子女教育ニュース

      担当: 国際教育相談員 小山 和智
海外人事や教育関係の実務担当者の皆様に配信しているニュースの一部を、
一般の皆様にも公開します。 教育相談などについては 「教育相談から」を。
2020年 4月3月2月1月。 2019年 9月〜12月5月〜8月1月〜4月。2018年 9月〜12月5月〜8月

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【2020-4月】

4月は モチ米の季節?
  日本の4月は、新しい年度の始まりです。 様々な門出を祝うことが多く、お餅や赤飯・お萩などを食べる機会も少なくありません。
  東南アジアには まだインディカ種の赤っぽい原種が残っていますが、赤い色は “邪気を払う/魔除け”menyelamatkan=selamat)とされ、神仏に供えた後に食して ご利益に預かる風習が、稲作文化の基本でした(⇒ 新嘗祭)。 主成分は 「アミロペクチン(amylopectin)」で、わが国では17世紀ころまで食べられていたようです。 ところが、「アミロース(amylose)」を多く含む粘り気のない “ウルチ米(ジャポニカ種)の生産効率が評価される一方、ウルチ米の優勢遺伝子が モチ米の劣勢遺伝子を駆逐していきます。
  バイオテクノロジーでは 原種の染色体の維持保存が基本中の基本で、イネの前近代的な品種改良においても、本能的に赤米の原種が尊重され、あるいは祭儀用に、極く一部で生産されてきました。 したがって、わが国庶民の 「赤飯」は、モチ米と小豆(orささげ=インゲン豆の一種)を一緒に炊いて 赤く着色する習慣に変わっていきました。 地方によっては、小豆・ささげも贅沢品ですから、別の豆や芋を混ぜます。
◆ 東南アジアで 餅つき大会をする場合、現地調達した 「モチ米」の中から、予めウルチ米を一粒ずつ取り除く作業が必要です。 赤飯だったら そのまま炊けば好いのですけど、ウルチ米が混じっていると 餅にはならないからです。 日本人会婦人部やPTAの皆さんには、大変お世話になりました。

“国難”に直面して考える
  私は9年前、「3・11」の2週間後に 上海日本人学校に赴任したのですが、今回の新型肺炎騒ぎを契機に いくつか思い出しました。
  一つは、東京にある多くの大使館が ビザ申請で預かった旅券を抱えて 関西の領事館に避難してしまい、「手続きは 〇〇の領事館で」と発表したこと…… ビザ取得代行業者は困惑してました。 幸い 中国大使館は東京で手続きできたものの、一時帰国などの手続きで殺到した中国人で ごった返していました。 また、中国大使館の二等・三等書記官たちは、震災の翌日から被災地(福島・宮城・岩手)を巡って 「自国民の安否確認と避難支援」をやっていました(放射能汚染の危険が判明した後も、しばらくの間)。 日本の外交官が ここまでやってくれるだろうかと、自問した次第です。
  上海に赴任してから衝撃だったのは、日本のテレビ各局の報道の姿勢です。 どの番組のインタビューでも 「あなたの不安は何ですか?」 「○○は不安ですよね?」の質問が 必ず最初にくる…… 「今、一番困っていることは何ですか?」と聞くならまだしも…。 「住民は 〇〇の不安を抱えています」の報道の一辺倒には、腹が立ちます。 それは、今回の新型肺炎でも同じです。 社会の不安を煽る報道は テロ行為と同類で、結果として 全体主義や監視社会へ進む危険を孕んでいます。

ユヴァル・N・ハラリの特別寄稿
  イスラエルの歴史学&哲学者ですが、新型肺炎について 米版TIME誌に寄稿しています(3/15付)
「今、人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウィルスのせいだけでなく、人間同士の信頼の欠如のせいでもある。 感染症流行に打ち勝つためには、人々は科学の専門家を信頼し、市民は公的機関を信頼し、各国は互いを信頼する必要がある。 この数年間、無責任な政治家たちが、科学や公的機関や国際協力に対する信頼を、故意に損なってきた。 その結果、私たちは現在、協調的でグローバルな対応を奨励し、組織化し、資金を提供できるグローバルな指導者がいない状態で、この危機に直面している。
 (中略) 今や外国人嫌悪と孤立主義と不信感が、ほとんどの国際システムの特徴となっている。 信頼とグローバルな連帯抜きでは、このコロナウィルス大流行は止められないし、将来、この種の大流行に繰り返し見舞われる可能性が高い。 しかし、あらゆる危機は好機でもある。願わくは、現在の大流行が グローバルな不和によってもたらされた深刻な危機だと、人類が気づく助けとなりますよう。」

「タイタニック」といえば…
  4月14日は 豪華客船 「RMS Titanic」が沈没した日(1912年)です。 「Titan(s)」は ギリシア神話に登場する巨神たち…… ウラノス(天)とガイア(地)の間に生まれた12の神々で、ゼウス率いるオリュンポスの神々と 10年間の壮絶な戦いを繰り広げました。 だから、「titan」は“巨大な・強靭な”という形容詞になり、元素の 「Titanium(チタン)も 非常に優れた強靭さ・耐久性を表わすのですね。 スポーツチームや艦船などの名前にも、好んで付けられています。
  しかし、「Titania」は 中世の伝奇小説や シェイクスピアの 『真夏の夜の夢』に出てくる 妖精の女王です。 夫である妖精の王 「Oberon(読心術やテレポート術を持つ)が 身長3フィート(91cm)の小男だったので、戯れに “女丈夫”の名前にしたのでしょうか?
  因みに、「Tithonus」は トロイの美王子…… 暁の女神エーオス(アウロラ)に愛され 不死の命を貰ったものの、不老も頼むのを忘れていて、老衰して醜い姿になります。 キリギリス(grasshopper)に変身させてもらっても、遊んで暮らす性格は変わらず…(?)。
◆ 「tetan」は “筋肉の痙攣”を意味します。 その最も酷い病気が 「Tetanus」(破傷風)です。 日本で2012年まで使われていた 「DPT」三種混合ワクチンの "T" は 破傷風でした。

「全学部統一入試」 という用語
  今年は よく聞きました。 一回の試験で その大学の複数の学部を受験できる入試で、受験料も割安になっているとのこと。 「その大学なら どの学部でも好い」という場合には、ありがたい制度です。 また、例えば 「MARCHの法学部・経済学部の どこかの学部に入りたい」という受験生は、5回の試験で10学部に挑戦できるわけです。 「専攻は大学に入って考えたい。入試よりも転学/転部試験のほうが容易だし」と考える子にも、大学選択が楽です。
  逆に 大学側にとっても、潜在需要を掘り起こせます。 例えば、地方の某受験者が 東京に来てこなせる試験日数が3日だけとした場合、「3つの大学の全ての学部に挑戦できますよ」という誘いの効果は抜群。 受験者総数を2〜3割増やすことすら可能なのです。 ただし、実際に入学してくれる確率は 下がるかもしれません。 また、各学部を受験する場合に比べ 合格ラインが高めになってしまう傾向も、指摘されています。
◆ 今年は 早慶上理、MARCH、日東駒専も “不振”だったとされます。 その理由には、文科省の定員厳守指導、推薦・AO利用者の増加、次年度の不透明な入試改革を回避したいという心理などが挙げられてます。 受験者数を “人気度”と誤認させかねない報道の仕方も 問題なのでは?

新型肺炎で 緊急事態宣言を発令
  安倍首相が7日(火)、発令しました。 国民の間に 「早く出して!」という空気が熟するのを待っていたのです。 しかし、「どういう条件をクリアすれば、緊急事態宣言を解除できるのか」 は、どこにも明記されておらず、誰も明言していません。 また、前日の東京都知事の記者会見を見ていると、記者の中には 「いつ宣言するんだ?」 「どういう内容なんだ?」と質問する者もいて、宣言の主体が誰なのかを解っていない=法律を全然理解していないことに、唖然としました。
  緊急事態宣言で最も大事なのは、国民を委縮させないことです。 国民の不安を煽ることで宣言発令に“助力”してきた報道のあり方も問題ですけど、宣言が出されることによる功罪を冷静に分析し、努力目標を掲げて 国民に冷静な判断と行動を求める姿勢がないのが残念です。 懸案のPCR検査などの件数は 圧倒的に少なくて、全体の感染実態が把握されてないことも、宣言解除の大事な判断基準がないことになります。 また、緊急の経済対策は 事業規模が108兆円、財政支出が40兆円だそうですが、その資金は 「赤字国債の発行」 「年金基金の投入」という 次の世代に負わせる借金です。

ムスリムのラマダンが始まります。
  イスラム暦9月の 「ラマダン(Ramadan)」は 「断食月」と呼ばれますが、正しくは “斎月(Bulan Puasa)”(心身を慎み 神仏と向き合う月間)です。 昼間の飲食・喫煙等を我慢することのみが注目されて、敬虔な内心の動きが見逃されています。 中国系の人が 春節(旧正月)の直前一週間は 素直で人格も丸くなったと 私たちが感じるのも、道教の “斎事期間”だからですが、ムスリムは それが1ヶ月なのです。 キリスト教の 「四旬節(Lent, 大斎)」は 46日間ですけど……。
  今年のラマダンは、インドネシアでは 4月23日(木)〜5月23日(土) と発表されていますから、公式の 「断食明け大祭(Idul Fitri)」は 5月24日(日)からです。 隣のマレーシアでは、ラマダンは 4月24日(金) からとされていますが、22日(水) の日没時に 新月が目視できないと予測しているのです。 しかし、今年は新型肺炎の異常事態で、何が起こるかわかりません。 海外にお住まいの方には、最寄りのアメリカ大使館のWEBサイトも 毎日確認することをお勧めします。
◆ インドネシア政府は 5月22日(金)と26日(火)・27日(水)を 有給取得奨励日としており、また今年は、21日(木)が 「キリスト昇天祭(Kenaikan Isa Al-Masih)」の祝日ですので、実質的に 21日(木)から7連休です。 日本人学校は そんなに休めるでしょうか?

『子どもの食と栄養』が刊行される
  「根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine:EBM)」は、良心的に・明確に・分別を以って 最新・最良の医学知見を用いる医療のことですが、「何をどう食べたら いちばん健康的で長生きするか」という、それまでの栄養摂取から研究することは 「栄養疫学」と呼ばれます。 3月末、高知大学 客員教授の 青木(吉長)三惠子さんの編著 『子どもの食と栄養 「生きる力」を育むために』(講談社)が刊行されましたが、これも栄養疫学。 炭水化物ダイエットに関するWHOの研究成果や 『日本人の食事摂取基準 (2020年版)』(厚生労働省)などを紹介しながら、乳幼児期に必要な正しい食の知識と経験を手解きしてくれる “ママの教科書”です。
  「日本人の食と健康で最大のリスクは食塩摂取過多」 「食育版『孟母三遷』の提案」 「温かい雰囲気での食事の大切さ」などから、アレルギーや 「妊娠期間〜満2歳までの栄養」に関する最新の知見まで、実践的で読み易くまとめられています。 女性の感性で捉える環境問題、腸内細菌、食料問題・備蓄などコラムも多彩。 「食事作りは ものすごく簡単なものとしました。必要なことは早く泳ぐことではなく 落ちた時に助かる着衣水泳だという考えで…」(青木(吉長)さん)とのこと。 核家族にとっても安心ですね。 新生児誕生の贈物としても お勧めします。
◆ 青木(吉長)さんからのメッセージ:「今の子ども達は、世界人口の80%以上がアジア・アフリカの人になる社会を生きていきます。 皆さんに 世界に目を向けてほしいので、アジア・アフリカ・南米などの子ども達の状況も紹介しました」

1975年頃の英国を思う
  EU離脱を巡っての迷走で、1970年代の英国を思い出しました。 当時は、景気低迷と多くの社会問題を抱えて のたうち廻っていたのです。 やっと欧州共同体(EU)に加盟させてもらうものの、£1=700円になる(以前は 1,200円)など 誇りを挫かれていました。
  クイーンの名曲 『We Are The Champions』が生まれたのも その頃で、「我々は 王者だ!」は救いでした。 「the+複数形」ですから、敗れたチームやサポーターにも 「お互いに王者だぞ!」とエールを贈っています。 その意味では、その場にいる人全員に贈られる 「Anthem(讃歌)なのです。 しかし、当時 「GNP世界二位!」に高揚した日本人は (単数形の)“勝った者”の意味だと思い込んでいて、「ugly」(醜い)と揶揄されました。
  なお 1975年には、英国の 「クイーン」が 次々と来日しています。 3月に豪華船、4月にロックバンド、5月に女王陛下ご自身…。 4月17日、羽田空港に クイーンのファン 千人以上が出迎えますが、「女王陛下を見られる」と誤認した野次馬も同じくらい集まり、大混乱でした。
◆ 英国エリザベス女王の演説(4/6)……「私たちは これまでも様々な困難に直面してきましたが、今回は これまでと違います。世界中の国々と一緒になって、同じ取り組みに参加しています。科学の目覚ましい躍進と直感的な思いやりによって 病気を治すために…。」 それぞれが “自己規律や 静かながら明るく固い意志、そして仲間を大切にする気持ち”を大事にして 頑張りましょう。

4月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
東京家政学院「学生成果展・教員研究成果展」--- 4月24日まで(休館:土,日,祝日)、於:生活文化博物館(東京都町田市)。 ※ 常設展示の衣服類・装身具類・工芸品類など各種の民俗・歴史資料も必見です。
第19回日本旅行医学会 大会--- 4月11・12日(土・日) 【中止】
世宗学堂 中高生のための韓国語講座 2020--- 4月11日から 隔週土曜 【6月15日〜に延期】
第74回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 4月16日(木)  【9月以降jに 延期】 
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◆ 政府の対応が遅れ気味なのは 仕方ありません。 限られた 「ヒト・モノ・カネ」を配分し直すわけですから、割りを食う人たちも出るからです。 だからといって、政治家や官僚が 自分のポスト維持を優先で考えているとしたら、許せません。 まして 「ワイマールに学べ」の発想は、社会の破滅への道です。

◆ 岩波書店が、藤原辰史さん(京都大学 准教授)の『パンデミックを生きる指針― 歴史研究のアプローチ』を無償公開中! 歴史研究者の視点で 新型肺炎がもたらした世界史的な状況を考え抜いた名文です。

◆ 「学習ピラミッド(Learning Pyramid)」とは “学習定着率”を示す図…… 能動的になればなるほど 学習の定着化が増すことを表わしています。 『月刊 海外子女教育』3月号特集で 新しい 「道徳」の授業を紹介しましたが、全ての教科の学習定着率を上げる効果があるのです。 4月号では 「海外で身につけた学習法」、つまり “アウトプットの仕方”の特集…… 年度の始まりに相応しい話題です。
  4月号の もう一つの特集は 「児童書をつくる人々」。 子どもが自分自身で読み進める本は 一生の宝にもなります。 それが創られる場は “夢の工房”とも呼びたい世界です。 講談社で 『にじいろのさかな』のM・フィスターさんにお会いしたのも、懐かしい思い出です。

◆ 『月刊グローバル経営』4月号特集は 「海外で学校へ--- 海外子女教育の現場」…… 駐在員の視点から見た課題や指針の提示など 勉強になります。 日本人学校では ジャカルタの前校長とバンコクの事務局長の話も新鮮です。 上海浦東校の入江 前校長は、同じ敷地内に高等部を抱えて尽力され、補習授業校も支援してくださいました。 元編集長の 小野豊和さん・横舘久宣さんも お元気そうです。

◆ 「今年の復活祭(Easter)は何日?」とよく聞かれます。 イエスは ユダヤ暦の 「過ぎ越し祭(Passover)」(春分の日の直後の満月)の前日に処刑され 生き返ったとされるので、キリスト教では その直後の日曜に大祭が行われてきました。 西暦で 3月22日〜4月25日の間を動き回ります。 今年は 4月12日(日) です。 「Easter」は、暁と春の女神エオストレ(cf. ギリシア神話のエーオスのこと…… イエスが処刑されて 3日後に復活したことが、この女神のように “夜明け”をもたらすと信じられているのですね。

◆ われらが 中嶌裕一先生が、ICU高校(三鷹市)の校長に就任されました。 待ってました! 多文化共生教育に いっそうのご活躍を期待します。 また、石川一郎先生は 3月末に関西を引き揚げ、聖ドミニコ学園(世田谷区)や湘南白百合学園(神奈川県藤沢市)に…… カトリック系学校の立て直しで 日本中を飛び回っておられます。

◆ 英国のエリザベス女王の演説(4/6) 「私たちは これまでも様々な困難に直面してきましたが、今回は これまでと違います。 世界中の国々と一緒になって、同じ取り組みに参加しています。 科学の目覚ましい躍進と直感的な思いやりによって病気を治すために…」。 それぞれが “自己規律や 静かながら明るく固い意志、そして仲間を大切にする気持ち” を大事にして 頑張りましょう。

◆ 暖かくなると マスクが鬱陶しいのですが、パンデミックを抑制するには必要です。 年寄りや健康弱者を護る意識の大切さを 若者たちには訴え続けましょう。 それでは皆様、ごきげんよう。

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【2020-3月】

ホフステードの6次元モデル
  オランダの行動科学者 G・ホフステード先生が 2月12日に永眠されました。 先生が 「文化のもたらす影響を理解せずに 国境を越えたビジネスに取り組むのは、水に一度も触れたことがないのに 泳げると錯覚することと同じだ」と指摘された頃、外務省に 海外安全相談センターが設置されました。 わが国の駐在員渡航前研修ブーム(1990年代)の際には、私も 企業・学校等に招かれ 異文化研修を手伝う機会が多かったのですが、今世紀に入ると、雇う側が研修させるのではなく 各個人が自らの向上のために学ぶ形に移行していきます。
  ホフステード先生から直接薫陶を受けた 宮森千嘉子さんが、昨年6月 『経営戦略としての異文化適応力』(日本能率協会)を上梓され、「6次元モデル」の実践的活用法を紹介されています。 異なる文化圏の人達と働く時に生じる 様々なトラブルを解決するヒントに溢れたものです。 「6次元モデル」は、いずれの価値観からも距離を置いた 非常に中立的な指針といえます。 「人類の生存は、異なる考えを持ちながら一緒に行動する人々の能力に大きく依存している」(ホフステード先生)…… 私たちの新しい“参考書”です。
◆ 私が実用書として 『駐在員マニュアル』(旺史社 1998年)を書いたのは、東南アジアを理解するため より解り易い事例を紹介したかったからです。 宮森千嘉子さんは、企業研修担当者や日本人学校の教員などのほとんどが、ホフステード モデルを知らないことを嘆かれます。 30年前に関心を寄せた人たちが現場を去った今、わが国の異文化対応力は かなり脆くなっています。

グローバル人材の育成は 待ったなし
  アメリカべったりの追従外交が危ういことは 皆、勘づいているものの、「“アメリカ第一”は外せない」と信じている層も 根強くあります。 もっと困るのは、若い人たちが 「景気が後退するぞ!」等の脅しに屈して、何も考えず 選挙にも行かなくなることです。 こうして日本人そのものが “劣化or溶解”していく事態…… 日系企業の就職試験でも 日本人学生が外国人学生に叶わない状態になっていることを、多くの日本人、とりわけ教育現場の教師たちが まだ解らないでいます。 外国人に伍して一緒に働ける グローバル人材の育成は、待ったなしの課題なのです。 いつまでも 「日本人だけの一斉授業+偏差値依存」の教育観に囚われているのは、“劣化” 以外の何ものでもありません。
◆ 1月末、日本から中国湖北省に送られた支援物資の箱に 「山川異域 風月同天」(別の場所に暮らしていても 自然の風物=心はつながっている)と書かれていて、賞讃と感謝の声が上がりました。 これぞ 異文化コンピテンシーですね。

日本人にあるまじき輩
  10年前、不祥事を起こした某社の広報担当が、記者会見で 「社長は単語数が増えると理解できないので、なるべく区切って質問して」と “お願い”をしました。 本来は 「質問したことだけに 簡潔に答えてください」 と 記者側から言うものですけど…。 そもそも 現場を知らないで平気な “元 秀才”(東大出など)が会社幹部を独占し、数字の上だけで経営ができると思い込む風潮が、経済停滞の元凶なのです。
  日本のトップ企業でも、「社長は現場を知らず、手ぶらで会見に臨んでいた」「その後、必ず原稿を用意するようになり、マスコミにも横柄だと思われないよう練習している」等々…… 「それ、日本の会社じゃないだろう?」と言いたくなります。 2月20日、ロシアは全ての中国人の入国を禁止しました。 中国と親密なロシアの、しかも このタイミングでの全面禁止に驚きますが、わが国の “経済優先”に拘っている節操のなさや 唐突な臨時休校の要請などの迷走には、情けなくなります。
◆ 海外の名品の商標・ロゴ・包装等を模倣し、先に日本で意匠登録して類似品を売る商売は、社長や役員が日本人だとは思いたくありません。 広島の堂本食品の皮むき甘栗 「ぱっくりりん」(1997年発売)は、全国で人気を博しましたが、すぐに “そっくり品”が多数生まれ 大量にコンビニで売られました。 あれも、日本人のやることじゃないと思います。

3月10日は「砂糖の日」です
  3月10日は「東京都平和の日」…… 東京大空襲(1945年)を思い起し、都民ひとりひとりが平和について考える日です。 そして 「砂糖の日」(2014年制定)でもあります。
  マレー語の 「sagu, sago」は サゴヤシ等の木から採った デンプンのことで、米<コメ> と共に マレーの民(Austro-nesian, 南島語族)の大事な食糧でした。 ブドウ糖に転換し易い “甘いデンプン”なので、料理やお菓子の材料にもなります。 大昔、甘味は贅沢でしたから 「(i)sago」は “木から採れる沙/砂”と呼んで珍重しますし、生活を支えることから 「sangga(三脚・台),「segeger(薬用植物)という言葉にもなったようです。
  他方、「takak」は、サゴヤシ等の幹・根を傷つけ/砕いて 水に(デンプンを)晒し出す作業でもあり、「kubik, kibik(爪で剥く)ニュージーランド原産の “キビ”から甘味成分を取り出す作業であったようです。 古代ペルシアのダレイオス1世(BC.500頃)が インドで 「sarkara」と呼ばれる生薬/香辛料を持ち帰ったとされますが、それもこの“キビ”でした。 ヤマト言葉の 「タカ」や「キビ」の語源の一つは、こうしたマレー語ではないかと思われます。 「Takak-sangga」が台湾のことを指すことは 意外と知られていませんが、台湾に住む 「高砂族」は 私たちの耳にも馴染みがあります。 つまり、"砂" 自体に甘味料のニュアンスがあり 「高砂」は縁起物でもあったのでしょう。 中国語で、サトウキビから採れる甘味料が「砂糖<sha1tang2>」と呼ばれたのも…… だとすると、「砂を噛む」も 元は幸せなことだったのかもしれませんね。
◆ サトウキビは 中国語で「甘蔗 <gan1zhe4>」ですが、マレー語の「ganja」(大麻),「ganjar」(報酬) からは繋がりません。東南アジアの「sagu, segeger」が、英語の「sugar」や琉球語の「ugi, uzi」(荻) に繋がる可能性はありますけど。

外国人材受け入れ拡大に伴う問題は?
  昨年1月、経済同友会が「外国人材受け入れ拡大に関する提言」を発表しました。前年暮れに法律は成立したものの、「国会審議では、外国人材受入れの基本的考えや『新たな在留資格』の制度設計について十分な議論は行われたとは言い難い」と言い切っています。 新たに導入された新在留資格と関係が深い技能実習制度については、実習生の失踪が多発し、一部の企業で最低賃金以下で雇用されるなど多くの問題があることが指摘されています。 法改正に期待していた財界としても 看過できない深刻な事態に、技能実習制度の廃止も視野に入れた制度の見直しが必要だと訴えたわけです。しかし、対策は遅々として進みません。
  インドネシアでは 「Pelaktik Kerja Lapangan (PKL)」(現場における技能研修)と呼ばれますが、日本に “研修生”という名の労働者を送り出している機関は、国際研修協力機構(JITCO)の調べで142機関もあります。 一人につき 4千万ルピア(約40万円)の渡航前研修費や諸手続費を徴収するブローカー同然の業者も少なくありません。 技能実習制度を “出稼ぎ”と考える人たちは、銀行や知人から借金して研修生に応募していますが、3年間の研修期間に受け取る給与では その負債を返済できず、“失踪”して稼ぎ続けようとします。 しかし、国内の農家や建物解体業、ホテル・飲食業、クリーニング工場などでは、安い労働力として重宝しており、政治家への献金を厭いません。
◆ 東南アジアから安い人材を呼び寄せる事業は “甘い汁”なのですね。80年前の“徴用工”に暗いイメージが付きまとうのは、こうした利権構造が絡んでいたからです。雇用者が差別的な待遇をしたわけでは ないはずです。

3月31日は 桑田昭三先生の命日
  もう五回忌です。 公立中学校に在職中、進路指導の手法として 「学力偏差値」を考案(1957年)。 「入試で子ども達の明暗が決まる “1点の差”が持つ意味や価値を、統計的に解明たかっただけです」 と よく話されました。 しかし、「教育を記号(言葉や文字の類)の操作で達成できると思い込んでいる人が、実に多い。 大人の思い上がりです」 と痛烈な批判をされていたことは、余り知られていません。 「知識・技能の伝達が 教育の全てではない。 『日々の学びで得たものを 子ども自身が頭の中で組み立て、将来も大事に育てていって欲しい』 という熱い願いが教師になければ、教育の営みは成り立ちません」と、私も尻を叩かれました。
  推薦入学の基準に達しない成績の子でも受け入れる高校・大学が大半の時代になり、もはや成績の正規分布曲線が描けなくなっていますが、「偏差値」の “高め誘導”や悪用は いっそう横行しています。 惑わされるのは 保護者と子ども、そして愚かな教師です。
◆ 桑田先生は、日本人学校で学ぶ中学生が 一人だけでも進学研究会の模擬テストが受けられるよう配慮してくださっていたので お会いしました(1979年)。 「偏差値60以上は、誤差が大き過ぎませんか?」と聞くと、「そういう疑問を持つ人が、少なくなりましたねぇ」と苦笑されたことが忘れられません。

高校生 地元再発見コンテストの結果
  千葉商科大学の主催で、福島県立猪苗代高校の 『ブラックバスを使って一石二鳥!!』が 最優秀賞に選ばれました。 ブラックバスを食べれば 外来種の駆除とメタボ対策になる一石二鳥のビジネスプランです。 なお、優秀賞は、『源平合戦の歴史伝承を体験するツアー』(金光学園高校)と 『紙ごみでつくるオリジナルの芸術』(都立千早高校) でした。 地元の技術・特産品・伝統芸能など “地元の自慢”を活用して地域活性化へつなげる発想…… 若い世代に期待します。

経済原則や二項対立の発想に注意を
  子育てや教育の世界に 経済原則を下手に持ち込むと、おかしなことになります。 人間の尊厳や価値命題(どうあるべきか)を考える時にまで 「需要と供給」 「損益」 「メリットとデメリット」などが混じると、無意味な議論になりかねません。 その延長線上で よく耳にするのが 「子どもを産むのは損」で、「生まれてくる子が一生、熾烈な生存競争を送らなければならないと思うと産めない」とまで聞くと、その人の教育を誤ったことが判ります。 そもそも この世に生を受けたということは どういうことなのか。 人は、何を糧に(生き甲斐にして)生きていけるのか…… といったことを真面目に考えることがなければ、刹那と衝動に生きる “動物”でしかありません。 ましてや 「次の世代を育て、彼らに次の時代を託す」という社会の営みに関わらないのなら、“動物以下”です。
  世の中は 「勝ち組 ⇔ 負け組」のような二項対立で判断できるほど単純ではないし、ゲームのように 「御破算で願いましては」 とリセット(白紙に戻すこと)はできません。 だから 「もっと頑張らないと、次のステージ(活動の舞台)に行けない」 と子どもを煽り過ぎると、生きる力は逆に “すり減って”しまうものです。 自殺や “理由なき犯罪”の根底にも、経済原則や二項対立だけで思考する習慣があることに 注意しましょう。 1985年に 「男女雇用機会均等法」 「労働者派遣法」が同時に制定され、公費の圧縮と企業の利益創出のために 日本型雇用は葬られました。 資本が再配分されなくなって、庶民の貧困が始まったのです。 2010年代には、親の世帯収入は 20年前と比べて3割減っているといわれます。

3月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
JOES「海外赴任の親学」講演会--- 3月7日(土)、【オンライン実施に変更】 演題 『海外赴任にあたって保護者が知っておきたいこと』=小木曽 道子(海外教育カウンセラー)
第9回 超異分野学会 本大会--- 3月6日(金)・7日(土) 【延期】⇒ 4月23日(木) 於:大田区産業プラザPiO。 テーマ 『知識製造業の新時代』。
環境保全推進 えねこや体験&講演会--- 3月7日(日) 【中止】
TJF 小中高校教員 ワークショップ--- 3月15日(日)、【オンライン実施に変更】 テーマ 『探究する学びに踏み出そう--- 実践の分析とデザイン』=稲垣 忠(東北学院大学)
東京家政学院「学生成果展・教員研究成果展」--- 3月・4月 (休館:土,日,祝日、3/25〜3/31)、於:東京家政学院 生活文化博物館(東京都町田市) ※ 常設展示の衣服類・装身具類・工芸品類など各種の民俗・歴史資料も必見です。
BCN主催 全国キャラバン 2020 in オンライン--- 3月25日(水)、オンライン配信。 テーマ 『有力商材が切り拓く、新たなビジネスの世界』。 基調講演 『 Society5.0時代、ITベンダーが知っておくべきこと』=渡邊 信彦(事業構想大学院大学 教授)
TJF 多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」発表会--- 3月31日(火)  【中止】
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◆ 新型肺炎のため、イベントの中止・延期が次々と発表されています。 各主催団体からの告知に ご注意ください。
  インフルエンザや新型肺炎の騒ぎで見えてきたこと…… 「若者が蒔き散らして、年寄り・慢性疾患者が死ぬ」 「マスクは、自らを守るというよりも “蒔き散らさない”という効果のほうが大きい」 「この期に及んでも、ぼろ儲けを試みる輩が横行する」等々。

◆ 井上雍雄 先生(元 桜美林大学教授)の命日は 3月5日です。 CIEE国際教育交換協議会の東京事務所長をされていた時(1976年)、留学生アンケート調査を一緒にしました。 1999年に 「花粉症が辛いから」と言って カリフォルニアに移住され 14年…… 享年80歳でした。

◆ 『オペレーションZ』(新潮社)のTVドラマが始まりました。 国家予算の4割が国債で賄われている異常さ…… 安倍首相は 国民に理解と協力を求めなければならない時に 嘘をつき、自らの権限を強化してきました。 不安を煽るのではなく、正直に 「今は頑張り時! やるべきことは 〇〇! 頑張ろう!」と言うべきです。 最近の原油安も 米国のエネルギー産業に打撃を与えたようで、関連の社債の金利が異様な動きを始めています。 世界全体の社債市場の破綻を防ぐために、私たちの年金資金が またジャブジャブ投入(12兆円?)されるのでしょうが、まず国民に説明すべきです。

◆ 『月刊 海外子女教育』3月号特集は 「子どもに寄り添う『道徳』授業を考える」 と 「海外サバイバル生活」です。 4月から “教科”として扱われる道徳の授業ですが、異文化コンピテンシーの面でも有効だということが解る 貴重な取材でした。

◆ 玉川大学の江里口歡人先生から 「Edutopiaがやって来る」のクラウド基金の報せが届きました。 IB教育のDPを取得した学生たちの研究会で、日本の子どもが社会で楽しく学び続ける環境づくりを目指しています。

がん患者支援ネットワーク広島の講座が1日(日)にあり、「ネット情報の判別法 “かちもない”」が紹介されたそうです。 「書いた人は誰か」 「違う情報と比べたか」 「元ネタは何か (出典や情報ソースの確認)」 「何のために書かれたか」 「いつの情報か」。 これは、ネットリテラシーの基本ですね。 酷(Cool)!

◆ 私の所蔵する書籍・資料は、希望する人に 好き勝手に持って行ってもらってます。 まだ結構 残っていて、一切合切を どこかの大学か国際学部の資料室等にお送りして、自由に処分していただこうかとも考えています。 どなたか必要な手続きをご教示いただけましたら幸いです。

◆ いよいよ年度末ですね。 中国語の「始末 <shi3mo4>」は “初めから終わりまで”(始終/首尾/A to Z)や “ことの次第・事情”の意味ですが、日本語では “けじめ・決まりをつけること/整理”“浪費しない/倹約”とまで 実に幅広い言葉です。 「有終の美」(crowning glory, perfecttion)に懸ける国民性が表れているのでしょうね。 決して 「やった者勝ち」ではないはずです。

◆ 3月で帰国された先生方、お疲れ様でした。 「教師冥利に尽きる」 と仰る先生が多いのですが、本当にそうだと思います。 どうか その経験を 国内の子ども達のためにお役立てくださいますよう。

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【2020-2月】

年間の出生数が 約86万人に
  早くも2月 如月、中学・高校・大学の一般入試の最盛期ですが、昨年暮れに 厚生労働省から発表された人口動態推計で、年間の出生数は約86万人となった模様です。 出生数は毎年 約3万人ずつ減りますが、昨年は一気に5万4千人減ったとのこと。 団塊世代(1947〜49年生れ)のピークは約270万人もあったのに、その三分の一以下となったわけです。 “安い労働力”のために主婦を職場に引っ張り出す政策と、消費拡大のために 「DINK (Double Income, No Kids)」を煽る政策のツケです。 それによる浪費や物余り、あるいは異常な廃棄物資は 将来の糧までを先食いするわけですから、国民にも産業界にも大損失なのです。
  なお、出生数は2016年に100万人を割り込みましたが、それは 2029年度の中学入学者数、2032年度の高校入学者数が100万人を割ることを意味します。 「技術的特異点(Technological Singularity)」が いつなのかは別としても、日本の中等教育のあり方が転換を求められていることは、間違いありません。
◆ 「DINK」政策などにより 一時的に税収入は増えても、将来的には先細りになります。 そして何より、若い人たちの結婚・出産・子育ての夢まで殺いできました。 政治家が 「生まなかったほうが悪い」と言うのは、無責任極まりない “盗人猛々しい”態度です。

資本主義が行き過ぎると……
  昨年暮れ、セブン・イレブン日本が アルバイト店員約3万人の残業手当をごまかしていたことを やっと認めました。 その総額は判っているだけで(金銭時効分を除いて?)5億円もあるそうです。 2001年、それ以前の20年余り精勤手当等の未払いを 労働基準監督署から指摘・指導されていました。 その時 「計算式を誤っていた」と反省したはずですが、本部社員は 気にしていなかった(or金銭時効を期待した?)わけです。
  昨年9月、労働基準監督署に再度指摘を受け、永松文彦社長は 「社内で計算が(適正に)走っているかの確認は行っているが、第三者機関による確認など チェックするタイミングがなかった」と マスコミに言い訳しています。 「業績を上げろ(=加盟店から搾り取れ)」と尻を叩いてきたことを全く忘れて、現場で働く者の待遇や辛さなど 考えてみもしなかった様子が判ります。 資本主義が行き過ぎると こうした “人非人”が跋扈するという典型的な例です。

グラントカウンティ国際空港で TC
  私が忘れられない学校の一つに、米ワシントン州中部のモーゼスレイク補習授業校があります。 同地は 「年間200日以上が快晴」というほど天候が安定しているので、1968年から最近まで 日本航空の操縦士訓練所が置かれていました。 ボーイング本社のあるシアトルから 車で3時間程度という便利さもあります。 私が訪ねた1984年当時、補習校の保護者は 全員が日本航空勤務で、運営委員長・校長も教官の機長でした。 運悪く大雪に見舞われ 飛行機が欠航したので、タクシーでローキー山脈を超えたのですが、目の前で多発する交通事故に肝を冷やしながら雪中行軍。 夜遅く到着した私たちを 日本人総出で迎えていただき、感激も一入でした。 4年前、ここで日本初の民間ジェット旅客機 「MRJ」の型式証明(Type Certificate=その設計が安全性・環境適合性の基準を満たすことを実証)の基地になることが発表されました。 現在 4機が実証中のようですが、旅客運航の日が待ちどおしいです。
◆ 昨年のパリ航空ショー(6月)で、「MRJ」が 「三菱スペースジェット」と名前が変わっていました。 塗装も、見慣れた 「MRJ」の姿ではなく 「SPACEJET」に…… まあ、「ANA」の塗装で飛んで行くよりは 好かったです。

2月13日は「名字の日」です。
  名前の付け方は、その人たちの文化を反映しています。 漢字文化圏では、部族・宗族名(=姓)の下に本人の “通称”を付けますが、それでも 同姓同名が多くなります。 しかし、大多数の庶民は “通称/呼び名”しか持たないのが一般でした。 中東・アラビア文化圏では、「〜 bin/binti ○〇」(〜の子〇〇)親の名前を後ろに付して呼ぶ習慣があります。 だから インドで 「Khokon Kumar Sharman Lao」という名の人は、イスラム圏に住むと 「Sharman Lao bin Khokon Kumar」と書かれることがあります。
  英語文化圏では、“〜屋”(Smith=鍛冶屋, Carpenter=大工…等)と 職業を 「family name」にする例が多いですが、ラテン文化圏の庶民は 「〜 de/da △△」、ゲルマン系では 「〜 der/van □□」と 縁りのある地名等貴族名には von)を付けたりします。 なお、英国の先住民は 「Mac/Mc/O'〜」(〜の子/子孫)family name にすることが多いです。 MacDonald, McArtney, O'Neil など、日本人にも馴染みの深い名字がたくさんあります。
◆ 日本では 「平民苗字必称義務令」(1875年)により 国民は皆、名字を持つことになりました(⇒ 名字の日)が、戸籍簿に届け出る名前は 自由でした。

forty」は “たくさん/相当数”
  旧約聖書で 「forty」は、“神聖にして犯すべからざる数”(詮索するな!)として多用されますが、“たくさん/相当数”の意味だと考えれば しっくりきます。 モーゼが シナイ山に籠っていたのも40日、ノアが 箱舟を造ると 40日豪雨が続き、洪水が退いた40日後に 箱舟の窓を開く……等々。 そのほか 新約聖書のイエスの 「40日断食」(⇒ 四旬節)、『千夜一夜物語』の 『アリババと40人の盗賊』、それに 「in forty halves(粉々/ずたずたに),「forty winks(うたた寝)などの慣用句も 同様でしょう。
  英国の戯れ歌に 「十でエンジェル、十五で聖女、四十(始終)過ぎたら…」 がありますが、今時 こんなことを言うと大変です。 ある生徒が 「この文章、やたらと forty が出てくる」と言うので、反射的に 「forty は 始終…」と言いかけ、冷や汗をかいたことがあります (笑)。 因みに、英国の船乗りが 「the Forties(40〜49fathom=73〜90m) という時は、北東海岸からノルウェーにかけての海のことです。 「Dogger Bank(北海の水深15〜35mの海底堆)よりも “ずっと深い”(実際の水深は知らん!)と言っているのでしょう。
◆ 日本語の「やたら」の語源は不明ですが、もし マレー語の「(se)jahtera」(穏やかに繁栄する) だとしたら、どこかで反対方向の意味になったことになります。「kereng」(激しい/短気な⇒ 外連(味)) みたいに。 「fort(y)」(砦・要塞/堅物) や 「fortify」(強化/補強する,武装/要塞化する) の語源は、ラテン語の 「forti」(強い/堅い) です。 また 「fortnight」 は、"fourteen-night" の略、つまり “2週間”を表します。(検疫の "14日間" の根拠は これですか?)

今年は 2月15日から “謝肉祭”
  今年の 「マルディグラ (Mardi gras, Pancake Day)」(肥沃な火曜日)は2月25日ですので、キリスト教徒は15日からカーニバルの季節…… そして 26日が「灰の水曜日 (Ash Wednesday)」で、復活祭(Easter)の前日まで “40日”(日曜を除くので 実際は46日間)は 大人しく過ごすことになっています。
  これが 「四旬節 (Lent)(* 旬<xun2>=10日)で、イタリアでは 「Quarantina(40日間)と呼びます。 “40日”は魔法の数で、夫を亡くした妻が(死者の霊に惑わされないように)喪に服する期間とされたり、疫病が治癒する期間と信じられたりしました。 そして、国際航路の船に疫病がないかを警戒して設ける 40日間の 「検疫停船期間」が、14世紀にベニスで始まり、英国も 「Quarantine」として この制度を導入しました。 今日では、検疫検査そのものを指す用語になっています。 何故か 14日間ですけど。
◆ 国際空港の到着フロアには 「CIQ」の表示があります。“税関・出入国管理・検疫”の事務所の意味で、「こちらにどうぞ」などと丁寧に言われても、心拍数が上がります。 「Yellow Card, Carte Jaune」(予防接種証明書)を知っている人は 少なくなりました。 「四旬節 (Lent)」は、神への敬虔な祈り、自己の節制、他人への慈善が大事にされるべきですが、昨今のキリスト教国の独善・横暴には呆れかえります。

第73回グローバル化社会の教育研究会(EGS) 開催される
  13日(木)、聖学院中学・高校(東京都北区) で開かれました。 日本の英検(STEP-CBT) IELTSTOEFLとが どう違うのか、受験者の実態や評価基準、求められる言語能力などについて 貴重な話が聞けました。 とりわけ英検では、2016年から 「CSEスコア」という偏差値方式を導入したために、素点だけでは合否が読み難くなっています。 一次試験で 素点合計が70数点あっても 不合格だったり、65点でも合格だったりします。
  合否ライン辺りで見ると、「単語・読解」は 素点1点が約4.5points 、「聴き取り」は 素点1点で約10points なのに対し、「作文」は 素点1点で20〜22pointsに換算されているとのこと。 つまり、英作文の出来次第で 合否が大きく別れているようです。 また、学校教育で 聴き取る訓練の不足は明らかで “英文を読むと完璧に理解している子が 聴かせると全くダメ” が圧倒的多数。 逆に帰国生は、単語は全く知らなくても 全体から理解するので、読み取りも聴き取りもできるのが普通です。 英語を実技教科と捉え、もっと反射的な反応や習慣/感覚化の側面を重視すべきしょう。

東北大学が 米ETSとの連携協定を公表
  東北大学が昨年7月、TOEFL本部のETS(米プリンストン市) と英語教育に関する連携協定を締結していたことが、この度 公表されました。 全学部1・2年生の英語授業で 世界標準の実践的な英語力を身につけさせる目的…… 日本の大学が ETSと連携するのは 初めてです。 東北大学では ここ数年、英語教育改革を進めてきて、今春入学の学生から 新しい英語カリキュラムの導入を決定。 既に、その授業を担当する教員約70人が ETSの研修を受けており、英語教育のレベルアップを目指します。 英語力の評価だけでなく、学習意欲やテストの波及効果に焦点を当てたカリキュラム・教育プログラムの改善について ETSと共同研究を進めるとのこと。 「読んで翻訳する授業だけでは 世界で評価されない。研究で求められる英語力を」と 関係者は意気込みます。
◆ 日本のIELTS受験者数は 2009年に約7千人でしたが、昨年は約5万人へと急増しています。 TOEFLが 「パソコンを使用」「統合問題がある」など 日本人に苦手な要素が多かったこともあるでしょうが、ETS本部としては 危機感を募らせています。

2月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
IAPL 国際表現言語学会 第8回大会--- 2月8日(土)・9日(日)、於:岐阜大学(岐阜市柳戸)。 基調講演 講師:平田オリザ(劇作家・演出家)※ 言語表現に関心を持つ教育者、演劇をはじめ様々な言語表現活動の実践家による研究発表、ワークショップです。
第73回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 2月13日(木)、於:聖学院中学・高校(東京都北区)。 テーマ 『ミニ シンポジウム: 帰国生にとっての英検と IELTSを考える--- 高度な英語力の伸長に向けて』=山中 昇(英検一級道場)・吉岡 大輔(日本スタディー・アブロード・ファンデーション)。 ※ 大学共通試験で民間英検試験が利用される件は5年の延期が決まりましたが、実用英検(STEP) の変更やIELTSへの関心は高まっています。
CIEC-中央ユーラシア調査会 公開シンポジウム--- 2月20日(木)  【中止】
ネット安全安心全国推進フォーラム--- 2月28日(金) 【中止】
関西「帰国子女教育を考える会」第82回研究例会--- 2月29日(土) 【中止】
TJF 「外国語学習のめやす」実践報告会--- 2月29日(土) 【延期】⇒ 11月。 於:関西学院大学梅田Camp.。 テーマ 『外国語教員のためのルーブリック』。
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◆ 大学入試で民間試験利用の “5年延期”ということは、「中1から準備しろ」という意味です。 東京都の中学英語スピーキングテストは、来年11月から 都内の公立中学3年生全員と 都立高校入学希望者(帰国生・都外生など)に課されます。 タブレット端末を見ながら解答をマイクで吹き込む形式に慣れさせる目的が、何かは解りますよね?

◆ 『月刊 海外子女教育』2月号特集は 「海外で学んだ『日本』」…… 海外の現地校等で高校生活を送った元帰国生9人に 私がインタビューしました。 もう一つの特集は 「自己肯定感を育む」で、小木曽道子さんと八重澤勇一さんが 学力向上の秘訣を易しく解かれています。

◆ 神田外語大学と関東国際高校とで 東南アジア3言語の高大一貫教育連携協定(2/14) の報せが届きました。 「British Hills」で知られる佐野学園は、アジア言語についても優秀な人材を輩出しています。 関東国際との連携により 一層の充実・拡大を期待します。

◆ 日本マレーシア協会主催の新年会(2/17)で、ボルネオ森林再生プログラムが2万ha(東京23区面積の30%相当)に達したこと等が 高く評価されました。 両国の人的交流がセットされていることで、技術移転も円滑に進んでいます。 関東国際高校と神田外語大学の協定についても、マレーシア大使館やマレーシア投資開発庁の皆さんは 「ASEANにとり貴重な人材になる」と喜んでおられました。 広義のマレー語として共通なものが多いからです。

◆ 金曜〜月曜の 午後から夜7時頃まで、しなの鉄道 「中軽井沢」の駅ビルで 「まじめな魔女の蚤の市」が開かれています。 寄付された新古の英語絵本や可愛い雑貨などが安く売られ、布絵本のオークションや、読み聞せも…… 詳しくは Tel.090‐4427‐1170 小林さんまで。

◆ 1月20日(月)に 渡部 淳先生が亡くなっていました(享年68歳)。 ICU高校教員から日本大学文理学部教授になられ、獲得型教育研究会(2006年設立)など 異文化コンピテンシー訓練の先人の一人でした。 ご冥福を祈ります。

◆ 英国が1月末で EUを脱退。 北アイルランドとスコットランドでは、ますます “独立運動”が加速しそうです。 こうなることは 3年前の国民投票の時に予測できたはずですが、「ムスリム移民を受け入れたくない」という “陋習思考”が勝りました。

◆ 暖冬で、水仙が 恐る恐る咲き始めています。 枯葉の中の福寿草も なんだかピンときません。 ネズミもダニなどの害虫も元気な冬は 後が心配…… 今から心構えを。 新型肺炎は もう 「どの経路で感染したか」というレベルではなくなり、インフルエンザ同様に 「どこにでも ウィルスはいる」という覚悟を決めざるを得ません。 手洗い・うがい・マスク、そして 十分な栄養・睡眠と適度な運動を心掛けましょう。
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【2020年-1月】

明けましておめでとうございます。
  本年も よろしくお願いいたします。

  ネズミ年ですね。 十二支の最初で 「<zi3>」の字が与えられていますが、「子」に “鼠”の意味はありません。 方角を表わす時は “北”の方角をいい、船や車の進路なら 「直走<zhi2zou3>」(直進)することです。 ヒンズー教の財宝神クベーラは 別名 「Vaisravana(毘沙門天)とも呼ばれ、北の守護神です。 “話をよく聞いてくれる神”という意味なので 「多聞天」とも意訳されます。 蛇神ナーガから財宝を守るため、蛇の天敵のマングースを手下にしていました。 それが中国に伝わって、ネズミが “毘沙門天の使い” と考えられるようになったようです。 「ネズミは北から来る」ので、干支の最初の栄誉に預かったのでしょう。
◆ 中国語で「半夜子時<ban3ye3 zi3shi2>」といえば、日本語の「子の刻」つまり“午前0時前後, 真夜中”のことです。また「子」の真反対の方角は「午 <wu3,ウマ>」で、「子午」は “南北”ですね。

多様な他者と共に生きていくために
  年頭に当たり、多田 孝志先生(金沢学院大学 教授)が 「多様な他者と共に生きていくために 基層におくべきこと」 として、「想像力&共感力」「様々な人々との協働」「困難を乗り越える勇気と実行力」 を挙げておられることを紹介します。
 1) 世界には、辛く厳しい環境下に生活する人々がいることを知り、その立場への想像力と、その心情に共感すること。
 2) 夢の実現に向けて、多くの賛同者の支援を受け、資金を集め、作業を進めていくという “協働”が、奇跡や感動をもたらすこと。
 3) 様々な障害、偏見、誤解など困難の連続であっても、夢の実現に向けての意志を共有し、勇気や知恵を出し合い、問題を解決していくこと。
  「国際性には、きらめくような語学の才や、交渉力、立ち居振る舞いの優雅さなどが必須とされがちですが、むしろ厳しい立場、辛い状況の人々へのイメージ・共感を基調におく “あたたかい心” にこそ、その本質があるのではないでしょうか」(月刊 海外子女教育』2019年11月号より)

1月6日は 英国の「十二夜」
  シェイクスピアの戯曲 『Twelfth Night(十二夜)』第一幕に、流しの楽隊(チンドン屋まがい)が出てきます。 新年なので、日本の三河万歳や獅子舞と同じように 家々を回って一家の繁栄を祈り、ご祝儀をもらう連中です。 「音楽が恋の糧だというなら、そのまま続けてくれよ」の名台詞は、片思いの切なさが一杯です。 この台詞は、プロコル・ハルムの名曲 『A Whiter Shade of Pale(英1967年)の歌詞にも引用され、「恋心は なんて変化し易いアートなのか…… 何ひとつ永くは値打ちを保たない」を暗示しています。 しかし、何故か日本では、結婚式でよく流されます。 メロディーが綺麗だからでしょうか? もちろん 言葉に出しては歌わない約束…… 新婦が “顔面蒼白”になったら困りますから (笑)。

ネズミは “元 不良”
  日本語の 「ネズミ」は “盗み”が原義ともいわれますが、英語の 「rat」も “ならず者, 人間のクズ, 裏切り者, スパイ”と芳しくありません。 「mouse」は “臆病者, 内気な人”ですし。 でも、義賊の次郎吉は “鼠小僧”と愛されました。
  江戸時代の 「目明し, 岡っ引」(private) は “体制側のネズミ”だったともいえます。 元ハッカーが サイバー(ネット)犯罪取締の担当官になっているようなもの(=蛇の道は蛇)で、青少年の頃は あまり素行が宜しくなかったのが普通です。 彼らは「与力・同心」のような公職(officer) ではなく、民間or非公式の警察機関でした。 現在の日本には 「巡査」の下はないのですが、各国には “補助警察員”の制度が結構あります(例:インドネシアの「bayangkara, mandur」など)
◆ キリスト教伝来以前の欧州では、死人の近くに 「red mouse」が現れたら その人は純潔な精神を持ち、「black mouse」なら 汚れた精神を持っていたとされました。 また、『Mouse Tower』は カソリック僧正による大虐殺ですが、信憑性はありません。

「おじゃみ」 と 「おじゃん」
  正月の遊びの一つに 「おじゃみ」という お手玉があります。 かつて中身は 小豆が普通でしたが、滋賀県辺りでは 米を入れたので 「(お)こんめ」と呼ぶそうです。 最近の中身はプラスチック粒ですが、名前の起源は その発する音なのでしょう。 「おじゃみる」(物事が途中で駄目になる)という古語が起源ともいわれます。 「おじゃみ」は、落したところで 「おじゃん(お仕舞/終了)となるのです。
  江戸時代は、火事が発生した時に 半鐘を打ち続けて避難方向(=音のしない方向に逃げる)を示し、鎮火した時には 「ジャンジャン」と半鐘を二度鳴らすのが合図でした。 江戸っ子たちは、“終り”を 「(お)ジャン」と洒落たわけです。 現在の消防車は、小振りの半鐘を 「チーン」と鳴らしながら撤収していきます(鎮火?)けど、どうも 弔いのイメージが重なって 「一丁上がり⇒ 左様なら」と感じます。 「microwave oven」が “電子レンジ”と命名された時(1961年)、「チーンする」という動詞まで生まれています。
  因みに、遊郭では、客が入店すると半鐘を鳴らしたそうで、放蕩息子が入り浸って=いつも半鐘を突かせて⇒“金を尽くして”遊ぶという符丁になったという邪説もあります。 「金をジャンジャン使う」という表現、さらに大袈裟に 「銅鑼<どら>を突く息子」という戯言まで生まれました。 これは “道楽息子”の駄洒落でもあります。
◆ 落語 『火焔太鼓』のサゲも、「半鐘はいけねぇ、おじゃんになる」ですね。 コントなら 「チャンチャン」、総会は 「シャンシャン」ですが。 テレビのトーク&バラエティ番組、YouTube の世界では “ハイ それまで!(放送事故になるよ)”の「チーン」もあります。

「What's new?」の返事は 「Ya.」?
  「What's new?」を 「最新情報は?」と訳されると、引っかかります。 中国語の 「喫飯了ma?」(ご飯食べた?)と同様に、「やぁ、元気?」「最近、どう?」と声を掛けているのであって、取り立てて何かを聞きたいわけではないからです。 コミュニケ―ションとして 「君は友達だよ、元気でいてね」「何か困ったことがあれば 言ってね」等を表現しています。 久しぶりに会った後輩に、「飯食ってるか?」と言うみたいな…。 一方、「What's up?」も同じ意味なのですが、こちらは 「どうしたの?」と相手に事情・状況を話すよう 促すニュアンスが強まります。 だから、その直後に 「Will you do me a favor?(私の願いを聞いてくれる?)と言われたら、絶対に断れません。
◆ 「Will you do me a favor?」に対し、本当に親しければ 「No!」(嫌だよ)と冗談で応えることがないわけではありません。 でも、その場合 「お前は酷い奴だ!」と首を絞められるか、叩かれるかするでしょう。

PISA2018の「読解力」とは?
  PISA(生徒の学習到達度調査)の「読解力」が、日本は2012年から下がり続け、2018年にはOECD加盟37か国中11位となりました。 原因の一つは 「情報を探し出す」能力で、必要な情報が どのWEBサイトに記載されているか推測し 探し出す力が、とくに成績上位層で大幅に低下してしまっているようです。
  また、「評価し、熟考する」能力では、「質と信憑性を評価する」と 「矛盾を見つけて対処する」の新たな定義がなされ、媒体も 書物からネット上の文書全体に広がりました。 そのため、マスコミ報道を疑うことのない、そして 「自分ならどうするかを考えない」わが国の習慣が、狙い撃ちされた形となりました。 「新聞を読まない(=時事問題を考えない)で、マンガや小説(=仮想社会)に没入する」傾向は、情報の 「質と信憑性を評価する」や 「矛盾を見つけて対処する」能力には結びつき難いのです。 これの対策も 学習塾に丸投げしますか?
◆ 「大学入試センター試験」の歴史が終わりました。 しかし、大学入試改革の目玉だった 「記述式問題」も 「民間英検試験の利用」も、政治家と業者の利権争いの標的にされ、現場の守旧派教師の抵抗にも遭って、延期されたのは残念です。

第73回グローバル化社会の教育研究会(EGS)の開催
  2月13日(木)、いつもの聖学院中学・高校(東京都北区)で、『ミニ シンポジウム: 帰国生にとっての英検とIELTSを考える--- 高度な英語力の伸長に向けて』 をテーマに行われます。 発題は 英検一級道場の 山中 昇さんと 日本スタディー・アブロード・ファンデーション(JSAF) の吉岡 大輔さん…… 高校英語教師の指導・相談役としても 評判のお二人です。 英語入試改革や大学が求める英語力などについても、話し合いたいと思います。
  2020年度大学入試(来春実施)から民間英検試験が利用される件は 延期が決まりましたが、実用英検(STEP)の新試験や IELTSへの関心も高まっています。 とりわけ、実用英検 「2500〜2600」や IELTS 「6.0前後」のスコアを持つ帰国生が さらに英語力を伸ばすにはどうすべきか、受験の際の勘所や注意点などについて 具体的な話を聴く貴重な機会でもあります。
◆ 日本の中学・高校では、推薦入試や帰国生入試も含めて 入試シーズンに入っています。 不幸にして不合格となった場合の“ワクチン”は、“学ぶ楽しさ”…… エラーを 「あれ、なんで?」と軽く捉え “学び”に向けられる子は、耐性もあるのです。

「無印良品」の商標権裁判で判ったことは?
  昨年暮れ、北京で 「無印良品」の商標権を巡る裁判が終り、わが国の良品計画グループが、北京綿田紡績品公司(ブランド名:北京無印良品, Natural Mill)が持つ登録商標権を侵害しているとの判決が言い渡されました。 良品計画側は、賠償金と訴訟費用を合わせた62.6万元(約1千万円)を支払わされたそうです。 中国でも人気がある 「無印良品」の本家が “パクりブランド”に敗訴したことは、中国人にも注目されました。 しかし、良品計画グループは常時、多くの“パクり/類似品”に攻め立てられ、その防戦に追われており、現地では 「商標登録は合法的な商業競争行為だ。今回は 良品計画の取りこぼし」というのが 大方の判断のようです。
  日本の企業・団体も、かつては世界各国に出かけ 「見学・視察」や「情報収集」で多くを “学んで”(=真似して)きました。 徒弟制度では、師匠・先輩から 「技を盗め」と教えました。 先進国から 「非公正な競争」との批判を受けて 自粛するようになりましたが、今では “学ばれる”側面も多いということです。
◆ 日本の都道府県名をはじめ、あらゆる地名・会社名・ブランド名が 既に中国・韓国で商標登録されているといわれます。 また 「訪日農村交流」の類が、新品種や栽培技法の“学習”(=持ち出し)の温床になるなど、ブランド維持は大変なのです。

1月の諸行事 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
獲得研 オトナのプレゼンフェスタ Part7--- 1月 5日(日)、於:江戸東京博物館(東京都墨田区)⇒ BumB 東京スポーツ文化館(東京都江東区)。 テーマ 『江戸東京博物館を舞台に江戸の出版事情をさぐる』。 ※ 江戸の出版事情をメインテーマに 半即興型のプレゼンづくりに挑戦します。
グローバル化に対応した外国語教育事業報告会--- 1月13日(祝)、於:慶應義塾大学 日吉Camp(横浜市港北区)。 テーマ 『資質・能力育成をめざした外国語の授業設計--- 逆向き設計論にもとづき パフォーマンス評価を取り入れ』。 ※ 今年度 5言語(中・韓・独・仏・西)7校で実施された公開研究授業の報告を素に、外国語の授業の実践方法を話し合います。
NPO 学校支援協議会 公開シンポジウム--- 1月13日(祝)、於:順天堂大学 研究環境 A棟(東京都文京区)。 テーマ 『探究的学びと高大接続』=河添 健、溝上慎一、杉山剛士ほか。 ※ 中学から高校までの具体的な取り組みを 映像で紹介しながら徹底討論します。
ASIA-NET 新春企画セミナー--- 1月17日(金)、於:南部労政会館(東京都品川区)。 テーマ 『Society5.0 で どう変わるモノ作りの世界』=駒込 和貴(国際人財開発機構)。 ※ 「Society5.0」「働き方改革」の本当の意味について 改めて考えます。
第3回 国際ベビー&キッズ EXPO(春)--- 1月20日(月)〜22日(水)、於:幕張メッセ (千葉市美浜区)。 ※ 世界初の「普通の筆で書ける電光黒板」をはじめ オリジナル教材・遊具の祭典です。第1回 国際 文具・紙製品展も同時開催されます。
CIEC国際情勢シンポジウム--- 1月30日(木)、於:AP虎ノ門(東京都港区)。 テーマ 『建国70年、中国の今後を考える』=久保 文明 (東京大学大学院)、香田 洋二(元 自衛艦隊司令官)、大橋 英夫 (専修大学) ほか。 ※ 政治・経済・軍事問題の第一人者による分析・論評に注目です。
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◆ 上海から帰国した私を 教職課程の学生たちに紹介する際、多田孝志先生は 「単に語学ができるとか 専門知識があるというだけではない。 現地の異なる法律や多様な人達を相手にして、夢を実現してきた人なんです」 と言ってくださいました。(ウルウル…)

◆ ジャズの名曲 『What's new?』は 日本人好みの情感に溢れ、黙ってグラスを持ち上げるだけでも 心が通い合う気がします。 「焼け棒杭に火がつく」という齢でもないけど…。 なお、WEB上で 「What's new?」と書く場合、顔も知らない他人が相手ですから 情緒や感情は全くありません。 その点、第4回オタク川柳大賞(2008年)に輝いた 「聞いてない 誰もそこまで 聞いてない」は、「What's new?」の本来の意味を 正確に言い当てています。 「飯食ってるか?」と聞かれたら、食べてなくても 「はい!」と答えるべきですかね?

◆ マザー・テレサの金言 <思考に気をつけなさい、それは いつか言葉になるから。 言葉に気をつけなさい、それは いつか行動になるから。 行動に気をつけなさい、それは いつか習慣になるから。 習慣に気をつけなさい、それは いつか性格になるから。 性格に気をつけなさい、それは いつか運命になるから。>

◆ 暮れに 「ミルクボーイ」が 「M-1グランプリ2019」を獲得! 久々に玄人好みの本格派漫才が現われましたが、基礎がしっかりした芸は 安定感があります。「それは 〇〇や!」が今年の流行語の一つになるかもしれませんね。

◆ 「見学・視察」にぴったりの英語の訳/概念はありません。「inspection visit」は “査察・検証”の感じですし、「investigation」では “調査・研究”の感じです。 日本の老人は 「Study Tour」が好きですが、受け入れ先は 「何しに来るの?」と訝しがります。

◆ 20日(月)は 大寒ですが、異常な暖冬で 雪景色の観光地・スキー場などの営業に影響が出ています。 より深刻なのは、雪不足が夏場の水不足と野菜類の暴騰を 確実に引き起こし、病害虫や水害・山火事の危険も増すことです。SDGs対応は 待ったなしです。

◆ 長男が学生時代、大学に泊まり込んで 「学生F1」のレーシングカーに没頭していた時の話です。 母「ご飯食べた?」⇒ 長男「いま何時?」⇒ 母「7時」⇒ 長男「夜の?」⇒ 母「朝よ」⇒ 長男「じゃぁ、さっきのは朝ご飯だったんだ」⇒ 母「…」(唖然)

◆ 「最近、編集後記が長いよ!」という忠告を頂きましたが、「編集後記から読む」という人や 「後半をもっと多く」というご要望も少なくありません。 実は 昨年1月、私の左目に飛蚊症が出て、「今の内に 書いておきたい」という焦りもありました。(-_-;)  冗長は避けますので、今年も ご愛顧のほど、何卒よろしくお願いいたします。

◆ いよいよ入試シーズンが始まりますが、受験生諸君が実力を発揮できることを祈ります。 毎朝6時半、近所の公園でラジオ体操をしていると、日の出が早くなってくるのを感じます。 「一陽来復」は 冬至を意味するだけでなく、寒中の 「辛い冬が終わって もうすぐ春だなぁ」という感慨を表わします。 人々の心に 明るさや温もりが戻りますよう。

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