティティ」について話されます。 ★ JOES 帰国子女のための学校説明会・相談会--- [東京] 7月26日(金) 於:東京都立産業貿易センター・台東館、[大阪] 7月29日(月) 於:グランキューブ大阪、[名古屋] 7月30日(火) 於:ウインクあいち。 ※ 帰国生(小・中・高)とその保護者を対象に、帰国後の進学に関する学校情報や相談の場を提供します。 [中高校生募集] とやまPCAMP2024 --- 8月8日(木)〜11日(日)、於:富山市民芸術創造センターほか。 ※ 広島に続く 地域版PCAMP の2ヶ所目です。 [中高校生募集] ひろしまPCAMP2024 ---8月19日(月)〜22日(木)、於:広島県福山市。 ※ 多様な生徒30名による多文化交流合宿です。(〆切:7月7日) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ 中国の蘇州市で6月24日(月)、日本人学校のスクールバスを待っていた親子が、中国人男性に刃物で切り付けられました。 中国各地にある日本人学校(10校)は、コロナ禍の収束で在籍者が回復しつつあっただけに、衝撃です。 対日感情の悪化は2012年以降続いているのに、日本政府の強気発言にも呆れます。 ◆ 同じ24日(月)、J=アサンジ(『ウィキリークス』編集長)がロンドンで釈放されました。 政府の腐敗と人権侵害に関する画期的な記事を公開し 追及する姿は英雄的でしたが、1,901日(5年2ヶ月余り)にも及ぶ拘束は余りに酷く、その間に欧米のマスコミはすっかり荒廃した感じです。 彼は再起できるでしょうか? ◆ 立教大学の高畠通敏先生は 没後20年ですが、基礎文献講読や高畠ゼミで学んだ仲間が集う交流会が 7月6日(土)に第一食堂で開かれます。 参加希望者が60人を越え、会場は急遽、1階のホールに変更されました。 勉強が好きで(?)5〜6年在学した人も多く、誰が同期なのか分からなくなっています (笑)。 また、note に 「等身大の高畠 通敏 先生」の記事をUPしました。 「教師」としての高畠先生の 意外に知られざる素顔を “本邦初公開”(笑)。 ◆ 私の学生時代、大教室の講義だと、最前列と2列目の席は、他学部・他大学の学生で埋まっていました。 懸命にノートを取る姿に敬服しつつも、先生の冗談に全く反応しないので 「理解できてるの?」と心配にも…。 知識や情報を得ることに集中するあまり “学び”からは遠ざかることが多いですから。 ◆ 関西帰国生親の会 「かけはし」の会報50号が届きました。 設立から丸40年を迎えたのを機に、記念座談会、お祝いの言葉、40年前の帰国生の声を載せたリポート、教育相談の変遷、学校訪問など盛りだくさんの内容です。 地道な努力の積み重ねに敬服します。 ◆ 岸田首相は、「極めて重大」「前例のない」「未曽有の」という用語を安易に使います。 「〜したつもり」と言葉でごまかそうとする意図だけが露骨で、全くその気がないことが判ってしまいます。 そのために “過激な言葉”に不感症になっていく若者も心配です。 ◆ 20日(土)は JOBAの対面式進学相談会、21日(日)は 「進学相談会inはいじま」と、海外育ちの子どもに主眼を置いた説明会が続きました。 とくに後者は、東京の三多摩地区の80校が参集、偏差値に頼らない賢い学校選択を提案しています。 ================================================================================================== |
【2024-6】 ◎ 6月に「火葬」のイメージ? 6月というと、海外では 「火葬」の印象もあることは否めません。 例えば、映画 『June Zero(6月0日)』(イスラエル・米 2022年)…… 「The Holocaust」のナチス戦犯 アドルフ・アイヒマンの処刑(1962年)の秘話が題材です。 イスラエルでは、5月31日の真夜中に死刑(絞首刑)が執行されるとのこと(だから "6月0日")。 そして、律法により火葬は禁止されているにも拘わらず、アイヒマンの遺体は火葬に付されたのだそうです。 ユダヤ教・キリスト教・イスラム教には 「死者の復活」の教義があり、復活の際に元の肉体が必要と考えられています。 そのため、火葬は長らく宗教法等で禁止されていますが、犯罪者処刑の “最高刑”とする習慣も温存されているのです。 「アイヒマン処刑後は火葬すべきだ」という国民の共通理解はあるものの、国内に火葬の施設がないという皮肉…… “人道的な見地から観た/宗教的に正しい火葬” の追求に、敬虔な信者たちは戸惑い翻弄されるという映画でした。 他方、欧州では、土葬することによる衛生/防疫的な課題、都市部における土葬場所の不足なども深刻です。 とうとうローマ・カトリック教会は1963年、火葬を認める方針に転じ、各国で火葬を認める法律も整備されつつあります。 ◆ 日本では 「死亡届」(医師の死亡診断書を添付)を市区町村役場に提出して、火葬する許可を得ないと 「死体遺棄・死体損壊罪」(刑法§190)に問われます。 また、火葬施設が発行する 「火葬証明書」がないと、共同墓地や霊園などでは納骨させてもらえません。 ◎ 理科好きの子の優利性 「成績が良い子/賢い子の共通点は、理科好きなこと」 と よく言われます。 兵庫県の中高一貫校で 進学実績がよい学校は、入試科目を 「国語・算数・理科」にしているのも、それが理由です。 広島の武田 浩司さん(理科実験教室 「エデュパーク」館長)も、それを科学的に 実証されています。 「いわゆる “地頭<じあたま>”のいい子を育てるヒントが、理科学習には詰まっています」とのこと。 理科学習の基本は、考察と実験・観察ですから、自らの体験や経験をきっかけに学習を始められるわけです。 いわば 「探求型学習」は 「Scientific」(科学的)な学習法…… 受け身ではない 自立的な学習を基本とすべきです。 どんな知識獲得や探究も、対話による考察や検討・共感・実践を経ないと “主体的で深い学び”になっていきません。 だから全ての教科・領域でそれを実践すべきでして、時間や手間はかかりますけど やり続けるしかないのです。 小学校の教科担任制は、明らかに それに逆行していると私は思っています。 ◎ 他人の不幸は蜜の味 他人の私事に関する噂話や世間話を 「ゴシップ(Gossip)」といいますが、元々の意味は “名付け親”(Godfather, Godmother)です。 生れたばかりの子が 教会で洗礼を受け 「Christian name」をもらう際に、近親者(Sibb)が名付け親になります。 名付け親は、その子が成人するまで保証人(Sponsor)にもなりますが、名付け親を頂点とする 「Family」ができて、やがて 強固な相互扶助組織となっていくことが多いです。 その風習は、中国でもあります。 ゴシップは16世紀頃、女の 「Tattler」(噂話をして他人の個人情報を漏らす習性)の意味になり、19世紀中頃には “お喋り, 根も葉もない噂” となりました。 こうした真実と嘘を取り混ぜたゴシップが 口コミで広まるのが 「Rumor」。 ゴシップも 社交の場での気軽な会話ならよいのですが、しばしば悪意が混じるのが世の常です。 他人や物の信用・名声を損なうほど 悪意ある噂(Malicious Gossip)となると、「Scandal」と呼ばれます。 ◆ 「Tattler」が日本語で 「金棒引き」と訳されるのは、金棒を突き鳴らして夜警・警固をする人が “ちょっとしたことを大げさに触れ回る”(⇒ 拡声器?の)イメージで捉えられていたからです。 ◎ 学校の「警察沙汰」に備える手引き書 学校教育で、子どもの学力不振やコミュニケーション能力の不足がよく取り沙汰されますが、教員も “五十歩百歩” です。 自己研修による向上ができず、コミュニケーション能力にも欠けている者が、子どもを指導できると考えるのは、所詮 無理な話です。 日本の学校も多文化多言語の環境に変化してきているのに、異なる価値観や立場を理解できなければ教育になりません。 その最たるものが、犯罪やクレーマー、各種の暴力への対応なのですが、相手が何を考えているのか想像できますか? 「困った時には警察に相談」と頭で解っていても、現実の警察官が日頃 何を感じ何を考えているかを 知りません。 知らないままで 事件に遭遇し 常識では考えられない対応をしてしまったり、手遅れになったりするのが普通です。 では、自分の学校や教員が犯罪に巻き込まれたとき、あなたはどうしますか? どうすれば、自分を/生徒や同僚を/学校の信用を守れますか? 警察を呼んだ方が好いのか? 警察への正しい頼り方は? がわかりますか? 新刊 『会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?―― 小さな事件からITセキュリティまで 警察への依頼の仕方』(技術評論社)が刊行…… 「会社⇒ 学校」「社員⇒ 教員/生徒」と読み替えれば、学校における具体的な対応策が、自ずと見えてきます。 <学校で起きる 「警察沙汰」に対処できるようになると、教員と生徒の心理的安全性が高まります。 それは学校の健全な経営にもつながる大事な知恵になります。>(本文の冒頭の文章を翻案) ◎ 先生は 何も教えてくれない? 高校生になった孫が 5月の連休で遊びに来て、「ウチの高校、先生が何も教えてくれないんだよぉ!」と言いました。 「じゃぁ、どうしてるの?」 と聞くと、「友達が教えてくれる」 とのこと。 好い学校に入ったなぁと安堵しました。 教師にとって、生徒から 「何も教えてくれない」 と言われることほど 辛いことはありません。 しかし、勉強は自分でするものなので、自分で解るまで待ってやらないと、本当の学びにならないことも多いのです。 教師には 信じて待つ忍耐が必要です。 かつての学習観は 「知識伝達型教育」=人間が生まれた時は "白紙" 状態であり、教師は そこに知識を注入する役でした。 しかし 人工知能(AI)の発達した時代には、AIを使いこなし 既存の知識等に囚われない創造的な 人間の頭脳が必要です。 そのために、教師主導ではなく 「学習者が自ら考え 体験し 話し合う過程」を中心に据えざるを得ません。 「Learning Pyramid」=定着率が高くなるものほど、他者の関わり+主体性・能動性が必要となるという現実…… 仲間に教えることが最も高い学習効果を生むのです。 また、国内労働市場の2割以上を 外国人が担うようになった今、多民族・多文化への対応力も必要です。 「どんな背景を持つ人ともチームを組んで働き、好い成果が出せる人間力」を育てざるを得ないわけです。 ◎ コミュニケーション能力について 文科省は 「令和5年度 英語教育実施状況調査」の結果を公表して、自画自賛してますが、果たしてそうでしょうか? 2020年(注: 2024年は誤記)からの大学入試改革を、文科大臣の私腹を肥やそうとして頓挫させ、高校の探究型学習をも後退させました。 本来は 多言語・多文化教育の用語である 「CEFR」 を、英語教育 とくに日本英検(STEP)の評価基準として歪曲しています。 なぜ日本人のコミュニケーション能力が低下し続けるのかを、今こそ真剣に、正面から考えなくてはなりません。 7月12日(金)、慶應義塾大学の大津 由紀雄先生が、EGS研究会にいらしてくださることになりました。 『ことばの認知科学から見た、母語の重要性』のテーマで お話を伺ったうえで、それを素に話し合います。 オンラインでの聴講も可能です。 ◎ 「take」の使い方 『遠山顕の いますぐ使える英会話』 2024年夏号 が出ました。 特集は 「take を正しく使えてますか?」…… 駄洒落が大好きなケンさんからそう言われると、どこまでが本当なのか、眉に唾して聞かないといけないかも (笑)。 しかも 「take」は、 実に奥深い言葉なのです。 思いのタケを語れば… (笑) なお、英語の 「take」は マレー語で「ambil」。 やはり “引っ張る” から “取る, 受け取る”、“理解/解釈する” など極めて幅広く、“写真を撮る” も 「Ambil photo」 と言います。 ただし、「Take it easy.」に当たるマレー語は 「Tenang saja.」(落ち着けよ)です。 ◎ 6月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ☆ 海外で暮らす子どもたちのことばと進路を考えるセミナー2024 (On-Line)--- 6月2日(日) 午後0時〜。 ※ 複数言語の環境下に置かれている 「移動する子どもたち」のことばと学び、成長と進路がテーマです。 ☆ ゆいグローバルネット講演会(On-Line)--- 6月1日(土) 午後3時半〜、『多様性の中で育つ--- 北欧の教育事情報告から考える』=藤田さなえ(デモクラシーフェスティバルジャパン代表理事)。※ 多様な世界に羽ばたく人間力・社会力について考えます。 ★ 第191回銀座ソーシャル映画祭--- 6月1日(土) 午後1時半〜、於:シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷)。 ※ 銀座ソーシャル映画祭からの作品応援を兼ねた思いつき鑑賞会です。 ☆ CFIECウェビナー(On-Line)--- 6月14日(金) 午後2時〜4時、テーマ 『アフリカの現在地と多極化する世界〜 グローバルな潮流とダイナミックな変化の行方』=北野 尚宏(早稲田大学理工学術院 教授)ほか。 ※ 中国とアフリカの経済関係の発展が国際的な文脈でどのような意味を持つのか等を読み解きます。 ☆ JACTFL主催特別講演会(On-Line)--- 6月30日(日) 午後1時半〜、テーマ 『イタリアにおける plurilinguismoと言語政策・言語教育政策の史的変遷』=西島 順子(大分大学)。 ※ 複言語主義に基づく 「民主的言語教育」の先例に学び、言語教育が担う本質的意義を考えます。 [作品募集] 第1回EDUBAL エッセイコンテスト--- 小4〜高3対象、テーマ「私が日本に学校を作るなら」。※ どんなユニークなアイデアが集まってくるか楽しみです。募集受付:7/1〜8/31。 [公開情報]TJF『CoReCa2022-2023 』の発行---「テンダーさんのその辺のもので生きる」 「多言語・多文化交流 パフォ-マンス合宿」 「地球講座」 「ときめき取材記」などの活動報告です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ 来年には 日本の年間死亡者数は 140万人を超えると推測され、火葬場不足が深刻です。 コロナ禍では一時 「火葬まで1週間待ち」の事態もあったものの、新規建設は難しく “待機” が日常的になりつつあります。 ドライアイスの生産も追いつかず…… どうします? ◆ 「六四天安門事件」(1989年6月)から満35年です。 70年代の 「批林批孔」運動の暴走から 「四人組」失脚で、中国への私の憧れは 既に失われていましたが、トウ小平による弾圧で さらに失望。 また、当時の学生たちが国内の少数民族を露骨に蔑視(ひいては日本人も蔑視)することが、私を いっそう失望させました。 ◆ 噂話に付き物の 「Monger」は ラテン語の 「Mango」(Salesman)で、商人が各地で噂話をして回るからでしょうか? ところが、「Mongerer」は “僧侶” です。 あることないことを言って…… ♪エーッセ エーッセ エッセホイサッサ お猿のマネだよ ホイサッサ… (笑)。 ◆ 警察官も生身の人間です。 常に法律を背負いながら、被害者に寄り添おうと 精一杯努力しているのですが、「5W1H」が曖昧な被害届や連絡には、動きも判断も鈍くなります。 「何もしてくれない」「どうすれば好いの?」 と がっかりする前に、私たち自身のコミュニ―ケーション能力を磨くようにしましょう。 ◆ フレンズ 帰国生 母の会の 『フレンズだより』第82号が届きました。 年に2回の発行としても 41年の継続に敬服します。 今回は 「傾聴の力」「ダイバーシティを生き抜く力」「世界のトイレ事情」など …… 母親目線の記事は “ほっこり”しますね。 ◆ 16日(日)の ルマン24時間耐久レースは、劣悪な条件の中で大接戦が繰り広げられ、見応えがありました(トップ5台が1分以内)。トヨタガズー組は 惜しくも2位ながら、立派です。 豊田章夫会長も、"逆風" の中 お疲れ様でした。 ◆ 憲法学者の池田政章先生は 昨年11月30日に亡くなりましたが、教え子らによる 「お別れの会」が 6月15日(土)立教大学構内の校友会館で開催されます。 不肖の弟子としては 「今更、どの面提げて…」と思いつつ、参列だけはいたします。 享年97歳。合掌。 ================================================================================================== |
【2024-5】 ◎ ネット上の略号は判じ物 インターネット上の交信では、略語や絵文字の類が多用されます。 かつて 携帯電話が普及し始めた頃(2000年?)は、「ミノ」(さようなら)や 「(^o^)\」(イエーイ!) などもありました。 最近、とくに若者の "呟き, チャット"(SNS)には 判じ物が多いのですが、外国語なら さらに暗号同然となります。 東南アジアの若者は、「bbl」(be back later=またね), 「brb」(be right back=直ぐ戻る), 「b4」(before=前に), 「4u, fyi」(for your inform=教えとくね), 「cz」('cause=なぜって〜), 「otw」(on the way=いま途中), 「msg」(message=連絡), 「tq, ty」(thank you)……などを よく使います。 マレー語では 「met pg」(selamat pagi=おはよう), 「an」(atas nama=〜の名で), 「bnd」(benda=物・商品), 「clk」(celaka=こん畜生!), 「cm」(cuma=〜だけ), 「cre」(cerewet=うざい), 「dah, dh」(sudah=済んだ/アバヨ)… これらを即座に訳せるプロの通訳/翻訳者は、神業だと思うのです。 ◆ イスラム教の挨拶の略号には、「as」(alaihis salam=彼にご加護を), 「saw」(salla'llahu'alahi wassalam=神よ、願わくば彼を祝福し 平和を与え賜え), 「swt」(subhanahu wataala=賞賛に値する最高の神よ)…… 知らないと困惑します。 ◎ 「チャタムハウスルール」って? 最近、会合における 「チャタムハウスルール(The Chatham House Rule)」という用語を初めて知りました。 <会議の参加者は、議論で得た情報を自由に使用できるものの、講演者や他の参加者の身元・所属先を明らかにしない> 冒頭に宣言することで議論の開放性を高め、デリケートな話題に関する真摯な取り組みや情報共有を促進するものです。 1927年に王立国際問題研究所(英国のシンクタンク)が考案したものが起源とされています。 なお、グローバル化社会の教育研究会(EGS)では自由な議論が保証されていますが、参加者の秘匿まではしていません。 発言者が 「これはオフレコで」と断ってコメントした点は、内容も発言者も他言しないのが “約束事”になっています。 ただし、次回の第89回の研究会(5/10)のテーマは 『若者を狙うサイバー犯罪事案の概要と被害の未然防止策』です。 今回初めて 「チャタムハウスルール」を宣言したいと思います。 つまり参加者は; 1)当日聞いた内容については 参加者が公開してもよい。 2)ただし、「誰が話したか?」と「当日の参加者名」については 非公開。 3)また、発言者が「この場限り」と断った内容については、公開不可。 被害者/加害者が未成年である事例、警察やIT関連企業の最先端のデータなどをも話題とするため、止むを得ません。 参加をご希望の皆様には、予め その点をご了承いただきたく、よろしくお願いいたします。 ◎ 仕事の期限や納期を守ってもらうには? 外国人との会話で 「Anytime is OK.」(いつでもいいよ)が、どれくらいの時間 “許容できる” のかは悩ましい問題です。 相手が親でもない限り 「どれだけ遅くなっても構わない」ではないことは、日本人同士では明らかなのですけど。 欧米・中東の人なら、「〜になったら」と “債務条件” をはっきり言ってくれるのですが、アジアでは そうはいきません。 とりわけ 中国系の人だと 「百年でも待つ」 という雰囲気も漂って、却って不気味です。 逆に、何かを頼みたい時に 「什me時候 都可以」「随時OK」(いつでもいいからね)と言うのは、日本人は苦手です。 マレー語でも 「Kapan saja boleh.」と日本人は なかなか言えず、「直ぐ/急いでやって」と言いたい衝動に勝てません。 イライラするくらいなら、「何に必要なのか」「どういう手順なのか」などを まず相手に伝えましょう。 それらを理解させた上で 「急ぐ必要ないから(不要抓緊好/不要着急好/Tak usah cepat.等)」と言えば好いのです。 そうすれば、きっと仕事の期限や納期は守ってくれます。 ◆ 海外で期限・納期を守ってもらえるケースは、相手の面子と評価が懸かっている場合に ほぼ限られます。 もちろん、たとえ遅れても 「いつできるかなぁ」と笑顔で言い続ける胆力も 必要ですけど (笑)。 日本の本社がイライラしてせっつくほど、駐在員が墓穴を堀ることは間違いありません。 ◎ サイバー犯罪の現状を知ろう! 10日(金)、警視庁の元サイバー犯罪捜査官を囲んで 第89回グローバル化社会の教育研究会(EGS)が開かれました。 テーマは 『若者を狙うサイバー犯罪事案の概要と被害の未然防止策』で、課金トラブル、チケット詐欺、ねずみ講、SNSトラブル、闇バイト、購入代行トラブルなどが、子どもたちの身の周りを既に取り囲んでいるのです。 便利で有益な道具や情報ほど、そのリスクと安全な使い方を教えましょう。 純粋無垢な子どもだからといって、「触らせない」という姿勢だけでは 生き抜く力を養わせようもありません。 3年前に 『子どものためのネット・リテラシー--- 教師も認識していないインターネットの光と影』を取り上げました。 未来を担う子どもたちに真の 「生きる力」をどう養わせるかという課題は、いっそう深刻になっているのです。 しかし実際には、刑事事件に関わる情報は、被疑者および被害者のプライバシーの問題や模倣犯などを誘発する危険も…… なかなか具体的なケースや手口などの話は表に出てこないので、「自分には関係ない」と現場教員は誤認してしまいます。 いざ事件が起こると、親は呆然自失するか 「学校は何をしていたか!」と訴えるしか、不満のやり場がなくなります。 対策の糸口は、かつての日本の庶民が持っていた “常識”…… つまり 「Critical Thinking」 と健全な良心・倫理観です。 「自分(の子・孫)だけは特別に…」 という “甘さ” を犯罪者は狙ってくるので、「騙されない人間」を育てましょう。 ◆ 「簡単に儲かる話」「警察が手加減してくれる裏技」などは全部 嘘だということは、他人のケースなら見抜けるはずなのです。 独りで抱え込んで悩まないための人間関係作り、コミュニケーション力の養成を心掛けたいものです。 ◎ 日本の中学・高校生の英語力は? 先日9日(木)、文科省が 「令和5年度 英語教育実施状況調査」の概要を公表し、ひとしきりマスコミを賑わせました。 しかし 現場の感覚では、平均的な生徒の英語力が向上しているとは思えません。 そして 大学入試で、英文科の推薦入試基準を 「英検2級以上」とするところも数多あるのです。 それは英語以前の 「人間理解力の低下」が原因ともいえるのでは…? と思っていると、英検1級道場の山中 昇先生が胸のすくようなコラムを書かれていました。 慶応大学の大津 由紀雄先生は、中教審その他の場で こうした事態の問題性を堂々と展開されています。 グローバル化社会の教育研究会(EGS)でも話題提供をしていただけないか相談したら、ご快諾くださました。 ただし、条件があり 「必ず対面で、半分以上は話し合いの時間に当てて欲しい」とのこと。 EGSは、いつも そういう形式です。 期日は7月12日(金)。 お楽しみに。 ◎ 意思疎通や人間理解の基盤は? 『JOES Magazine』の今年2月号に 尾崎 靖司先生(元 派遣教員)がこう書かれています。 <上海日本人学校の子どもたちにも刺激を受けた。 特に、現地校交流の様子は衝撃的だった。 子どもたちはゲームや舞踊の発表を通じて、お互いの文化を紹介しあう。 そこには、中国語が通じなければ英語で、英語もダメなら身振りで、コミュニケーションしている子どもたちのたくましい姿があった。 この子たちが成長したときには、きっと国家間の難しい問題解決の糸口を見つけてくれると希望を感じつつ、こんな交流をいつか高知で実現したいと思った。> 子ども自身が自らを鼓舞して異文化の人の前に立ち、五感を総動員して相手とコミュニケーションを図ろうとする…… 相手の様子を観察しながら 相互に伝えたいことを伝え合うことは、子どもの時から体験していって欲しいものです。 しかし、ただ 「やれば好い」というものではなく、日々の教育活動の中にきちんと位置づけられることが大事です。 国際交流が単なるイベントに終始するなら、“学び”はほとんどありません。 それは海外研修や農村ホームステイの類でも、同様にいえることです。 昨今 「コミュ力の低下」が指摘されますが、それは 「人間理解力の低下」という深刻な課題だという認識が必要です。 生れた時から親に話しかけられ、近所の人とも語り合って育っていくことが、意思疎通や人間理解の基盤となるのです。 ◎ 5月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★ 第15回EDIX(教育 総合展)東京--- 5月8日(水)〜10日(金)、於:東京ビッグサイト西展示棟。 ※ 教員向けのセミナーも充実しています。 ★ 第89回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 5月10日(金)、於:金沢工業大学・国際高専 虎ノ門キャンパス、テーマ 『若者を狙うサイバー犯罪事案の概要と被害の未然防止策』=林 秀人(IT関連企業リスク管理担当) ※ 警察の捜査現場、オンラインビジネスから見た生々しい現状が題材です。 ★ 2024 Peace Music Festival in Tokyo--- 5月13日(月)・14日(火)・16日(木)、於:駐日韓国文化院ハンマダンホール。※ 指揮者クム・ナンセさんの解説付きオーケストラ・コンサートです。 ★ 地域みらい留学 「合同学校説明会」(On-Line)--- 5月1日(水)から毎日(午後7時〜)。 ※ 1日(水)から毎日開催されるシリーズの一つ。「寮生活の学校」など毎日テーマが異なるので、最初に全体のプログラムを眺めましょう。 [作文募集] Panda杯 全日本青年作文コンクール2024 --- 16〜35歳の日本人(日本在住者限定)対象、日本語で1,600文字以内、応募締切:9/3。 [実施報告] TJF「多文化×芸術」ワークショップ in 富山(VTR)--- 2月9日(金)〜11日(日)に行われた3つのワークショップの動画。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ テレックスの時代(1970年頃)からあった英語の略語は 私も使うことが多いのですが、「w」(with)には 唖然とします。 ただし、日本の若者は "笑ってしまうよ" の意味でも使うので、要注意…… 私も時々 「www」(アハハハ)と使います。 ◆ どんな知識獲得や探究も 対話による考察や検討・共感・実践を経ないと “主体的で深い学び”になっていきません。 対話を通して 誰かが思い描いた夢にも共感し、その共感の輪をつなぎ広げていく力が、より好い社会を創るのですから。 これこそがIB教育でいう「TOK(知の理論)」の核心なのです。 ◆ 岸田首相が米国で 「貴国と共に戦います!」と満面の笑みで言うたびに、寒気がしました。 単なる戦争加担だけでなく、原子力発電所や核兵器の許容まで露骨に押し付けられて、嫌悪感と怒りしか覚えません。 もう 「与党以外に投票する」 という “批判票” 行動でしか、政治家の襟は正せないのです。 ◆ サイバー犯罪対策の“福音書”が いよいよ刊行!(6/3)。『会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?――小さな事件からITセキュリティまで警察への依頼の仕方』(技術評論社。著:林 秀人ほか)です。 今月のEGS研究会に来れなかった人には、こちらをお勧めします。 ◆ 4月24日(水)は ジャズ歌手ロニー=ハーシュさんの一周忌でした。 車、電化製品、家屋、そして飲み物のCMで引っ張りダコ…… 人を魅了する甘い声は、いつまでも私たちの心を癒してくれます。 「Innovation for Tomorrow」(ダイハツ)は 今も口真似する人がいます。 ◆ 5月28日は わが国初の女性判事、三淵 嘉子さん(旧姓:武藤。元 横浜家庭裁判所長)の命日です。 NHK朝ドラ 『虎に翼』の主人公のモデルですが、ご本人は非常に謙虚で奥ゆかしい女性だったそうです。 三淵さんは、母校の学生には 「皆様にエリート意識など持って欲しくない。あなた方がどこに出ても一人前の人間として自立していくという、この明大の伝統を受け継いで…」と、よく話されていたそうです。 1984年逝去(享年69歳)。 ◆ 「経済安全保障推進法」(2022年5月成立)以降、“歯止めのない規制”の法律が 自民党の不祥事の “どさくさ紛れ”に次々と出来ていきます。 「特定秘密保護法」(2013年12月成立)も、その後の点検や見直しも不十分なままです。 これって総体的に見れば、治安維持法ではないのでしょうか? ◆ 昔は 「分別をわきまえる=齢を取る」であったのが、現在は 欲にかられ周りの迷惑を顧みない老人が増えたのは嘆かわしいことです。 「自分だけよければいい」は、自分自身だけなく社会全体をも蝕んでいることを悟らなくては…… と自戒する毎日です。 ================================================================================================== |