子女教育ニュース

      担当: 国際教育相談員 小山 和智
海外人事や教育関係の実務担当者の皆様に配信しているニュースの一部を、
一般の皆様にも公開します。 教育相談などについては 「教育相談から」を。
2019年 12月11月10月9月5月〜8月1月〜4月。2018年 9月〜12月5月〜8月1月〜4月

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【2019-12月】

いよいよ師走12月です
  日韓関係がぎくしゃくした一年でしたが、昨年からの理由の一つが 「Ship-to-Ship Cargo Transfer(瀬取り) の問題でした。 本来は “沖合で積荷を 親船から陸揚げ用の小舟へ移す” ことをいいます。 しかし、“法律の網目や国際的制限を潜り抜けるために 公海・洋上で貨物を積み替える” 趣旨にもなり、国連で自粛の決議がなされています。 戦略物資の輸送先を韓国が説明できない “不明朗さ” が 「ホワイト国(Group A) から除外」という事態にも至りました。
  ただし、中国語に 「瀬」の字はなく(「P<lai4>」「灘<tan1>」を使う)、「法は “潜る”(smuggle?)ためにある」と考える庶民は、瀬取りを違法と感じません。 それは韓国でも同じであることを、昨年 私たちは痛感したわけです。 わが国が韓国にだけ特別に認めている優遇措置を 「余計なお世話だ! 要らないよ!」と言い続け、いざ それを少しでも止められたら激昂する…… その繰り返しを 中学・高校のアクティブ・ラーニングでは どう扱えばよいのでしょうか? 何があっても 民間交流だけは続けておきたいのですけど。

どこまでが国家の領域?
  英語の 「Shore」は (海・湖・沼などの)岸・水辺 で、「Off-shore」は “沖合, 海外”および “陸風”(海に向かって吹く風)の意味です。 日本語の 「沖合・近海」は、各漁村のチサキ(地先。陸から 600〜900間=1.1〜1.6km の独占的漁場)の外側の海域で、ヤマアテ(海上から陸地を目標にして 自船の位置を知ること)が可能な範囲(=Offing)を指します。 海戦の描写では 最長10海里(約18.5km)で敵の艦影を発見/視認していますから、陸地が見えなくなるのは 12海里(約22.2km)前後なのでしょう。 国際法上の 「Territorial Sea(領海/沿岸海)も、国連海洋法条約(1982年)の頃には12海里が普通となり、さらに外側に 「Contiguous Zone(接続水域)が もう12海里容認されています。
  それから先は 「遠洋」ですが、EEZ(排他的経済水域)が200海里(約370km)まで認められているので、実質的に 「公海」はEEZの外側になります。 でも、どの国のものでもないからといって、何をやっても 何を捨てても好いということではありません。
◆ 「Offshore Production」(沖合生産)は、外貨獲得や工業化のため “特区”に外国資本の工場を誘致し、輸出目的で行う生産です。 もちろん特区は、物理的には領土内にあります。 しかし、領土内に外国の政府や機関が設けるものは「租界地」(=植民地)です。 アメリカのアポロ計画(1960〜72年)で、米海軍がアポロ宇宙船を回収する際には、着水予定ポイントから約3km(1海里半?)の場所に待機していたと記憶します。 海上だと、直ぐ目の前に見える距離です。

高齢者の自動車運転を考える
  今年、ブレーキとアクセルを踏み間違えて 自動車が歩行者の列や店舗などに飛び込む事故が、多く報道されました。 屋上駐車場から車が落下する事故も 以前から多かったのですが、昨年までは うやむやにされてきた人災です。 40数年前、私が初めてAT車に乗った時、ブレーキペダルを踏んでいないと走り出すし、エンジンブレーキも効かないことに慌てました。 最近のハイブリッド車・電気自動車では、アクセルなしで坂道を登れるほどパワフルになっています。 また、渋滞の中を長時間運転していると、右足ばかり使うので 右足が痺れてきて、多くの人が ブレーキペダルを左足で踏む習慣になっています。 そして危険を感じた瞬間、両足が硬直してペダルを踏み込む人は実に多いのです。
  東京都では 「高齢者の運転免許自主返納サポート事業」を推進中です。 返納して運転経歴証明書を貰えば、美術館や博物館等が安くなるほか、様々なサービスが割引になります。
◆ ドライブレコーダーに向かって 「〜が戻らない!」と叫ぶのは、「上級国民」の危機管理マニュアルだ という悪い冗談を耳にしました。 東京・池袋の不幸な事件は、「上級/高級国民」を 都市伝説まで高めてしまったようです。

焼き芋の美味しい季節ですね
  「サツマイモ(甘藷<gan1shu3>)」の原産地は南米で、交易に来ていたポリネシア人によって、10世紀には太平洋諸島に伝播していた模様です。 欧州には16世紀に持ち込まれ、荒地でも育つ食糧として重宝されます(日本には 17世紀に伝来)。 南米先住民が 「batata」と呼んでいたので、スペイン語で 「patata」となったとのこと。 同じ時期に 「ジャガイモ(馬鈴薯<ma3ling2shu3>)」も スぺイン人によって 南米から欧州に運ばれます。 芽や緑の茎に毒があるので、長い間、観賞用植物とされますが、やがて栄養的に優れていることが判明します。
  三十年戦争(17世紀のカトリックvsプロテスタントの殺し合い)の後、荒廃した農地で飢饉が頻発し、プロシア国王は 「農民がジャガイモを食べてくれれば 年貢の小麦を増やせるのに…」と頭を悩ませていました。 思案の末、ジャガイモ畑の周囲を厳重な垣根で囲み 、「王室用につき 盗むべからず」と高札を立てます。 案の定、人々は盗んだ芋の調理法と美味しさ、そして栄養価の高さを知り、それらが 一気に欧州全土に広まりました。 かくて 「potato」の名もジャガイモに移り、サツマイモは 「sweet potato」と呼ばれます。
  なお、アメリカでは 黒人達がサツマイモを 「Yam(山の芋) と誤って呼んでいたため、大恐慌時代(1930年代)のサツマイモ消費拡大運動の際、「ヤム」と呼ぶ習慣が 全米に定着してしまったそうです。
◆ 「ヤム」は 熱帯から温帯地方に自生するもので、日本語では 「自然生<ジネンジョウ>」といいます。 他方 「長芋<ナガイモ>」は 寒冷地でも栽培でき、栄養満点。 アメリカは、日本産の長芋を大量に輸入していますが、本物の 「ヤム」は流通していません。 因みに、「yum-yum, yummy」(美味ちい) は幼児語です。

職務に誠実に 矜持をもって取り組む
  相澤冬樹さんの 『安倍官邸 vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由(文藝春秋 2018年)の発刊から ほぼ1年が経ち、評価も落ち着いてきたようです。 どこの組織でも 「わが身の保身に懸命な “ヒラメ”」がほとんどで、損得で身の処し方を考える風潮になっています。 自らの職務に誠実に 矜持をもって取り組もうとすると、波風が立ったり四面楚歌になったりすることも少なくありません。
  そんな中で 「志高く」頑張れるためには、小学校から高校までの基礎教育がきちんとなされていなければいけません。 とりわけ 「相手が理解し易く、納得し易い形で表現できること」は、社会が歪んだ形になっていくのを防ぐ必須能力です。 ギリシア・ローマの時代から綿々と続いてきた 「Liberal Arts(人間を自由にする技としての学び)は、いつの時代にも 政治家・大企業・お金持ち、そして宗教団体等から “潰し”に遭うものですが、それに果敢に闘いを挑む気概こそ 社会を救います。 もし現場の教師が その気概を失ったら、子どもたちの将来を、そして わが子や孫の人生も、より辛いものにしてしまうのだと考えて欲しいです。
◆ 政府が公費で実施した行事の書類が「廃棄されたために提示できない」というのは、行政の記録保存義務に反します。少なくとも 翌年の実施までは参考資料として残すべきで、なければ行政の非効率にも繋がります。データを復活・公表する責任が政府にあります。

「仕舞い」って何でしょう?
  武道の勝負や舞踊等で、一区切り(end) まで気を抜かず 全身に神経を漲らせておくことを 「残心<ざんしん>」といいます。 この緊張で終える区切りが「仕舞い」で、日本の礼法や躾<しつけ> の基本用語です。 『All's Well That Ends Well(終わり好ければ 全て好し)』はシェイクスピアの戯曲ですが、ハッピーエンドではありません。 しかし、中国の『詩経』で 「靡不有初、鮮克有終」⇒「有終の美」を学んでいた日本人には、「仕舞い」を教える慣用句として定着しました。
  「仕舞い」は単なる “最後・末・終わり”だけでなく “首尾・でき具合”、さらには “次への準備”まで含まれます。 「身仕舞」(化粧)、「仕舞店」(在庫一掃セールの店) などは 既に死語でしょうが、次への出発が前提になった「御破算」(ゼロ) です。
  生徒から、どこまでが 「仕舞い」なのかと聞き返されることがあります。 「お辞儀するまで」から 「幕や襖・障子を閉めるまで」へとエスカレートし、遂には 「下駄を履く(=玄関を出る)まで」と言っている 自分の好い加減さ……。 しかし、私立中学・高校の中には、最寄り駅まで職員を配置して、受験生や保護者を観察している例さえあるのです。
◆ 英語の「keep/hold one's end up」「make both ends meet」は“帳尻合わせ”と訳されますが、どちらかというと “(工夫して) 予算内に収める”という意味です。その点では、日本語の「倹約・始末」に近いと思います。

一年のお仕舞いにあたり
  各国がエゴを剥き出しにする場面の多かった一年でしたが、秋口からアメリカの銀行が融資をしたがらない= アメリカの銀行同士でも融通し合わない(短期融資市場の実質的な凍結)という傾向が目立ってきました。 金利が下がって儲からないこともありますけど、銀行同士が信用を付与し合う体制が崩れると、中小の銀行から破綻が始まりかねません。 日本の大手銀行の信用保証があるお蔭で 何とか貿易ができている(=経済的には日本と一体になっている)韓国も、「見捨てられるのでは?」という恐怖が募って 神経を尖らせているわけです。
  これは「金融危機」というべきなのでしょうが、わが国は既に 1991年からずっとその状態でした。 政府やマスコミ、そして金融界がこぞって、実質的な不況を 「マイナス成長」と ごまかし、国民を不感症にさせてきただけです。 であれば 余計に、私たちが直面している時代の流れをしっかり見据えることが大事です。 環境の変化に対応して 人間は新しい働き方を切り拓いていくわけで、それができるように 次の世代を育て、訓練していけばよいのです。
  例えば 「AIとロボットが人間の仕事を奪う」というと衝撃的ですが、では30年前に 「OA化が進むと失業者が増える」と言われた通りになったかというと、そうはなっていません。 OA化したらしたで、私たちは新しい仕事を生み出して凌いできましたから。 夢を見失わず、多様性の中の葛藤を 喜びに変えていきましょう。 必ず新しい地平が拓けますから。

12月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
親江会/第15回 江戸川平和コンサート--- 12月1日(日)、於:タワーホール船堀(東京都江戸川区)。朗読:蒔村 三枝子、ピアノ:岩崎 妙子、指揮:三浦 順二、合唱:広島観音高校音楽部OB合唱団。 ※ 合唱と朗読による被爆者の鎮魂歌「碑<いしぶみ>」コンサートです。
朗読と少女たちによる紙芝居--- 12月 8日(日)、於:つくばみらい市 伊奈公民館。 出演:想いを未来につなぐ朗読の会、手話サークルすずらん、しゃべり場つくばみらい、ほか。 ※ 「平和の種をまく……明日を生きるために」を合言葉に、核兵器廃絶に向け地道な活動が続きます。
★ 第2回 GIEST公開シンポジウム--- 12月12日(木)、於:星陵会館(東京都千代田区)。 テーマ 『イラン-アメリカ危機とサイバー戦争』=高橋 和夫(放送大学 名誉教授)・小沢 知裕(GIEST 所長)※ 先端技術安全保障研究所(GIEST) が、最近の「サイバー戦争」の急展開を解説します。
ICT GLOBAL WINTER CAMP 2019--- 12月15日(日)〜21日(土)、於:国際高等専門学校 白山麓キャンパス(石川県白山市)※ ドローンプログラム、デジタルファブリケーション、化学、生物、料理等の体験学習や、日本文化・AI等に関する授業など
「話してみよう韓国語」青森大会--- 12月21日(土)、於:ヒロロスクエア(青森県弘前市)。 韓国語で演じながら表現を楽しむコンテスト。 東京・中高生大会は 2月8日(土)で、応募受付は12月13日まで(必着)。 スキット部門・フォトメッセージ部門・ステージアトラクション部門の3部門。
KTO道徳授業研究会 12月拡大定例会--- 12月26日(木)、於:筑波大学附属小学校(東京都文京区)※ 道徳授業の新しい道を探るワークショップ。 終了後 アトラクション&懇親会もあります。
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◆ 東京五輪のエンブレム騒動で始まった 「上級/高級国民」(無知蒙昧な一般国民を支配する有能かつ教養あふれる者)は、「素人は黙ってろ!」という “プロ集団の本音” を見透かす用語でした。 「生まなかった奴が悪い」も……。 不愉快ですね。

◆ 『月刊 海外子女教育』12月号の特集は 「日本各地からの帰国生 我が校紹介」…… 神戸国際中・関西大倉高・不二聖心女子学院・名古屋中です。 もう一つの特集は 「外国語保持教室を紹介します!」で、こちらは私が担当しました。 懐かしかったです。

◆ 海外子女教育振興財団で 来年度上巻の教科書の配布が始まりました。 出国の2ヶ月前から受領できます。 既に海外滞在中で 日本人学校・補習校に通っていない子のものは、最寄の日本大使館・領事館に申請してください。

◆ 「バレーの中村」とか「東洋の魔女」と言っても 通じない時代になりましたが、中村学園(東京都江東区)創立110周年記念音楽祭が11月30日(土)、開かれました。 地域社会に見守られて 健やかに育っていく子たちを眺めていると、まだ日本は大丈夫だという気になります。

関西帰国生親の会 「かけはし」と、FRC福岡帰国子女の会から、今年の会報が届きました。 帰国ママたちが 地道な活動を息長く続けておられることに、敬服いたします。 世代交代も円滑になされている点でも、大いに学びたいところです。 “卒業” されたコアメンバーの皆さんも、それぞれ個人的な活動でご活躍の様子で、これまた励まされます。

◆ 今年の 「新語・流行語大賞」は 「ONE TEAM」に決まりました。 確かに、多様な人材の一致団結は 胸を熱くするものですが、一つ間違えると 別の形の “排除”の感覚を抱きかねないことも危惧します。 常に謙虚でいたいものです。

◆ 氏田雄介さんの 『54字の物語』(PHP研究所)がヒットシリーズに……「意味がわかるとゾクゾクする超短編小説集」で、あっという間に 第五回の優秀作品が発表・刊行されています。 私には “現代版狂歌”にも思えます。(可笑しければ 笑わなきゃ!)

◆ キリスト教徒は「Advent (待降節)」に入っています。 何かを我慢したり節制したりしながら 静かにクリスマスを待つはずですが、届くニュースは バーゲンの盛況ばかり…… どこか狂っているような気がします。

◆ 多事多難な一年が暮れていきます。 喪中葉書も 今年は多かったですが、ほとんどが大往生! 皆様、楽しいクリスマスとお正月をお迎えください。
  Selamat Tahun Baru! 新年快楽! Bonne annee! A Happy New Year!

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【2019-11月】

「11」は 「余一, 与一」
  11月ですね。 「eleven」は “one-left”、つまり “十まで数えて 余りが一”という意味です(「twelve」は “余り二つ”)。 日本の古事記にも 「とお(あ)まりひとつ」が出てきますが、平安時代以降は 漢字を使って 「余一, 与一(注:"与"は「and」の意味)と書くようになりました。 例えば 『平家物語』の弓の名手 「那須与一」は、“11番目の子”の意味です。 これには、古代中国で 皇帝が自分のことを 「予(余)一人<yu3yi1ren>」(注:“一人”は卑下・謙遜の意思を表す)と呼んでいた “ゲン担ぎ”も込められています。 秦の始皇帝が中国を統一(BC.221年)して以降、皇帝は 「朕」と自称しますが、話し言葉には 「予一人」も散見されます。 『漢書・文帝紀』には 「朕は保宗寺を得たが…… 天下が乱れるのは、予一人のせいなのだ」と両方載っています。

「Salute」は国際儀礼の一つ
  東京でも 朝晩はぐっと冷えるようになり、秋の気配を実感できるようになりました。 くしゃみをする人を よく見かけますが、その人には 「Salute!」「God bless you!(お大事に)等の声をかけるのが、国際的な儀礼の一つです。 マレー語の 「salut」には “包み・覆い、尊敬・挨拶・敬礼”の意味があります。 他方、カトリックでは 「聖体降福(賛美)式」もそう呼びますから、“救い・救済・救霊”の意味もあることが判ります。
  なお、軍人・警察官が無帽の時は、挙手の敬礼ではなく お辞儀(Bow)をします。 日本では細かく、上体を15度傾ける 「会釈」のほか、「敬礼」(30度前傾)と 「最敬礼」(45度前傾)が定められています。 「握手をしながら会釈するのは変だ」と言う人がいますが、国王や大統領から握手の栄誉にあずかる場合には、英国の将軍でも会釈します(女性は curtsy)。 今回のラグビー世界盃で 各国選手が観客席にお辞儀していたのは、それに匹敵する異例のことです。
◆ フランスと旧仏領の国々の軍隊、及び英国の陸・空軍では、挙手の敬礼の際に 掌を前に向けています。 中世の騎士が 王侯・貴族に拝謁する際、額に右手の甲を当て、手に武器を持っていないことを見せたことが起源だそうです。

「EDM」という仕事は?
  スポーツ競技会を主催する団体は、競技自体の運営(ルールの整備、審判団の組織、競技種目や選手の管理など)を管轄するわけですが、競技面以外の運営のために 「大会組織委員会/本部」等が設置されるのが普通です。 例えば、「夏の甲子園」(全国高等学校野球選手権大会)だと、日本高等学校野球連盟が競技自体を管理しますが、その他の運営は 朝日新聞社が施設管理、広報、観客の誘導・整理などの “縁の下の力持ち”(その割には威張る)を担っています。
  最近、「EDM (Event Delivery Manager)」という仕事が注目されてきました。 競技会場が複数ある場合、各会場に大会組織委員会から派遣され、その日会場で起こる全ての問題や観客からの要望などに対処する現場責任者のことです。 現場だけでは対処できない問題・課題は、その日のうちにEDMが取りまとめて 大会組織委員会に報告されます。 今回のラグビー大会では、各会場に一人だけ派遣されるEDMからの報告を基に、翌朝8時の本部ミーティングで協議して 即日現場に反映させるという機動性が、大会の成功に大きく貢献しました。

立冬は 「ココアの日」です
  立冬の日beginning(=first day) of winter。今年は日本時間 11月8日02:24〜)は以前、森永乳業が 「ココアの日」と定めて宣伝していましたが、ついに一昨年、日本記念日協会により認定・登録されました。
  カカオ(Cacao, 加加阿)の木は中南米原産で、東南アジアにも多く植えられています。 その果実(cocoa, koko(a))は、マンゴスチンに似て 種子の周りに白い果肉があり、とても美味しい…… ギリシア語では 「Theobroma(神々の食べ物)と呼ばれます。 ただし、種子をチョコレートにするには、この白い果肉とともにバナナの葉でくるみ(or木箱に入れて)、約一週間発酵させます。 その後に乾燥させ、「カカオ豆」として出荷されます。 工場で軽く焙煎(roast)してから 粗く砕き、外皮・胚芽を取り除いた “胚乳” が 「Cacao-nibs(神ってるカカオ)⇒ 更に焙煎すると酸味が消え 香りや風味が引き立ちます。 今日では これも 「Theobroma」と呼びます。 更に細かく すり潰したペーストが 「muse du chocolat(チョコの女神)、それを冷却・固化したものが 「Cacao-mas」です。
◆ 中国・東南アジアの立冬(11/7)が 日本の立冬の前日となる例=1994年(日本時間 8日00:36)、1998年(同 8日00:03)、2027年(同 8日00:38)、2031年(同 8日00:04)。 他方、英国では2016年から4年毎に 11月6日が立冬になります。

「位記・勲章」って何?
  文化の日(11月3日)は文化勲章授与の日ですが、「正一位」「従五位」などの「位階 (ordre, order)」は、勲功・功績ある者へ付与される栄典の一種です。 古代から各国にある制度で、わが国の位階は 隋の制度を模して始まりました。 この位階を叙する文書が 「位記」であり、勲章の形を採れば 「叙勲」です。 中国語の「(序)<xu4>」は “話す, 記す”のほかに “等級・順序を決める”の意味もあります。 英語の 「order」と同じですね。
  なお、警察に逮捕された被疑者は、取り調べの際に 『身上調査書』という調書が作成されます。 出生地や家族、学歴、職歴、前科前歴などとともに、必ず 「位記・勲章はありますか?」と聞くことになっています。 では、位記・勲章があれば何か特典があるのでしょうか? 憲法14条に 「いかなる特権も伴わない」と書かれてはいますが、国家の功労者に対して敬意を払うのは国民の義務です。 かといって「私は上級国民だ!」と言われると 白けますけどね。

鍋がヤカンを嘲笑する
  M・デ=セルバンテスの小説『ドン・キホーテ(西 1605年)に 「フライパンが鍋に 『出て来い! そこの目の縁を黒くしている奴』と言った」という箇所があります。 英語版では 「the frying-pan said to the kettle, 'Avant, black-browes'」と訳されました。 それが後に、黒く煤けた鍋(pot)が 釜やヤカン(kettle)に向かって 「黒い奴は出て行け!」と言う話になり、「the kettle and the pot」「the pot calling the kettle black(五十歩百歩, 目糞鼻糞を笑う)の表現が生まれました。
  それでも偉そうにする御仁が 「a big pot(大物, VIP)と呼ばれ、「pot(s) of money(大金)を隠していたりします。 いわゆる「上級国民」は、『Animal Farm』(英 1945年)の豚を想起させますね (私は そう訳しています(笑))。 なお、「pot luck」は “(鍋底の)残り物=あり合わせ料理には福がある” という感覚から、“次に来る幸運” または “競馬の人気馬(favorite=本命)” の意味です。
◆ 自分のことを棚に上げ 他人にケチをつける愚かさを、マレー語では 「Jaras kata, raga jarang.」(ジャラスが、ラガは隙間が大きいと言う)といいます。 どちらも籐の籠…… ジャラスの方が少し大きいサイズですが、目の粗さは同じなのです。

「秋の日は釣瓶<ツルベ>落とし」の晩秋
  シャンソンの名曲『枯葉』は 「マロニエ(セイヨウ栃ノ木)の並木が定番…… トチノキ科で 「Horse-chestnut, Conker(馬栗)とも呼ばれます。 原産地はバルカン半島で、17世紀に欧州に広まりました。 マロニエの実は苦くて不味く 弱毒性のため、「Marron d'Inde(インド栗)といって嫌われたものの、馬の風邪薬のほか、ヒトの解熱剤(キニーネの代用薬)や予防薬(静脈瘤・浮腫・捻挫etc.)、食品添加物に用いられてきました。
  それとよく似た 「Chataignier(欧州栗)の実は 「Marron, Chataigne, Sweet Chestnut(甘栗)…… こちらはブナ科で、マロン・グラッセにしたり ペーストやパウダーにしたりと 食用にされます。 わが国の「Japanese Chestnut(日本栗)も秋の味覚の代表ですが、材木が 堅くて腐り難い(とくに水に強い)ことが特徴です。 古くから橋や堤防・濠などの土木工事、建造物、鉄道の枕木、家具などに用いられてきました。
◆ マレー語の 「Congkak」は “尊大な, 高慢な”の意味ですが、イスラム圏全域に亘ってある 「Mancala, Kalah」等の名のボードゲーム/玩具でもあります。 ゴムの木など堅い木で作るのですが、元はマロニエ(Conker)だったのかもしれません。

“栗”は オワコン?
  「chestnut」といえば、アメリカでは 「stale joke(古臭い小話)という意味もあり、退屈or面倒になるほど繰り返された話題や発言、ジョークの類を指します。 日本の若者風に言えば 「オワコン」、年寄りなら 「クリ言」でしょうか?(笑) 例えば、「世界で最も短い国際橋は?」というトピックは、うんざりするほど聞かされてきました。 米ニューヨーク北方の「千島諸島」のザビコン島の橋…… ご存じですか?
◆ ザビコン島は、カナダのロックポート市の南東2kmにある大小の島(元は一つの島?)で、2島を繋ぐ約7mの橋が 「国境を越える最も短い橋」だと喧伝されているのですが、実際は どちらの島もカナダ領だというオチです。 EU加盟国同士は 小川が国境になっている場所が多く、数メートルの “国際橋”は無数にあります。「Immigration control」(出入国管理)が行われている国際橋では、ベイト・シェアン橋(イスラエル―ヨルダン間 110m?)が有名です。

第72回グローバル化社会の教育研究会(EGS)開催される
  11月14日(木)、『わが国におけるIB教育普及の現状と可能性』のテーマで行われました。 話題提供は江里口 歡人先生 (玉川大学教授)で、マイケル・サンデルの 「Quality of life(生活の質の向上)」を糸口に話されました。 自尊感情Self Esteem)の大切さ…… 他人との比較(or偏差値に拘る生き方)ではなく、「自己を大事な存在とし、的確な意思決定と行動ができ、人に好かれることで人は満たされる」点にこそ 学びや成長の原点があり、日本人の持つ価値観の転換が必要とのこと。 また、日本では 議論することが人格の戦いになってしまう点も課題とされました。 互いが主体性をもって話し合うなかで “納得解”を探していく姿勢も、多文化共生社会を生きるために必要なのです。
  自由協議では、公立学校、とりわけ過疎化の進む地域の学校へのIB教育の導入が求められているという確認もできました。 IB教育そのものでなくても、リベラルアーツやIBの理念に沿った教育、それを体現できる教師の養成・確保が必要なのです。 なお、以前、PYPの卒業発表で 「技術的特異点(Singularity)」をテーマにした児童のことを紹介しました。 「教師は要りませんね」と言い切った直後、「でも、ファシリテーターは必要ですよ」(=引き出す(educate)人は必要だが、教える人(teacher)は不要)とフォローした12歳児の将来が楽しみです。
◆ いっぱしの講釈を言うくせに、自ら挑戦はしないし、責任を取らない…… という風潮が蔓延したのも困ったことです。 主体性をもって生きない限りは、幸福感は得られません。挑戦しないことで失う利益は 実に大きいのです。

11月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
多文化共生社会の構築シンポジウム--- 11月4日(月)、於:富士ソフト アキバプラザ(東京都千代田区)。 テーマ 『日本社会における多文化共生社会実現の壁--- 心のグローバル化』。 ※ 日本人のメンタリティからみた「心の壁」を追及し 心のグローバル化を図るために何をすべきかを考えます。
TJF 学校のソトでうでだめし vol.4--- 11月9日(土)、於:国際文化フォーラム(東京都文京区)。 テーマ 『「しょうがない」を乗り越えろ! 構造を理解し解決を配置するシステム思考実践』=小崎 悠太(ヨホホ研究所 主宰)。 ※ 日常生活でぶつかる問題から社会的な課題まで 根本的な解決を目指したいときに活用できるシステム思考を体験します。 翌10日(日)は教師向けのセミナー。
第72回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 11月14日(木)、於:聖学院中学・高校(東京都北区)。 テーマ 『わが国におけるIB教育普及の現状と可能性』= 江里口 歡人(玉川大学 教授/日本IB教育学会 副会長)。 ※ 「IB教育推進コンソーシアム」にも参加されている江里口先生のお話を伺い それを素に話し合います。
UOS 関東 POWER UP ソリューションフェア2019--- 11月15日(金)、於:秋葉原UDX(東京都千代田区)。 講演:『部下のやる気を引き出す方法---モチベーションマネージメント』=植木 理恵(心理学者/臨床心理士)ほか。※ 日本アイ・ビー・エム(株)の間々田 隆介さんの講演も見物です。
ネット社会の健全な発展に向けた連絡協議会シンポジウム--- 11月18日(月)、於:機械振興会館 (東京都港区)。 テーマ 『他人を傷つけるネット被害とは』=スマイリー キクチ(タレント)、森 亮二(弁護士)、上沼 紫野(弁護士) ほか。 ※ ネットの書き込みなどによる被害の実例を踏まえ、その対処・防止について考える会です。
多文化ヒューマンライブラリー--- 11月30日(土)、於:世田谷区民会館別館(東京都世田谷区)。 対話:30分ずつ4セッション、講演 『6歳で移民になった私の物語』。 ※ 講演は『ふるさとって呼んでもいいですか』の著者ナディさん(イラン出身)です。
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◆ 南山大学の浅野享三先生から、服部剛丈くんのご両親が米国の銃規制を求める活動を続けておられると教えていただきました。 活動資金は お母さんが書かれた絵本 『Alyssa and Yoshi』(600円)の売上金とのことです。

◆ 11月11日は 中国では「独身の日」です。 欧米では 11時11分になると 「Make a wish!」とSNSで交信して お願いごとをするのが習慣化。“1”が並ぶ瞬間は、“始まり”の偶然が重なり合う幸運な時間だと信じられているようです。

◆ 今年2月発表の 「茨城県立高校改革プラン」によると、2020〜22年度に県立の中高一貫教育校10校が開校、既に開校している4校(小瀬、日立一、並木、古河)を合わせ、高校入試のない高校は14校になるそうです。 子どもの “青田買い”競争になって、教育現場が荒廃することのないよう祈ります。

◆ 『月刊 海外子女教育』11月号の特集は 「第40回 海外子女文芸作品コンクール」の入選作品紹介です。 会員校訪問は 法政大学…… 全ての授業を英語で受けられる4学部を中心に、文部科学省の 「スーパーグローバル大学創生支援(SGU)」の最先端を取材しました。 また 書評欄に、多田孝志先生(金沢学院大学教授) が 「多文化共生社会に対応した人間」について易しく解説してくださっているのも必見です。

◆ 11月3日(日)、ロシアから17名の教師たちを迎え TJF日露教育交流会が開かれました。 現地校で日本語教育を担う一方で、日本の高校との交流活動も推進している先生方の、日本語が堪能なのに驚きます。

◆ 在マレーシア日本国大使館に、岡 浩さんが特命全権大使として赴任されます(本当は「閣下」を付けてお呼びしなくてはいけません)。 日本マレーシア協会のセミナーでお会いした際、クアラルンプール、ペナン、ジョホール、コタキナバルの日本人学校、そして補習授業校のことも ご高配をお願いしました。

◆ 自称 "台所作曲家" の糀場富美子さんが 「中国文化賞」を受賞! 代表作の 『広島レクイエム』(1985年) のほか、『未風化の7つの横顔』(2006年)、『摂氏4000度からの未来』(2015年) などの活動が評価されたものです。 おめでとう!

◆ NHK大河ドラマ 『いだてん』に 松坂桃李演じる岩田幸彰さん(元JOC常任委員) が登場し、懐かしいです。 東京五輪(1964年)、札幌冬季五輪(1972年) の招致・運営をやり遂げた後は、六本木に国際オリエンテーションセンターを開設し、海外駐在員夫人の渡航前研修(1982年 海外子女教育振興財団に移管)、同時通訳者の養成・訓練などで活躍されました。 1984年、帰国生のための情報センター「ISEC」を 東京と大阪に設立されますが、数年後、東京は株式会社化して分離(代表:並木みどり氏)、大阪は帰国ママの『帰国生への学校案内《関西》』の活動のみ(「かけはし」)を残して解散しました。

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【2019-10月】

10月1日は「世界高齢者デー」です。
  国際連合が 「世界高齢者デー」と定める(1990年)以前には、漢字文化圏では「重陽<Chong2yang2>」の節句(旧暦9月9日)の風習と不可分のものとして、長寿が祝われていました。 9月の第二日曜前後に 「祖父母の日」などを設ける国(例:アメリカは第二月曜の前日)があるのも、その影響と思われます。 2010年に台湾が突然、8月の最終日曜日を『祖父母節<Zu3fu4mu3Jie2>』と制定したのには驚きましたけど。
  カトリック教会では10月2日の 「守護天使の日」を 「Nazionale dei Nonni(祖父母の日)と呼びますが、スペインは7月26日、メキシコは8月28日と定めており、フランスでは 「3月の第一日曜」です。 英国と豪クィーンズランド州では 「10月の第一日曜」、ドイツ・香港は 「10月の第二日曜」、シンガポールとオーストラリアの一部では 「10月末の日曜」となっています。
  わが国では2003年まで、敬老の日は9月15日でした(祝日法改正は 2001年)。 兵庫県で 「年寄りの日」として始まった時(1947年)には、満55歳以上が “年寄り”と規定されていたのですが、私が子どもの頃 「ふざけろ!」と怒っていたお爺ちゃんたちを覚えています。 いま周りには 元気な「古希」ばかり…。
                「老いの名もありとも知らで四十雀 <しじゅうから>(松尾芭蕉)

第71回グローバル化社会の教育研究会(EGS) 開催される
  9月26日(木)、いつもの聖学院中学・高校(東京都北区)で開かれ、和田利一先生から 『茗溪学園におけるHOTSの実践報告』の話題提供を受けました。 40年前、東京教育大学・筑波大学の同窓会「茗溪会」が設立した同校は、「Study-Skills」を合言葉に 実践的な教育を行っています。 OECD等で 「コンテンツ型学力(何を知っているか)から コンピテンシー型学力(何ができるか)」が提唱され、わが国でも 「学びの質の転換」に向けた教育改革が叫ばれる中、同校は既に実績を出している段階にあります。
  とくに、大学入試改革や IB(DP)への接続に向けた 「エッセイ(自分の意見・考えを、相手に説得力を持って伝える文章)」の指導の実際を詳しく聞きました。 中学1年から6年間をかけて 段階的・系統的に論述スキルの獲得と思考力に育成をしていくトレーニングは、HOTSの理論にしっかり支えられています。 9月1日(日)の日本国際バカロレア教育学会でも、HOTS関連の発表の分科会(Session I)がありましたが、学校改革のプロセスの中で進められる「自ら考え、判断し、行動できる力」を育む実践や手順…… 聞けば聞くほど感動的です。 とりわけ帰国生や英語の得意な生徒には、かなりの教育効果を期待できるでしょう。
◆ HOTSのノウハウは、アメリカの現地校教育の実践から抽出されたもので、公開もされています。 興味があれば、松本輝彦先生の書かれた『5段落エッセイ指導で、日本の子どもが変わる!(リーブル出版)をお勧めします。

ピュロスの勝利 (Pyrrhic victory)?
  「ピュロスの勝利 (Pyrrhic victory)」…… 古代ギリシャの英雄ピュロスは、イタリア南部の都市タレントゥムに雇われ 新興ローマ軍に連戦連勝しますが、ローマ側は、遠路遠征して来ているピュロス軍の足許を見透かして 講和に応じませんでした。 双方の被害は膨れ上る一方……「もう一度勝利したとしても、我々は壊滅するだろう」(勝っても 割に合わない) と、ピュロスは嘆きます。
  仕事をしていれば、そんな気持になることは よくあります。 6月18日夜の山形県沖地震で、地震発生から約30分後に 東京電力が新潟県庁・柏崎市役所に送ったファクス(原発の冷却電源に「異常あり」)が 一時問題になりました。 もし 放射能漏れが起こった場合、最も風評被害を受けるのは地元社会です。 東電側が 「本当にそのまま発表して好いのか?」と開き直ると、地元側は 公表すべきかどうか悩むでしょう。 しかし、それでも公表する勇気、そして誤報を恐れない勇気が、一人ひとりに求められています。
◆ 犯罪学に「ピュロスの敗北理論 (Pyrrhic defeat theory)」というのもあります。司法制度を変える権限を持つ者が、実は現行制度で最も利益を得ている⇒ 改憲を叫んでいる人が、本当は一番旨い汁を吸っている…… と考えてしまう私です。

喧嘩をするほど仲が良い?
  マレー語の 「anjing dengan kucing」(猫に犬)は “喧嘩が絶えない仲の悪さ” を意味しますが、これは 印欧語族(IE)の影響です。 欧州・中東では、犬は猫に対し 「要領のいい 狡い奴だ」と反感 (antipathy) を持ち、迫害する (persecute) と考えられています。 猫も人間の見てない所で けっこう犬に意地悪していて、ペット同士の近親憎悪ともいえるでしょう。
  他方、漢字文化圏では 「犬と猿」が仲が悪いことにされています。 食用家畜同士の妬み・嫉み、あるいは “恨<ハン>” が高じたのでしょうか? 日本では 仲良く鬼退治に行きますけど。

cats and dogs」の世界は?
  北欧・ゲルマン神話では、猫は天候に影響を与える力があり、豪雨の嵐を乗り回す魔女は 猫の姿をしていると信じられています。 また、犬や狼は 「嵐の神オーディン(Woden) の従者」なので、暴風雨の象徴・前触れです。 だから英語で 「cats and dogs」は、洪水になるほどの土砂降り…… 猫と犬の両者が揃えば、“途轍もなく(unusually)” 吹き荒れるのですね。
  非常に古風な表現ですので 私たちは口にできませんが、道化師や庶民が唱えると 本当に猫や犬が天から降ってきたリ、溝に死体が転がっていたりするパロディとしては、よく見聞きします。 また、売れ残り品の詰め合せや 投機性の高い有価証券など、“途轍もない” 安い値がついた時にも使われます。「持ってけ泥棒!」みたいな……。
  因みに、嵐の神オーディンは ローマ神話の商業神メリクリウス(⇒水星)と同一視されたため、フランス語の「Mercredi」を 英語では「Wednesday(オーディンの日)と呼びます。 水曜日は商売繁盛をまつる日? それとも荒れるイメージなのでしょうか? 昔は斎日とされ、デパートや高級店はお休みでした。
◆ 英国人・ドイツ人が描いた嵐や暴風雨の絵があると、どこかに猫や犬が描かれていないか、店の看板などに “cat” や “dog” と書かれていないかを探してみるのも楽しいです。 きっと見つかるし、そこを指差せば、周りから笑顔が集まります。

親の脛をかじる
  学生たちが就職活動で飛び回っていますが、自分の夢にマッチした勤め先に出会うのも容易ではありません。 昨年度の学部卒業生の就職率は、日本が97.6%(文部科学省 調べ)、中国が91.0%(麦可思研究院 調べ)だったそうです。 中国語の 「[ロ+肯]老族<ken3lao3zu2>」は、英語の 「NEET(就学・就労・職業訓練のどれもしてない)の意味。 「ロ肯」は 骨付き肉や果実、トウモロコシ等に かじりついて食べることで、「ロ肯書本<ken3shu1ben3>」(猛勉強する)という表現にもなります。
  日本語の “親の脛をかじる” に最も近い英語表現は? と何人かに聞いていて、「sponge on his parents」という言い方に出会いました。 精神的に従属しているわけではないけど、生活費や学費、食べ物等を平気で “吸い取っている”…… 欧米の感覚では “飼われている”状態ながら、本人は自立した気になっているというわけです。 本当に自立してみれば より良い生活も人生設計も可能になるのですが、本人がそれを理解できない理由を 外国人に説明するのは苦労します。 「parasite」ですら 「自分は今、厄介者だなぁ」という自覚を持つのが、国際標準ですから。
◆ 中国の若者たちは、自立する意味を理解した上で 「親に援助させてあげている。義理は次世代に返せばよい」と考えています。 「老いた親を養う」という儒教精神は、消滅したようです。
◆ 「蟻族<yi3zu2>」(都市部で安定的な職を得られない大卒者たち)という用語もあります。 その都市の出身なら親と同居ができますが、地方出身で大学卒業後も故郷に戻らず 職を探し続ける者も多いのです。 一人っ子なら、田舎の家族は 「失独(者)<shi1du2(zhe)>」と呼ばれかねません。


日本のあちこちが買い取られる?
  過激な表現と思われるかもしれませんが、日本には既に 外国人がたくさんいて、森林・島だけでなく 都心の優良マンションまで買い漁り、日本の技術を担う中小企業(薬品・化学メーカー、部品メーカー等)の買収も かなり進んでいます。 こうした経済的な侵略・絡め取りに対し 手をこまねいてみている政府・自民党は、ひと昔前なら「売国奴」と右翼陣営から糾弾されたでしょう。 ところが今、外国人(注:外国の政府ではありません)が日本の “有望物件” を買い漁っていることに警告を発すると、外国人だけでなく右翼陣営からも攻撃されます。 なぜか報道し難い状況に追い込まれているのです。 儲けているのは誰でしょう?

第72回グローバル化社会の教育研究会(EGS)の開催
  11月14日(木) のEGS研究会は、玉川大学の江里口 歡人先生(日本国際バカロレア(IB)教育学会 副会長)に話題提供をお願いしました。 最近 「自己肯定感(Self-esteem)」という用語をよく耳にしますが、公立校教員の間で流行語のようです。 他方、私立校教員の間では 「メタ認知(自分が認知していることを客観的に把握し 制御する力)が注目されています。
  いずれも公教育の目的ではあるものの、20世紀末のわが国では見失われていました。 それが現在、「グローバル人材育成」の必要性から再認識され、リベラル・アーツやIB教育などに取り組む風潮が高まっているわけです。 こうした経緯をずっと眺めてこられた江里口先生から、下世話に語られる 「文科省のSGHが終了したら、IBが目玉」といったことなどについて ざっくばらんなお話しを伺い、それを素に話し合いたいと思います。
◆ IBを導入したい学校では何が障害なのか、あるいは 既に導入した学校で何が起こっているか、今後の課題は何なのか等について、オフレコ前提の本音の議論が楽しみです。

10月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
朗読ユニットぽらりす 第9回朗読講演--- 10月6日(日)、於:北とぴあスカイホール(東京都北区)。 テーマ 『宮沢賢治と遊ぼう』。 ※ 第一部の朗読指導は NHKの岩井正アナウンサーが 都内の中学生を相手に手解き。 休憩時間には、下町祭座が登場します。
日経×TECH EXPO 2019 --- 10月9日(水)〜11日(金)、於:東京ビッグサイト。 『デジタルものづくり--- ものづくりデジタル化の現状と今後』=木谷 昭博(マツダ 執行役員)、Sascha Mannl(独シーメンス副社長)ほか。 ※ ダイキン工業の峯野義博さんの『グローバル戦略と未来』も興味深いです。
日本マレーシア協会セミナー--- 10月16日(水)、於:国際文化会館(東京都港区)。 講演 『日マ関係の現状と今後』=二瓶 大輔 (外務省南東アジア第二課長)。 ※ 海外から注目されている青少年研修プログラムや熱帯雨林再生活動などの報告も、聞く価値があります。
第2回 医療IT EXPO [東京]--- 10月23日(水)〜25日(金)、於:幕張メッセ(千葉市美浜区)。内容= 医療情報システムなどのほか、人材育成、マネジメント、地域包括ケアの推進、クリニック向けなど最新動向や事例の150講演。 ※ 医療界を目指す生徒の職業観教育にも 有意義。
獲得研 10月公開講座--- 10月26日(土)、於:日本大学文理学部 。 テーマ 『異なる物をつなぐメディアとしてのアート』=三澤 一実(武蔵野美術大学)。 ※ 美術作品の対話的鑑賞…… 作者が作品を教室に持ち込み、生徒が作者と対話しながら作品鑑賞を深めいくという試みです。
★ 台湾スタートアップ・ヒアリング報告会--- 10月31日(木)、於:南部労政会館(東京都品川区)。 ※ 9月に ASIA-NET有志が行った現地視察の報告会で、政府系支援機関の本気度や 台湾のAI技術(最先端と実用先端の境界)、信頼できるパートナー探し…… などの話題が豊富。
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◆ 「思秋期」「四十雀 老いの中へと…」などと言いますが、実際には「不惑」どころか、惑いの真っ只中です。 上記の芭蕉の句も、「今まで学問で学んできたことの何十倍、何百倍もの “知らないこと” があるのでは…?」と、 学びの途上を 謙虚に噛みしめているのです。 死ぬまで 勉強ですね。

◆ 日本で 今年の新卒者に 「今の会社で何年働くと思うか」を聞いたところ、「3年以内」が22%、「5年以内」を加えると37%もあったとのこと (マイナビ調べ)。 「定年まで」の21%を上回っており、「第二新卒」が死語になる勢いです。 「石の上にも3年」の意味も 変わってきました。

◆ 『月刊 海外子女教育』10月号の特集は 「日本人学校の特別支援教育を考える」「現地の文化の向こう側」です。私がクアラルンプール日本人学校に赴任した25年前、特別支援教育の先生もいて、ずいぶん勉強させてもらいました。 その先生は現地社会に飛び込む趣味もあり、危ない処にも結構行きました (笑)。
会員校訪問は ドルトン東京学園……「ドルトン・プラン」は 大学の教職課程で習っています。私は40数年振りに勉強し直しましたが、輸入から百年を経て、やっと時宜を得たのですね。 それと、この学校でも 「House」が導入されます。

◆ 関西帰国生親の会かけはしの『帰国生への学校案内《関西》2020』が刊行されました。 帰国ママの突撃取材を元に編集されるもので、今年は36冊目…… 今回、各校に「言語力と思考力」について取材した報告は有益です。 なお、海外子女教育振興財団の『帰国子女のための学校便覧』は予約受付中 (今月下旬刊行)

◆ 第9回全国中学生英語ディベート大会(9/22、於:中京大学)は、渋渋vs渋幕の優勝決定戦に。 3位は江戸川学園と静岡県立浜松西。 5位は広尾学園、6位は筑波大駒場でした。 15位以内が僅差の大接戦…… 今後が楽しみです。

◆ 10月12日(土)、ジャカルタ日本人学校開校50周年記念式典が行われます。 開校時のテベット校舎を提供してくださった魚住竜吉さんのお子さんたちも招待されるそうです。 「水を飲む時、その井戸を掘った人を忘れてはならない」という諺がありますが、魚住さん一家には 本当にお世話になりました。 なお、4月にジャカルタの東郊外に開校した チカラン日本人学校は、在学生が60数名おり、夏休みに新校舎も完成しました。

◆ 10月17日は AFS留学生の服部剛丈くん(愛知県立高校2年) の命日です。27年前、事件の速報を聞いた時「ついに起こったか…」と衝撃を受けました。事件が多発するハロウィンの2週間も前のことでした。彼がラガーマンだったこと、ホスト兄弟の名が「WEB」(水掻き/蜘蛛の巣?) だったことも思い出されます。

◆ 「最近、とんと物忘れが……」と言っていたら、友人から 「それよりも、締まりのない話を 何分も喋り続けるほうが問題よォ」と返されました。 「物言えば唇寒し秋の風」も芭蕉の句でしたねぇ。

◆ 猫&犬どころか 台風が来襲…… 台風19号の被害は甚大でしたが、ラグビー日本チームの快進撃には大いに元気づけられました。 リチウムイオン電池開発の功績で ノーベル化学賞が吉野彰さんたちに授与されたことも、元気が出ます。 地道な努力と夢を信じる力の凄さには 敬服しますね。

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【2019-9月】

新学期が始まりました。
  長い休暇が明けて数週間で、生徒たちは異様に感情の起伏が激しくなる時期を迎えます。 一種の 「五月病」ですが、教師の側にも疲れが溜まる時期ですので、お互いに声を掛け合って 休養を取る必要があります。 しかし、教員に月45時間の超過勤務の上限が設けられた途端に、文科省は 「いじめや学級崩壊への対応を理由とする場合は 『特別の事情』とみなし、超過を容認する」と発表しました (4/11)。 民間企業と同様に 「臨時的な特別の事情があった場合に限り、月100時間を超えない範囲まで延長できる」としたわけです。
  昨今再び、いじめや学級崩壊が増え始めたのは、親の働き方や家族のあり方が以前とは全く異なっているのに、教職員数が不足しているからです。 まして、嘘ばっかり言って自己保身しか考えない官僚体質を 社会のあちこちで見せつけられると、軟な教員なら 事なかれ主義の惰性に流されてしまうでしょう。 そうして、ますます真面目な教員への負担は増していきかねません。 子ども達の大半が通う公立学校で それが蔓延してしまうと、私立学校の教育まで おかしくなってきます。

「心配」 はマレー語?
  中国語で “心配・気がかり” を表す言葉は、「担心<dan1xin1>」「発愁<fa1chou2>」など実にたくさんありますが、「心配」はありません。 日本に漢字が伝来する以前からあった言葉に 「心配」の字を当てたもののようです。
  他方、マレー語に「simpai」という用語があります。 樽や桶を作る際、その周りに籐で編んだ輪(枠、タガ)を嵌めるのですが、「simpai」は その輪のことをいいます。 仲間や組織の結束力を高め、幾多の負担や荷重にも耐えられるよう、予め補強しておくものです。 そのことから、特定の仲間に過度の負担がかからないか…… もしあれば予め支援しておこう、という相互補助の感覚も生まれます。 お見舞いや餞別なども その類で、好意を受け取る際の口上は 「ご心配いただき恐縮です」 といった言い方になります。
◆ マレー語の「tagak」は "耐える、((危険・困難に)立ち向かう" あるいは "抑制する、(仕事を)滞らせる" 意味ですので、日本に伝わった時に 樽や桶を外側から締め付けるイメージに変わったのかもしれませんね。

第71回グローバル化社会の教育研究会(EGS)の開催
  9月26日(木)、いつもの聖学院中学・高校(東京都北区)で開かれます。 話題提供は 茗溪学園の和田利一先生にお願いしました。 テーマは 『茗溪学園におけるHOTSの実践報告--- 学校改革のプロセスの中で思考スキルの育成を担う』です。 2020年度大学入試改革を控え、「グローバル人材の育成」を誰もが口にしますが、あるべき学習者像に向けた実践方策は 多くの学校が未だ手探りの域を出ません。 そうした中で、「HOTS (Higher Order Thinking Skills)」を導入して見事な成果を上げているのが 茗溪学園です。 今回は、松本輝彦先生と共に指導に当たられている和田先生から、永年の実践で得られた成果や見えてきたことなどをご報告いただき、それを素に話し合いたいと思います。
◆ 「HOTSって何?」と質問を受けます。 それだけ 「リベラル アーツ」自体が理解されていない証拠ですが、順心女子学園を会場にして 初めてHOTSのシンポジウムが開かれてから14年…… 公立学校が全然関心を寄せてくれないのが残念です。 ご興味ある方は、まずは提唱者の「松本輝彦」先生で ネット検索してみてください。

ゴダイヴァ夫人を偲ぶ
  9月10日は、Lady Godiva の命日とされています。 11世紀、フランスの封建領主ノルマンディー公(ウィリアム1世)が イングランドを統一していく時期、コヴェントリーの領主夫人でした。 街を重税から解放するよう夫の伯爵に再三 頼んでいたところ、「全裸で馬に乗り 街の端から端まで行ったら、お前の願いを叶えてやろう」 と理不尽なことを言われます。 夫人(当時 50歳?)は 街の人たちに 「見ないでね」と根回しし、全裸で一気に街を駆け抜けて 減税を実現しました。 「Godiva」は “good gift” の意味ですが、夫の評判まで上げてみせたわけです。
  史実かどうかはさておき、「Lady Godiva」は “男の愚行を諫める夫人”の象徴でして、17世紀以降は 欧州全域で芸術作品のモチーフとされたり、行政への請願活動で一見裸に見える衣装を着けた人が馬に乗る風習となったりしています。 また、彼女の裸身を ただ一人 “peep(覗き見) したトーマスという男がいて、「Peeping Tom」は “覗き魔” を意味するようになります (日本語では「出歯亀<デバカメ>」といいますが、その起源は皆さんのほうで…)。 ともあれ 「Godiva」は、美味しいベルギー・チョコレートのブランドとして、私たちに身近な存在ではあります。
◆ 故 野村沙知代さん(プロ野球の野村監督(当時)夫人)は、馬に跨ったヌード写真でも注目されました。 「好い齢をして(醜い)」と散々批判されましたが、日本の報道関係者は、ゴダイヴァ夫人のことを全く知らなかったようです。

「日式〇〇」の看板が身近に
  中国やアメリカ、最近は欧州でも、「日式寿司」「日式ラーメン」等の看板が目立つようになってきました。 カレーの「CoCo一番館」、牛丼の「吉野屋」、ラーメンの「蘭池」等は、マスコミでも取り上げられていますね。 「Japanese Restaurant」と英語でも描かれているので、周辺の住民は "日本料理" だと思って食べていますが、私たちからすると 驚く代物が少なくありません。 オーナーも調理人も 日本人ではないので 仕方ないのですが、何か言うと 「“Nippon” とは書いていない」「“日本風” にアレンジしたほうが売れるので、そうしている」との答え……。
  最近、東京でも 「日式〇〇」の看板が見られるようになりました。 中国本土にはない(or 似て非なる)“中華料理” を楽しんできた日本人ではあるものの、マヨネーズをタップリかけた握り寿司や 焼肉寿司などは、未だ敬遠してしまいます。 なお、これがマレーシアやタイ、ベトナムなどの料理となると、他の国の人が独自の味付けにアレンジしていても、日本人には判別不能です。 「東南アジアの料理は苦手」と言っている人に よく聞いてみると、この種の 「△△料理」を食べている方が少なくありません。 是非 その国に行って、地元の人たちが食べている “本場もの” を味わって欲しいと思います。 それにしても 教育現場では、これらの問題を どう扱えばよいでしょうか?
◆ 電化製品の「Pensonic」「SONNY」「Penwood」などは、「騙された方が悪い」と言われます。しかし、 "なんちゃって品" が大多数になると "純正(genuine)" の製造者に批難が寄せられ、ブランド価値も下がります。

日本で簡易宿所が増えています
  昨年9月、建築基準法の一部改正(平成30年法律第67号)があり、今年6月に施行されました。 目玉は “空き家の活用” で、戸建住宅等(延床面積 200u未満で3階建て以下)を他の用途とする場合に、在館者の避難措置を十分に講じれば よいことになっています。 つまり、従来は 「100uを超える建物」をホテル・旅館・簡易宿所に用途変更する場合、市/区役所に確認申請が必要でしたが、200u未満は不要となったことで、空き家を 「民泊」ではなく 「簡易宿所」とできるわけです。
  「民泊」は申請手続きが煩雑なうえ、年間180日しか営業できず、各自治体が更に 「年間60日」などに制限することもできます。 ゴミ処理・騒音等で 近所との紛争も絶えません。 一方、「簡易宿所」は旅館業法に定められていて、最近は 「カプセルホテル」「ホステル」「ゲストハウス」等と呼ばれます。 ホテル・旅館よりも規制が緩く、風呂・トイレの共用や一室に複数の客が滞在することも可能なのです。 宿泊客にとっても、スタッフが常駐していてくれる方が安心です。 昨年9月以降、ビジネスホテルや旅館までが 「簡易宿所」に事業展開 orシフトを進めています。

「シングリッシュ」 に要注意
  『月刊グローバル経営』9月号に、「シングリッシュ」(シンガポールで飛び交うピジン英語の紹介がありました。 この通信でも 先月、「マレー語の文法に 英語の単語を載せて話している」と説明したばかりです。 しかし、華人や中国人たちが マレー語やピジン英語に中国語を混ぜることは、東南アジアの人達は不愉快に感じています。 その最たるものは 「<le, lah>」で、強調したい時や文語的に言いたい時には <liao> と発音します。
  これはマレー語では、(1)「sudah」 既に起きた動作やできごと(例:〇を買った/買ってしまった)、(2)「kalau…」 予期される動作や仮定法(例:もし雨が降ったら〜)、(3)「sudah di ganti」 状態の変化(例:頭が白くなった)、(4)「lebih」 状態が一定程度異なる(例:この靴は(私には)小さい)… など多様な意味です。 さらに、軽く言う <le, lo, lor, low, leh> などは、(5)「sudah mulai」 状況の変化や新しい事態が発生(例:歳をとった。風が吹き出した)、(6)「…saja」 これから起こる事態の変化or催促(例:来いよ!)、(7)「jangan…」 制止(例:もうするな)などの意味でも使われますので、東南アジアの人々や日本人の耳には 嘘つきか ペテン師同然に聞こえます。
  だから 互いの平和のためには、英語やマレー語に 中国語、とくに 「了」を混ぜないように指導するのが大切で、職場や学校を明るく活気づかせる基本なのです。 それを怠れば、「中国語の素養もないと、英語が通じにくい(=仕事ができない)」ということにもなりかねません。
◆ 華人の話す英語・マレー語に含まれる「了」や「不<bu>」、さらに「完<wan>」が解る方は立派です。 しかし、解るからといって 使ってしまうと、周りの人からは嫌われますし、尊敬はされません。"ルー大柴" 同然に見られることを 想像してみてください。

9月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第4回 日本国際バカロレア教育学会全国大会--- 9月1日(日)、於:早稲田大学(東京都新宿区)。テーマ 『国際バカロレア教育研究の果たすべき役割と可能性』。 ※ 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた動きも本格化します。
文化庁日本語教育大会・東京大会--- 9月7(土)・8日(日)、於:文部科学省(東京都千代田区)。 テーマ 『見せましょう! 日本語教師の底力--- 広がる日本語教育と人材の活躍の場』。 ※ 入管法の改正施行や「外国人材受入れのための総合的対応策」の公表など状況は変わっています。
いのちの博物館セミナー6--- 9月14日(土)、於:麻布大学いのちの博物館(相模原市中央区)。 テーマ 『3Dプリントレプリカに触れる--- フォトグラメトリーの世界』=森 健人(国立博物館)。 ※ 動物の骨の3Dレプリカに触れるイベントです。
若者の就労を考えるシンポジウム--- 9月14日(土)、於:今池ガスビル(名古屋市千種区)。 テーマ 『若者就労のおける成功と失敗の法則--- 人に仕事を合わせるとは』。 ※ 若者がなぜ企業で長く働けないのか? 若者と企業の相互成長について考えます。
第71回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 9月26日(木)、於:聖学院中学・高校(東京都北区)。 テーマは 『茗溪学園におけるHOTSの実践報告--- 学校改革のプロセスの中で思考スキルの育成を担う』=和田 利一 (茗溪学園 留学センター長) ※ 将来グローバルに活躍できる人材の育成orあるべき学習者像に向けた実践方策は 傾聴に値します。
MOF講演会「絶滅の危機にあるオランウータン」--- 9月28日(土)、於:砧区民会館(東京都世田谷区)。 『類人猿研究と私』=鈴木 晃(MOF理事長)。 ※ 第二部のミニ読書会では『オランウータンの不思議社会』(岩波ジュニア新書)をテキストに、熱帯雨林保護について考えます。
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◆ 日本の学校は2学期ですが、海外の現地校や国際学校のほとんどは 新年度ですね。 大人の想像以上に、子ども達はウキウキ楽しく登校しています。 その楽しさが大きい分、精神的には負担も大きくなり易いので、気をつけて見守りましょう。 とくに 9月下旬頃が要注意です。

◆ 上海補習授業校の 『平成30年度活動記録集』をいただきました。 昨年度から政府の援助対象校になり 中学3年までできたのかと思うと、感無量です。 6年前の5月、初めて集まった9人の子ども達に絵本を読んであげたのが、つい先日のように思い出されます。

◆ NHK朝ドラ『まんぷく』で 意匠侵害が何度も “話題” になりました。 「日本人の恥」と言うのは簡単ですが、日本の製造業のほとんどが、他社の人気商品を分解・解析し、真似る(=学ぶ) ことで発展してきています。 「我々は 後ろめたさを感じ、それなりの節度もあった。奴らには それがない!」という方も…… まあ お酒の場ですので…。

◆ 9月16日は 「マレーシアの日」…… 独立は1957年8月31日ですが、6年後にシンガポール、サラワク、サバが加わって 「マレーシア」が成立した記念日です。 2年後にシンガポールが分離して(華人英語が原因?)ケチがつきましたが、2010年から祝日になっています。

◆ 「休息了!<xiu1xile>」(休め!) は、その日の仕事が終わった時にも使いますので、“止め!” と解したほうが賢明でしょうか? ある万引きグループも、目的の商品を盗って店外に出る合図として SNSにそう書いていました。 和平交渉も休戦から始まりますし…。

◆ 『月刊 海外子女教育』9月号の特集は、「海を越えた津軽三味線」と「海外でできた友達」です。 後者は、海外にいる子ども達からの作文で構成…… 間のコメントを 「です・ます」調にする挑戦は どうでしたでしょうか? 会員校訪問は 開智小学校(総合部)……「4-4-4制」や 欧米の「House」の感覚に 改めて焦点を当ててみました。 50年前、「Comprehensive School」を どう訳すべきか議論していたことも、懐かしい思い出です。

遠山 顕さんが22日(日)、外国語保持教室の親子向けの特別講演会に登壇されます。 半世紀前 既に “駄洒落のプロ” でしたが、「Rhyme+Alliteration」の地道なケンサンがあってこそ。 一昨年の大病が嘘のようなご活躍に 敬服します。 He's gotten into his stride!

◆ 今年4月、韓国の国防部が 「日課時間以降の兵士のスマホ使用許可」を全部隊に発令、兵士達は 平日の午後6時〜10時、休日は午前7時〜午後10時の間 スマホが使えるようになりました。 外部とコミュニケーションが取れ、閉塞感が解消された結果、軍隊内の暴力沙汰が激減したそうです。 反日教育の誤りにも気づいてくれることを祈ります。

◆ 虫の音も聞かれるようになりましたが、残暑は まだ続くようですし、台風や集中豪雨も 次々とやってきます。 皆様 お身体を大切に。

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